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はぴねこ

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魔法学園編

152 魔物討伐? 05

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「リヒト様!」

 甲高い声の方を見ると、ナタリアがいつもの優雅な足取りではなく、早歩きでこちらに向かって来ていた。

「どうしました?」
「わたくしたち水属性の者は身を守る術がなくてアルコーダに触るのが少し怖いのです! お手伝いいただけませんか!?」

 なんだろう。
 すごく言葉の圧が強い。
 それに、ナタリアはさっきまでアルコーダをもこもこしていたように思うのだが?

 しかし、見れば、確かにナタリアと同じ水属性の者たちの中にはまだアルコーダとの距離がある者たちがいる。
 彼ら彼女らも頬を染めているのだから、やはりアルコーダの可愛さには興味があるものの、アルコーダの大きさと角の危険性に緊張してしまっているのだろう。

「わかりました。それでは、私がアルコーダの動きに注意し、いざとなればお守りしますね」
「よろしくお願いいたします!」

 私をはじめとした他の生徒たちの協力の元、水属性の生徒たちも無事にアルコーダと触れ合うことができて、授業は平和なまま無事に終わった。

 あまりのアルコーダのもこもこ感と可愛さに、私は今度は個人的に遊びに来ようと心に誓った。



 次の授業はアイトスが渡ってくるというセールア王国へと向かうことになっている。

 アイトスに関しては実際に人を攫ったりという被害が出ている危険な魔鳥だ。
 しかし、私はやはり単純に討伐を考えることを躊躇してしまう。
 人々の脅威になっていることは重々承知しているものの、魔鳥だって食べなければ死んでしまう。

 さて、どうしたものかと私は実際にアイトスの討伐に行く日まで考えていた。

 アイトスは元々は孤島にいるという。
 ちなみに、孤島でのアイトスの目撃情報は一羽で、大陸に飛んできたアイトスの目撃情報も一羽のため、アイトスは一羽しかいないと考えられている。

 おそらく、長命なのだろうが、せめて雄雌が一羽ずついないと繁殖ができないだろうから、どこかにもう一羽いるのか、もしくは、今姿を現すアイトスが最後の一羽なのかはわかっていない。

 春から秋までは孤島に十分な食物があるようで、アイトスが大陸に渡ってくることはないようだ。
 そもそもアイトスは人間よりも果物の方が好きだという。

 つまり、単純に考えれば好きな食べ物があれば、わざわざ人間を襲ったりはしないわけだ。
 しかし、季節は冬。

 前世では寒い季節にも温室で作った果物がスーパーに並んでいたし、寒さに強いりんごもあったが、この世界ではおそらくまだ温室が開発されていない。
 
 しかし、よく考えればそれも変な話だ。
 冬には家の中を温める魔導具があるし、オルニスはクリスタルで集められる熱で暑くなりすぎないように魔法で温度管理をしていた。
 魔導具を使ってもおそらく温室を作るのはそれほど難しくないし、魔法を使えばもっと簡単だろう。
 それなのに、なぜ、温室がないのか……

「アイトスの件は、我が国でなんとかしようと思います」

 いざ、アイトスのいる国に向かおうという日に、セールア王国の王子であるノアがそう言った。
 モラガル王国のイェレナのように国に報告したら不要だと言われたのだろうか?
 そう聞けば、ノアは首を横に振った。

「いえ。父は喜んでいたのですが……アイトスは一羽しか目撃されておらず、あの個体が最後の一羽なのかもしれないのです……数の問題ではないのですが、討伐するよりは、我が国の国民が被害を受けないようにアイトスが飛ぶ範囲を把握してその周辺の地域には注意を促すなど、他にできることがあるのではないかと思ったのです」

 私はノアが単純に討伐すれば良いという考えを改めてくれたことが嬉しくて、思わずノアの手を握った。

「私も、討伐以外にできることはないのかを考えていました! ノア王子がそのように考えてくれて嬉しいです!!」

 ノアは突然熱でも出たのか、その顔が赤くなった。
 心配になり、ノアの顔を覗き込もうとした私をカルロがノアから引き離した。

「リヒト様、そのような態度はお控えください」

 確かに、彼は他国の王子だ。
 失礼にあたったかもしれない。

「不躾な態度をとってしまい、申し訳ございません」

 そうノアに謝罪すると、ノアは慌てたように首をブンッブンッと横に振ってくれた。

 カルロはなぜか深いため息をついている。
 それほど呆れるような態度をとってしまったのだろう。
 申し訳ない。

 私が離れると赤い顔のままこほんっとノアが咳払いを一つした。
 やはり、風邪でも引いているのだろうか?

「とにかく、そういうわけで、アイトスの問題は我が国でなんとか対処してみようと思います」

「わかりました」と私は頷いた。
 そして、他の生徒たちを見回した。

「それでは、みんなでアイトスにどのように対処するのが一番いいのか、考えましょう」

 セールア王国のために意見を出し合うことに対して反対する意見はなく、ライオスとナタリアが自主的に書記として黒板の前に立ってくれた。

 ノアは驚いたようにクラスメイトの様子を見ていたが、仲のいい学生たちに呼ばれると嬉しそうに笑った。

 アイトスの見張りの強化やアイトスに通信機をつける、南国から果物を調達して餌場を作るなど様々な意見が出された。

 最近気づいたのだが、私が意見を言うと皆それに従おうとしてしまうので、私は極力何も言わずに黙って皆の意見を聞いていた。
 様々な意見が出た後で、ノアは私のことを見た。

「あの……リヒト様のご意見も聞きたいのですが……」
「いや、私の意見はあまり参考にならないと思うから……」
「そんなことありません! これまでも僕たちを導いてくれたじゃないですか!」

 私が困ってハバルの方へ視線を向ければ、「私もリヒト様の意見が聞いてみたいです」と全く助けにならないことを言った。

「えっと……皆さんも聞きたいですか?」

 嫌な顔をする者が大半を占めるようだったらやめておこうと思ったのだが、なぜか期待に瞳を輝かせるような表情を見せる者ばかりで、私は仕方なく口を開いた。

「これはすぐにできることではなく、何年もかかってしまうかもしれないのですが、アイトスの孤島を一年中果物が取れる環境に変えることができればいいと思います」

 みんなの顔にわかりやすく疑問符が浮かんだ。
 私に絶対の信頼を寄せているカルロだけがさすがリヒト様! みたいな顔をしている。




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