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魔法学園編
169 難民? 01
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「……今、なんと言いましたか?」
第一補佐官自ら私に持ってきた情報に私は嫌な予感がした。
もちろん、第一補佐官も同じ嫌な予感を感じて私へと直接報告しに来たのだろう。
「各地で天空都市の目撃情報があります」
「つまり、オルニス国が移動しているということですか?」
「空に浮かぶ都市というのが他になければそういうことになるかと思います」
「復興が終わったらこちらにも知らせてくれるように伝えてあるのですが、そのような話はないのですよね?」
「はい。復興が終了したという話はございません」
「天空都市がエトワール王国に近づいているなんていう話は……」
「ないですよね?」と聞きたかったのだが、第一補佐官が非常に残念そうな表情で言った。
「私もそう希望を持って、しばらく目撃情報を精査していたのですが……」
その希望は叶わなかったようだ。
「こちらに向かっているのですね?」
「はい」と第一補佐官は頷いた。
「わかりました。話を聞いてきます」
立ち上がった私にカルロがくっつこうとしたのをヘンリックが止める。
「邪魔をしないでください! ヘンリック!」
「カルロはリヒト様の影を通れるのですから、護衛がリヒト様と一緒に行くべきです!」
「僕だって護衛の役割をすることができます!」
「それなら、私と役割を交換しましょう! そして、従者の部屋を譲ってください」
カルロは頬を膨らませて影の中へと入っていった。
ヘンリックとカルロが口喧嘩をしても大体がカルロが言い負かされている。
二人の様子を見ていた第一補佐官は苦笑した。
「リヒト様、よろしくお願いします。ヘンリック、リヒト様をしっかり守ってください」
オルニスは転移であろうと徒歩であろうと結界の外から中に入った者がいればその異変を城で働く者や警備の者がわかるようになっているという。
魔塔主が転移する時にいつも転移先の場所として使っている城の最も高い塔へと転移すると、首長代理や他の者たちもすぐに階段を駆け上がってきた。
「ようこそおいでくださいました! リヒト様!!」
「リヒト様のお言い付け通りに復興作業は進めております!」
私の言いつけ通りって、復興を進めるのは普通のことであり、私はこの国を治める者ではない。
随分と妙な言い回しをすると思いながらも私はとりあえずは今回の天空都市の移動について聞くことにした。
ちなみに、ヘンリックは私のすぐ後ろに控えているし、カルロもすぐに私の影から出てきた。
「首長代理、オルニスを元あった森から移動させているようですが、どうしてですか?」
「エラーレ王国より二度も攻撃を受けまして、煩わしいのであの土地を捨てることにしたのです!」
「しかし、エルフたちは長年、あの森で生きてきたのですよね? エラーレ王国のことはもうすこし待てばオーロ皇帝の沙汰が下されると思うのですが?」
悪いのはどう考えてもエラーレ王国なのだ。
オルニス国の悪い結果にはならないと思うのだが。
「帝国が多数の国を統一するまではどこの国に行こうとも危険があったために一番森が深いあの場所にいたのですが、今は帝国法を破ってまでオルニスを攻撃するのは因縁のあるエラーレ王国だけだと思いますので、他の国に移動した方が安全だと皆と話し合ったのです」
「なるほど……」
確かに、隣国がエラーレ王国である以上、オーロ皇帝から罰が下されようと、たとえ王が代替わりしようと、オルニス国の不安は消えないだろう。
それならばと問題が起きない隣国を求めた方がいいという考えに至っても不思議ではない。
私はため息をつき、すこし緊張しながら肝心なことを聞いた。
「それで、どこに行くつもりなのですか?」
「それはもちろん、我々と唯一国交を結んでいるエトワール王国です!」
予想通りの回答に私は額をおさえた。
「ちなみに、移動の許可をオーロ皇帝からは取っているのですか?」
「転移魔導具で書簡を送らせていただいたところ、リヒト様の許可があれば問題ないということでした!」
オーロ皇帝のいい加減さに私はめまいを覚えた。
あの皇帝、何をいい加減なことを言ってくれているのか……
「私の許可というのは、どういうことですか……まずは私の父の許可を取るべきだと思うのですが?」
「しかし、オーロ皇帝の指示ですから」
指示……エトワール王国の現王をすっ飛ばして王子である私に許可を取れということを指示と捉えていいのだろうか?
