魔法使いと皇の剣

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3章 神の肉

エピローグ

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 アーベンは馬を駆り、夜明け前の薄闇の中を疾走していた。

 冷たい風が頬を打ち、疲労に鈍った体を鋭く刺す。だが、その感覚すら心地よい。遠くに見える城壁と、そこに立ち並ぶ数多の騎士たち——懐かしきオーデントの姿が、彼の胸に深い安堵をもたらした。

 しかし、目に映る光景は単なる迎えの準備ではなかった。

 戦の気配が濃く漂っている。

 門前には数千を超える騎士たちが整然と隊列を組み、戦場へと赴く準備を整えていた。弩砲や投石器が並び、各隊の兵たちは魔力を込めた魔石を慎重に扱っている。戦の前触れを告げる金属音が空気を震わせ、しかし騎士たちは規律を乱さず静寂を保っていた。

 彼らの視線は皆、国壁の向こうを見据えている。

 アーベンが軍勢の輪を抜けると、一人の騎士が素早く駆け寄った。


「……!? アーベン様!」

 騎士——バズバは驚愕の表情を浮かべ、馬上のアーベンに向かって深々と頭を下げた。

「よくぞご無事で……! 命令とはいえ、アーベン様を残して撤退したガルシアとその部下には、怪我が癒え次第、いかなる罰でも——」

 しかし、アーベンは軽く手を挙げ、制した。

「構わない。あれは私の命令だ。だが……」

 彼は周囲を見回し、城門の前に構えられた兵器の数々を見て眉をひそめる。

「ずいぶんと豪勢な迎えだね。まるで籠城戦のようだ……魔石まで準備しているとは。」

 バズバは息を呑み、アーベンの表情を窺った。

「……まさか、ご覧になっていないのですか?」

 アーベンは深くため息をつき。

「私はね、過酷な旅を終えたばかりでね。道中、何が起こっているかなど知る由もない。軍勢とは……ベイルガルドか?」

 バズバの表情が曇る。唇を噛みしめながら、低く答えた。

「いいえ……軍勢は、アーベン様が今しがた戻られた道の先より進軍しています。かつての我らの同胞たちが率いる軍です。」

 アーベンの笑みがわずかに揺らぐ。バズバはその様子をみて静かに続けた。

「ホイスタリンより来たる軍勢——かつてのオーデントの民が、"暴食の神"の旗のもとに集い、我らの国を襲おうとしています。」

 夜明け前の空に、冷たい風が吹き抜けた。

 アーベンは短く息を吐き、夜明け前の門を仰ぎ見る。

「なるほど……早急に私は弟に会わなければならない。」

 バズバは驚きをみせないアーベンを訝しむように見つめながらも、無言で頷き、アーベンを街の門へと導いた。


 戦の影は、すでに夜明け前の街を蝕んでいた。

 アーベンは数十人の騎士を伴い、オーデントの街を歩いていた。ほんの数日前まで活気に満ちていた通りは、今や不安と緊張が支配している。

 石畳を踏みしめる騎士たちの鎧がかすかに鳴り、戦場の匂いが空気を重くする。

 道端にはまだ人々の姿が見える。だが、それは日常を過ごす者たちではなく——

「傭兵を募集する! 報酬は前払いだ!」

 騎士たちが通行人に向かって声を張り上げ、国外から来た屈強な男たちを勧誘していた。片隅では、荷物をまとめる女たちや年老いた者たちが慌ただしく動き回る。

 この国が戦場となる。
 それを理解した者たちは、逃げるべきか、留まるべきか——いずれにせよ、決断を迫られていた。

「オーデントが……滅びる……」

