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魔法学園編
183 ダンジョン制作 02
しおりを挟むカルロが亜空間を作りだすために描いた魔法陣に私も闇属性の魔力を注ぐ。
「リヒト様!? 何をされているのですか?」
「カルロ、落ち着いて」
驚きに魔力が一瞬乱れたカルロだったが、私の言葉にすぐに安定した魔力に戻った。
「亜空間ができるとすぐに精霊たちは寄っていくけど、それでも私の周囲を飛び回っている精霊の方が多いんだ。だから、私の魔力を流し込んだらどうなるのか確認したくて」
瘴気を浄化させるために精霊が作り出すダンジョンを消滅させる作業は要するに瘴気の浄化だ。
精霊が望んでいることをしていたためなのか、ダンジョンを消滅させるたびにほとんどの精霊は自然に帰っていくのに、必ずすこしだけ私の周りに精霊が留まるようになり、消滅させたダンジョンが増えるに連れて、精霊も増えて、今では結構な数の精霊が私の周りを浮遊するようになってしまったのだ。
精霊は自然を好むので、私が室内にいる時にはほとんどの精霊たちは私から離れて庭にいるが、私が外出する時にはこうしてついてくる。
転移魔法を使って移動していてもきちんとついてくるのだからすごい。
精霊が特定の者にしか見ることのできない存在でよかった。
そうでなければ、私は電飾をまとったツリーのように見えていたことだろう。
私が試したかったのは、私が魔力を注いだら私の周りを浮遊している精霊たちがカルロが作った亜空間へと移り、ダンジョン形成を始めてくれるのではないかということだ。
結果は、先ほどよりも明らかに亜空間へ集まる精霊は増えた。
しかし、まだダンジョン形成には至らないようだ。
「他人の魔法陣に自分の魔力を注ぐとか面白いことを考えますね」
そう言って興味を持った魔塔主までカルロの魔法陣に魔力を注ぎ始めた。
「ちょっと、魔塔主! やめてください!! 僕とリヒト様の愛の結晶に不純物を入れないでください!!」
カルロの言葉に私の魔力が乱れる。
「「リヒト様、魔力を止めないでくださいよ!?」」
カルロと魔塔主にそう言われて、私はなんとか魔力を流し続ける。
「何それ? 楽しそう! 僕も混ぜて!」
ラズリまで魔力を流そうとして、私は慌てる。
「ラズリは闇属性ではないですよね!?」
「仲間外れにしないでよ!!」
闇属性の魔力だけで構成されていた魔法陣にラズリが無理やり光属性の魔力を注いできた。
すると、魔塔主の魔力でまたすこし増えていた精霊が、ラズリの光属性の魔力でさらに精霊が増え、光の柱が立ち始めた。
「予想外にいい方向に向かっていますね」
魔塔主の言葉に頷きを返し、私は闇属性の魔力と同時に光属性の魔力を流してみた。
魔塔主は闇属性の魔力を止めて、光属性の魔力だけを流し始めた。
すると、光の柱は太くなり、光の強さも増したものの、亜空間が小さくなった。
我々は一度魔力を注ぎ込むことをやめて、話し合いを行う。
「これは、つまり、複数人の魔力が必要ということでしょうか?」
「同じ属性でも人によって魔力はそれぞれ微妙に違いますから、その魔力の違いによって寄ってくる精霊が違うのかもしれないですね」
私の問いかけに魔塔主も考えながら返してくれる。
同じ属性でも人によって魔力は微妙に違うからこそ、魔塔主は魔力で他者の判別ができているのだ。
「闇属性の魔力でも複数人集まることで、より一層ダンジョンを形成する闇属性の精霊力に近くなるということでしょうか?」
「そういうことかもしれないね」とラズリが頷く。
「それに、空間分析を行った際に闇属性の魔力に近い精霊力が99%だったのですが、あとの1%がおそらくダンジョンの実体として目視できる部分を作る精霊力だったのでしょう」
魔塔主からもたらされた急な新事実に私は目を見開いた。
その1%の話を我々は聞いていない。
「どうして、その1%の部分についてすぐに話してくれなかったのですか?」
「たったの1%でしたので」
「目視できる部分を形成しているのだから重要な部分だったではないですか?」
「その1%が目視できる部分だとわかったのは今じゃないですか?」
頭痛がしてきた。
「今日は収穫が大きかったね!」
不毛な言い合いをしていた私と魔塔主の横でラズリはご機嫌だ。
「それじゃ、次はもっと素材を連れてきてね! リヒト様!」
ラズリの言葉の意味がわからなくて私は首を傾げた。
「素材を連れてくるとはどういうことですか?」
「リヒト様のところには今魔法学園の生徒たちが来てるよね?」
「そうですね……」
嫌な予感しかしない。
ラズリは爽やかに微笑んだ。
「ダンジョン作りに使えそうな属性の生徒たちを連れてきてね」
「ダメです!!」
「どうして?」
「ダンジョンを意図的に作ることができるなんて知られたら面倒なことになるではないですか?」
「それは大丈夫です」
魔塔主はさらりとそんなことを言うが、どう大丈夫だと言うのだろうか?
「ダンジョン制作に関わった生徒たちには他言しないという契約書を書かせますから」
本当に、どうして魔塔主はそのようなことをなんでもないことのように言えるのだろう?
「協力をしてもらう側なのにも関わらずそのようなものを書かせるわけにはいきません」
彼らは一国の王子王女だし、それでなくても自我のある個人だ。
一方的すぎる契約などお願いするわけにはいかないし、彼らだってそんな契約は結ばないだろう。
「それでは、彼らに選択させてはどうですか?」
「選択、ですか?」
「はい」と魔塔主はにこりと微笑んだ。
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