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魔法学園編

141 魔法学園入学 01

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 前世の世界では九月入学が一般的だったらしい。
「らしい」というのは、私のいた日本では四月入学だったからだ。
 しかし、世界的には農作業が忙しい時期には子供たちにも手伝ってもらっていたために、農閑期の九月入学の国が多かったそうだ。

 この世界でも月数は12ヶ月で帝国傘下の国の季節も大体が北半球の季節と変わらない。
 そのため、一般の子供たちの学校ならば農作業が忙しい時期の入学は避け、なんなら学校を長期休暇にして、農閑期に勉学に励んでもらう方がいいだろうと思う。

 しかし、魔法学園に通うのは基本的には王族と貴族だ。
 今後、平民の入学者が増えるにしても、おそらく商家の子供たちになるのではないかと思う。
 彼らの入学時期も農閑期が適切なのだろうか?

 いつからの入学がいいのか、学校が開いている期間はどれくらいが良いのかを第一補佐官や魔塔主に相談したところ、国民が忙しい時期には役所や文官も忙しく、騒動もそうした時期に集中するために騎士たちもよく街に出るのだと第一補佐官が教えてくれた。

 そして、魔塔主からは長期休みが何度かあるにしてもほぼ一年を通して教えることはないと言われた。
 魔法の学習とは、理論を学び、修練を繰り返すことなので、短期間で理論を学ばせ、他の期間は自国で修練鍛錬し、教えた魔法についての理解や技術が高まったらまた学園に来て学ぶという方が魔塔の研究者にとっても無駄がなくていいということだった。

 確かに、魔塔の魔法使いたちは交代で授業を行なってくれるとは言っても、彼らの本業は研究だ。
 研究に集中する期間を確保することは重要だろう。

「話し合いの結果、十月に入学と始業式、秋から冬にかけて講義を行い、冬の間に実践訓練、二月が終業式ということになりそうです」

 オーロ皇帝に報告すると、「まぁ、妥当なところだろう」と許可をもらった。

 ゲームでは明確な月数とか言っていなかったので、前世の感覚でてっきりほぼ一年間かけて学び、進級するものと思っていたが、魔法を習得するのに必要なのは理論と修練の時間で、当然、修練の時間の方が長いため、こうしたスケジュールが妥当だろう。

 天才揃いの魔塔の魔法使いたちからすると、季節ひとつ分でも理論を学ぶ時間は多すぎると感じるようだったが、そこはなんとか納得してもらった。

 ライオスの立てた計画では1年間毎日学校に通い、魔法について学ぶとなっていたが、残念ながらそれは叶わない。
 一年間のうち半年しか魔法学園が開校しないのを残念に思ったライオスは、希望者は魔塔の魔法使いの助手として研究の手伝いをしてはどうかと提案したが、魔塔主に「邪魔です」と一言で却下された。

 魔法の理論を学ぶのならばその期間で充分だし、その期間で魔法を習得するということを身につけるができないのならば才能がないと諦めるべきだと魔塔主は言っていた。
 魔塔の魔法使いたちは何も一から十まで全ての魔法を生徒たちに教えるためにいるのではない。
 魔法を身につける方法を学ばせるためにいるのだ。

 ライオスはとても残念がっていたが、魔塔の魔法使いたちのやる気を削いでは意味がないので、ここはライオスに折れてもらう他ない。



 試験を終え、入学生も決まると入学式まではあっという間だった。

 オーロ皇帝の求める入学金、授業料、寄付金が用意できないほどの貧しい国でない限り、12歳以上15歳以下の王子王女がいる国のほぼ全ての国の王子王女が試験を受けた。
 ちなみに、15歳までの年齢の受験を受け入れるのは今年だけだ。
 もっと早くに魔法学園を作ってくれればという不満解消のための救済処置である。

 心配だったライオスの入学だが、無事に許可を得ることができた。
 ライオスには魔力が少ないために実技は最下位だったが、筆記は高得点だったのと、実技も筆記も成績一位で魔法学園の提案者でもある私の推薦で入学を許可された。
 魔法学園創設のために何年も頑張ってくれたライオスが入学できないのはあまりにも可哀想だったため、魔塔の魔法使いたちが入学を認めてくれて本当によかった。

 入学式にはオーロ皇帝が創設者として列席した。
 魔塔主が理事長を引き受けたことにより対抗心が芽生えたようで、自分も何か役職をやりたいと言い出したので、創設者という名誉職を作った。
 皇太子が学園長なのだからそれでいいのでは? とも思ったが、オーロ皇帝と魔塔主の名前があれば魔法学園やエトワール王国への他国からの横槍や圧力はほぼなくなるだろう。

 もちろん、カルロやナタリアも合格している。
 しかし、フェリックスは不合格だった。

 フェリックスが不合格だったため、エラーレ王国の入学者はゼロとなった。
 エラーレ王国からは他の貴族も入学試験を受けていたが、誰も受からなかったのだ。
 ライオスと一緒に勉強していたはずのフェリックスだったが、机に座って集中して学習することが苦手だったようで、ライオスは世話を見ることを早々に放棄したらしい。

 まさかの攻略対象が入学できないという展開に少し動揺したが、そもそも先輩のはずのフェリックスが魔法学園がなかったために同級生になるところだったのだ。
 すでにゲームとは様々なことが変わっているので、あまり気にしないことにした。

 ヘンリックは自身の考えで試験さえも受けていないし、きっと問題はないだろう。

 魔法学園では自分の身なりを整えることさえもままならない王子や王女、貴族の子女のために従者を一人、そして護衛を一人連れてくることが可能だ。
 私の場合は一人でも自分の身の回りのことをすることが可能だったが、一緒に入学するカルロが色々と世話を焼いてくれる。

 それから、護衛騎士としてヘンリックを連れて来ていた。
 ゲームではヘンリックは魔法学園の生徒で攻略対象だったのだが、今回は魔法よりも剣の腕を磨き、私の護衛をしたいというヘンリックの希望を叶えることとなった。



「お前がリヒトか?」

 入学式が行われる講堂で開始の時間を待っていると、同年代の少年に声をかけられた。




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