 震える声が、どこかから漏れ聞こえた。

 目を向ければ、一人の男が道端に立ち、狂気を帯びた目で空を仰いでいる。

「神の裁きだ! オーデントは神の怒りを買ったのだ!」

 男の叫びに呼応するように、数人が声を上げ、広場に人だかりができていた。

 動揺が広がる——

 騎士たちが制止に入るが、興奮した民衆は耳を貸さない。

「国王が異端だからだ!」「神を否定した罰だ!」

「静まれ!」

 騎士の怒声が響くも、群衆の怒りと恐怖は容易には収まらない。

「剣を抜くな」

 アーベンが静かに命じると、騎士たちは不服そうにしながらも従った。

 神の名を叫ぶ者たち、国を信じる者たち、そしてただ怯える者たち——すべてが混在し、オーデントは今、静かに崩れ始めていた。

 城内は慌ただしく、貴族や従者が忙しなく動き回っていた。
 その中を足早に進む アーベン に、次々と声がかかる。

「アーベン様! ご無事で!」
「アーベン王子、いったいどちらに……?」

 だが、アーベンはそれらの問いかけを煩わしげに流し、足を止めることなく 弟ケイオスの元 へと向かった。

 アーベンが目指したのは 玉座の間 ではなく、王城に設けられた 円卓の間。 

 扉を開けると、そこには ケイオス だけでなく、国の重鎮たちが既に集まっていた。

 円卓には、王国を支える 三大公爵、各地の辺境伯の代理、そして数名の騎士の姿があった。
 重々しい空気が漂う中、一人の貴族が席を立ち、優雅に頭を下げた。

「アーベン殿下……ご帰還、心より喜ばしく存じます」

 恭しく言葉を紡いだのは、バウエル・マンスマン公爵。

 年の頃は六十に届こうとしているが、貴族としての威厳を保った姿には、実年齢よりも若々しさがあった。白く整えられた顎髭が、唯一その年輪を物語っている。

「バウエル公。私に『殿下』は不要だ。ただの王子でよい」

 アーベンがそう返すと、バウエルは豪快に笑った。

(食えない男だ……)

 アーベンは内心でため息をする。ケイオス がいるこの場で 「殿下」という呼称を使うのは、単なる古い習慣ではない。バウエルほどの男が、そこに意図がないはずがない。

 あえてケイオスの権威を揺さぶるために、王子である自分を高く扱っているのだろう。

 そんなやり取りにもケイオスは顔色ひとつ変えず、静かに口を開いた。

「兄上。ご無事で何よりです。ご帰還でお疲れのようですが……何を見てきたのか、お聞かせ願えますか?」

 円卓を囲む者たちの表情が引き締まる。
 バウエルも先ほどの余裕を消し、神妙な顔つきになった。

 七騎士の一人にして トーテム公爵家の代表、アラン・トーテムは、黙したまま言葉を待っている。精悍な顔立ちを持つ四十代の男で、武人としての鋭い気配を纏っていた。

 円卓の最年長、七十を越えるビルゲン・マーズ公爵は、どこか眠そうな表情を浮かべながらも、僅かに目を細めていた。

 表には出さないが、この場の緊張感を敏感に察しているのだろう。

 そして、各地の辺境伯の代理たちもまた、静かにアーベンの報告を待っていた。

 ドラント・スマイグの代理
 ミュリエル・エタハルの代理
 デニス・マーシャルの代理

 この会議の場に集ったのは、オーデント王国の命運を左右する者たち。

 アーベンは深く息を吸い、ゆっくりと口を開いた——。


 アーベンが ドルテ村の惨劇 を語るにつれ、円卓を囲む貴族や騎士たちは驚愕と怒りに顔を歪めていった。だが、その中で ただ一人、ケイオスだけが無表情のまま じっと話を聞いていた。

(優秀な弟だ……)