「両親と相談しますので、これで失礼します」
頭痛を覚えた私は冷静になるために、その場をひとまずは撤退することにした。
しかし、首長代理に引き留められた。
「お待ちください! リヒト様!! 私も連れて行ってください!」
「首長代理をですか?」
「はい! 私からエトワール王に現状をご説明させていただき、エトワール王国上空をお借りしたいとお願いしたいのです」
そんなことをされては人がいい父王が断ることはできないように思うのだが、しかし、人が良すぎるが故にどのみち受け入れるような気もする。
それならば、オルニス国の首長代理に礼儀を通してもらった方が体裁がいいのかもしれない。
ちなみに、本当の首長である魔塔主が出てきたら説明とか吹っ飛ばして受け入れざるを得ないだろうから魔塔主は不在の方がいいだろう。
第一補佐官自ら私に持ってきた情報に私は嫌な予感がした。
もちろん、第一補佐官も同じ嫌な予感を感じて私へと直接報告しに来たのだろう。
「各地で天空都市の目撃情報があります」
「つまり、オルニス国が移動しているということですか?」
「空に浮かぶ都市というのが他になければそういうことになるかと思います」
「復興が終わったらこちらにも知らせてくれるように伝えてあるのですが、そのような話はないのですよね?」
「はい。復興が終了したという話はございません」
「天空都市がエトワール王国に近づいているなんていう話は……」
「ないですよね?」と聞きたかったのだが、第一補佐官が非常に残念そうな表情で言った。
「私もそう希望を持って、しばらく目撃情報を精査していたのですが……」
その希望は叶わなかったようだ。
「こちらに向かっているのですね?」
「はい」と第一補佐官は頷いた。
「わかりました。話を聞いてきます」
立ち上がった私にカルロがくっつこうとしたのをヘンリックが止める。
「邪魔をしないでください! ヘンリック!」
「カルロはリヒト様の影を通れるのですから、護衛がリヒト様と一緒に行くべきです!」
「僕だって護衛の役割をすることができます!」
「それなら、私と役割を交換しましょう! そして、従者の部屋を譲ってください」
カルロは頬を膨らませて影の中へと入っていった。
ヘンリックとカルロが口喧嘩をしても大体がカルロが言い負かされている。
二人の様子を見ていた第一補佐官は苦笑した。
「リヒト様、よろしくお願いします。ヘンリック、リヒト様をしっかり守ってください」
オルニスは転移であろうと徒歩であろうと結界の外から中に入った者がいればその異変を城で働く者や警備の者がわかるようになっているという。
魔塔主が転移する時にいつも転移先の場所として使っている城の最も高い塔へと転移すると、首長代理や他の者たちもすぐに階段を駆け上がってきた。
「ようこそおいでくださいました! リヒト様!!」
「リヒト様のお言い付け通りに復興作業は進めております!」
私の言いつけ通りって、復興を進めるのは普通のことであり、私はこの国を治める者ではない。
随分と妙な言い回しをすると思いながらも私はとりあえずは今回の天空都市の移動について聞くことにした。
ちなみに、ヘンリックは私のすぐ後ろに控えているし、カルロもすぐに私の影から出てきた。
「首長代理、オルニスを元あった森から移動させているようですが、どうしてですか?」
「エラーレ王国より二度も攻撃を受けまして、煩わしいのであの土地を捨てることにしたのです!」
「しかし、エルフたちは長年、あの森で生きてきたのですよね? エラーレ王国のことはもうすこし待てばオーロ皇帝の沙汰が下されると思うのですが?」
悪いのはどう考えてもエラーレ王国なのだ。
オルニス国の悪い結果にはならないと思うのだが。
「帝国が多数の国を統一するまではどこの国に行こうとも危険があったために一番森が深いあの場所にいたのですが、今は帝国法を破ってまでオルニスを攻撃するのは因縁のあるエラーレ王国だけだと思いますので、他の国に移動した方が安全だと皆と話し合ったのです」
「なるほど……」
確かに、隣国がエラーレ王国である以上、オーロ皇帝から罰が下されようと、たとえ王が代替わりしようと、オルニス国の不安は消えないだろう。
それならばと問題が起きない隣国を求めた方がいいという考えに至っても不思議ではない。
私はため息をつき、すこし緊張しながら肝心なことを聞いた。
「それで、どこに行くつもりなのですか?」
「それはもちろん、我々と唯一国交を結んでいるエトワール王国です!」
予想通りの回答に私は額をおさえた。
「ちなみに、移動の許可をオーロ皇帝からは取っているのですか?」
「転移魔導具で書簡を送らせていただいたところ、リヒト様の許可があれば問題ないということでした!」
オーロ皇帝のいい加減さに私はめまいを覚えた。
あの皇帝、何をいい加減なことを言ってくれているのか……
「私の許可というのは、どういうことですか……まずは私の父の許可を取るべきだと思うのですが?」
「しかし、オーロ皇帝の指示ですから」
指示……エトワール王国の現王をすっ飛ばして王子である私に許可を取れということを指示と捉えていいのだろうか?
「両親と相談しますので、これで失礼します」
頭痛を覚えた私は冷静になるために、その場をひとまずは撤退することにした。
しかし、首長代理に引き留められた。
「お待ちください! リヒト様!! 私も連れて行ってください!」
「首長代理をですか?」
「はい! 私からエトワール王に現状をご説明させていただき、エトワール王国上空をお借りしたいとお願いしたいのです」
そんなことをされては人がいい父王が断ることはできないように思うのだが、しかし、人が良すぎるが故にどのみち受け入れるような気もする。
それならば、オルニス国の首長代理に礼儀を通してもらった方が体裁がいいのかもしれない。
ちなみに、本当の首長である魔塔主が出てきたら説明とか吹っ飛ばして受け入れざるを得ないだろうから魔塔主は不在の方がいいだろう。
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