 冷静沈着に事態を受け止めるケイオスに、アーベンは誇らしさを感じた。

 しかし同時に、ほんの少し つまらなさ も覚えていた。激情に駆られ、怒りや憤りをあらわにする者はいてもいい。

 だが、ケイオスは最初から すべてを知っていたかのような態度 で、驚きすら見せなかったのだ。

 やがてアーベンの話が終わると、ケイオスは静かに言葉を紡いだ。


「兄上から頂いた貴重な情報により、デニスや国境付近との連絡が途絶えた理由、そして迫りくる軍勢の意図が見えてきました。感謝いたします」

 その口調は、あまりにも淡々としていた。
 アーベンは 「王のお力になれば」 とだけ答え、軽く頭を下げた。

 そんな中、バウエル・マンスマン公爵が 微かに眉を上げた のを、アーベンは見逃さなかった。

 円卓を囲む者たちの間に一瞬の沈黙が落ちる。
 その静寂を破ったのは、七騎士の一人である アラン・トーテム公爵 だった。

「神の肉……いや、ベイルガルドの動きはもはや看過できません」

 アランは厳しい表情で拳を握りしめる。

「短期間でこれほどの異形を生み出し、国や街を異質なものへと変貌させる兵器を作り出した……それは オーデントだけの問題ではなく、大陸全土への脅威 です」


 アランの言葉に、円卓の一部の者が頷き、同意の声を漏らす。しかし、バウエルは考え込むように ドラント・スマイグ辺境伯の代理人 に目を向けた。

「しかし、我が国での脅威は確かだとしても、他の国々からそのような報告を受けたことはありません」

 バウエルは静かに問いかける。

「テネグリアに近いそちらでは、ベイルガルドに関する 異変の噂 を聞いておりますかな?」

 問いかけられた スマイグ辺境伯の代理人 は、一瞬、身を強張らせた。わずかに震えた声で答える。

「い、いえ……閣下より、そのような報告は届いておりません」

 バウエルは静かに頷き、そのままケイオスに向き直る。

「王よ。聞くところによれば、ベイルガルドは 神への信仰を断絶した我らに対する報復として、このような行為を行っているとも言われております。一度、正式な使者を送るという選択肢を検討してはいかがでしょうか?」

 その瞬間、円卓の間に どよめき が走る。
 アランは怒りに満ちた表情 で拳を叩きつけた。

「バウエル公! 我が国で起こっている事態を理解されておりますか!」

 アランはその怒りのまま

「奴らがいったいどれだけの血を流させたか! さらに、いま迫りくる ホイスタリンの軍勢 も、奴らの手によって引き起こされているのではないか!」

 語気を荒げるアランに対し、バウエルは冷静に返す。

「アラン公、あなたがた 武人は今しか見ていないのです」

 バウエルの声音は静かだったが、その言葉には重みがあった。

「確かに我々はホイスタリンの軍勢と戦わねばなりません。しかし、他国においては未だ神への信仰を続け、眷属たちと友好関係を築いている国も多い のです」

「もし我々が ベイルガルドを討つ ことを大義名分に掲げるならば、確固たる証拠が必要となる」

 そう言いながら、バウエルはケイオスに目を向けた。

「王がホイスタリンを…グルンを討ちとった際、 テネグリアがどのような動向をされたのか考慮されるのが賢明かと存じます」

 アランは歯噛みしながらも押し黙るしかなかった。そんな様子をみてバウエルはさらに諭すよう続ける。

「信仰を捨てた我が国でさえ “神の裁き” という声が民衆の間からも上がっている。ならば、神を信奉する国々はどうでしょう? 彼らがどのように ベイルガルドの行いを受け止めるのか ……今一度、考えるべきではありませんか?」

 円卓の間に 沈黙 が落ちる。貴族たちは顔を見合わせ、それぞれの立場で思案に沈んだ。

 その場を制したのは、アーベンだった。

「バウエル公のご意見はもっともですが……今はまず ホイスタリンの軍勢、そして 迫りくる“暴食の残神” に集中するべきではないでしょうか?」

 アーベンは低い声で続ける。

「ベイルガルドがどう動こうとも、目の前の敵は “災厄”そのものです。彼らに意志があるのかすら定かではない以上…… 我々にできることは、迎え撃つことだけなのです」

 円卓を囲む貴族たちが沈黙するなか、 ビルゲン・マーズ公爵 が静かに口を開いた。

「些か不可解な疑問が残りますな……」

 そのか細い声に、誰もすぐには返答しない。
 仕方なく、アーベンが口を開いた。

「ビルゲン公、その疑問とは?」

 ビルゲンはもごもごと口を動かし、慎重に言葉を紡ぐ。

「向かってくる軍勢の数は、いかほどですかな? 王よ」

 この問いに答えたのは、ケイオスではなくアラン・トーテム公爵だった。

「四千ほどです、ビルゲン公」

 その数字が告げられると、円卓を囲む者たちの間に静かなざわめきが広がる。

 オーデント王家と血縁を持つ マーズ公爵家 の当主として、 ビルゲンの言葉には重みがあった。
 皆が彼の発言を注意深く聞いていた。


「……仮に、ホイスタリンにいた騎士団や周辺の村、街の住民を含めたとしても、数が合いませぬ。あまりに少ないとは思われませんか?」

 その指摘に、アーベンは深く頷いた。
 確かに、かつてデニスが統治を始めたホイスタリンの住人や周辺の勢力を加えれば、少なくとも倍以上の兵がいてもおかしくない はずだった。

「……オーデントを目指すならば、率いる者がいるはず。しかし、たった四千でこの国を討ち取るつもりなのか……? 私は疑問ですな」

 ビルゲンの目は細められ、その奥には警戒の色が宿っていた。

 アーベンも過去の戦を思い返す。
 かつてザルミア高原でグルンの眷属を討ち取った時、統率のとれていない軍勢は脅威とはならず、 比較的容易に勝利を収めることができた。

 アランが重々しく頷き、口を開いた。

「もともとグルンの眷属に統率などありませんでした。それを考えれば、今回の軍勢も驚くには値しないかと」

 しかし、ビルゲンはなおも首を振る。

「尚のこと、実に不可解。前回とは異なり、 瞬く間に兵を生み出し、組織的な動きを見せている」

「そして、兵を十分に集めないまま オーデントを目指すという行動……」

「まるで、別の狙いがあるかのようですな」

 その発言に、 円卓の者たちは再び沈黙した。

 アランは苛立ちを滲ませながら答える。

「ビルゲン公、先ほど申し上げたように、もし奴らが暴食の残党 であるならば、作戦など考えうる頭を持ち合わせていないのです」

 アーベンは ふたりの議論を聞きながら、問いかけた。

「ビルゲン公は、別の何かが暗躍しているとお考えなのですね?」

 その問いに、アランはわずかに眉をひそめる。
 だが、ビルゲンは静かに頷いた。

「左様ですな」

 アーベンは その可能性を否定できなかった。

 何より、 自分はベイルガルドの黒衣の伝道者を目の当たりにしている。
 奴らは 単なる蛮族ではない。
 影に潜みながら 着実に侵食 していく不気味な手腕 を持っていた。

 円卓の議論がさらに熱を帯び、アランやバウエルが意見を戦わせ始めたその時——。

 ケイオスが 静かに手を挙げた。その瞬間、全員が言葉を止めた。ケイオスの瞳は冷静に、鋭く貴族たちを見渡した。

「この戦に裏があるのは承知している」

 その一言に、公爵たちは息を呑む。

「だが今、我々が考えるべきは、 ホイスタリンから迫る軍勢 の対処である」

 その言葉に、 辺境伯の代理たちの間に緊張が走った。ケイオスは 感情を表に出さずに続ける。

「ただ向かってくる軍勢を迎え撃つだけならば、すでに 準備は整っている」

「貴公らの軍勢なくとも」

 その瞬間、 貴族たちの表情がわずかに曇った。

「この短期間で、突如現れた軍勢に対抗できるだけの 準備ができた理由—それは、ベイルガルドとの戦を見越していたからに他ならない」

 その 静かな威圧感に、誰も言葉を挟めなかった。

 ケイオスはさらに問う。

「貴公らの兵は、この先の戦に備えて、領地で昂る気持ちを抑えているか?」

 その問いに 最初に答えたのはアランだった。彼は敬意を込めた声で、堂々と宣言する。

「殿下とオーデントに忠誠を誓いし者。我が領地の兵と民は、 いつでも召集に応じ、戦場に立つ覚悟ができております」

 ケイオスは ゆっくりと頷く。他の貴族たちへ視線を向けると、バウエルが 少し遅れて頭を下げた。

「……同じく、 殿下の剣 となり、オーデントの敵を討ち倒し——盾となり、殿下とオーデントを守り抜きましょう」

 続くように、他の貴族たちも次々と言葉を紡ぎ、頭を下げた。だが、アーベンは心の中で皮肉に笑う。

( アラン以外の貴族たちは、戦の準備など進めていないだろう )

 ベイルガルドの 黒衣の伝道者たちは、よく考えていた。

 彼らは オーデント国内で暗躍していながら、今回、七騎士デニスが治めていたホイスタリン以外の公爵や辺境伯の領地には手を出していない。

 ——脅しと牽制を含めて。

 オーデント国の 一枚岩ではない内情を利用し、内部から神の肉を使って侵食していく戦略は、まさに厄介だった。

 ケイオスは無表情のまま、目の前の貴族たちを見下ろしていた。皆が儀礼的な挨拶を交わし、 忠誠の言葉をケイオスに並べている。
 しかし、その言葉のどれほどが本物なのか、アーベンは測りかねていた。

 そんな円卓を囲む貴族たちの様子を見つめながら、アーベンは 心の中で退屈そうにため息をついた。

( この状況をどう乗りこなすのか、弟の手腕を見せてもらおう )

 自分であれば、 こうなる前に上手く立ち回る自信がある。

 レグラスならば、 外の国に目を向ける余裕すらなく、飲み込まれていただろう。だが、 神を信仰するレグラスならば、ベイルガルドとの友好を築けていた可能性もある……。

( しかし、ケイオスは読めない )

 王としての威厳を示しながらも、貴族たちに一定の妥協を許している。それが国を完全に掌握できない理由であることを、弟自身も分かっているはずだ。

 それでも—— この場で一切の感情を見せない弟の姿に、アーベンは興味を抱くものの、結局は面白みを感じなかった。

( 次に言う言葉も、大方予想がつくな…… )

 ケイオスは 貴族たちを見渡し、静かに口を開いた。

「貴公らの我が国に対する忠誠、確かに受け取った。ならば、私自身が来たる軍勢を迎え撃ち、その忠誠が誤りではないことを証明しよう」

 アーベンは 小さく笑う。

( ほらな )

 貴族たちは 一斉に恭しく頭を下げた。そして、円卓の騎士たちの中から歓声が上がる。

 戦への熱気が場を満たし、士気は高まっていく。ケイオスが円卓を立ち、部屋を後にすると、全員がそれに続いた。

 長い廊下を歩く王と貴族たちを、騎士や従者が整列し、敬礼をもって迎えた。重厚な鎧が擦れ合う音が響く。無言の敬意が、通る者すべての背筋を正させた。

 そして、 玉座の間。

 高くそびえる階段の上、 王の座が彼を待っていた。

 ケイオスは、段を登り、振り返る。
 その視線の先には、騎士団の隊長、有力な貴族たちが整然と並び、息を潜めていた。

「かつて、我が国を苦しめた暴食の影が——」

 ケイオスの静かな声が響く。その一言が、場の空気を一変させた。

「ベイルガルドの力を借り、再びこの地に悪虐を尽くそうとしている」

 その言葉に、 騎士たちは拳を握りしめ、貴族たちは眉をひそめた。だが誰も口を挟まない。

「だが、我らは決して屈しない。この剣はオーデントを守るためにある」

 ケイオスの手が王剣の柄に添えられる。

「この戦いは、単なる国の存亡をかけたものではない。信仰なき我らの未来を決する戦いとなる。そして、我が王国の真の力を示す時でもある」

 騎士たちは 誇り高く胸を張り、剣を掲げた。

 その姿を見下ろしながら、 ケイオスは冷静に、しかし確かな決意を持って宣言する。

「オーデントに勝利を——そして、我が名のもとに統治を」

 その言葉が響き渡ると、 場にいたすべての者が拳を掲げ、誓いの雄叫びを上げた。

 こうして—— 戦乱の幕が開かれる。
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