ショタ魔王と第三皇子

梅雨

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デートの準備

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「で、今日はなんで俺呼ばれたんだ?」

気を取り直して、ベンチに座りキュロに向き合うと朝食の入った籠を蔦に巻きつけ前に差し出してきた。
先に食べろ、または食べながら話そうってことか。お言葉、というより行動に甘えて、籠の中に敷き詰められたサンドウィッチを頬張る。

「ランハートから何も聞いてないんだろうね。知ってたよ、どうせ魔王様に付きっきりなんだろうし」

キュロが軽く指を振ると、外の土が少し盛り上がった。
形を変え、大きさは小さいもののどんどん人の姿に近くなっていっている。口を忙しなく動かしていれば、あっという間にアルの土人形が完成した。デフォルメされているにも関わらず、特徴をよく捉え一瞬でアルだと分かる出来栄え。

「凄いな、キュロの魔法」
「こんな初歩にも足らないやつに拍手しないでよ......」
「俺は初歩すら使えないから」
「それを、これから、なんとかするの。というかその話するよ。嫌だけど」

トテトテと歩くアルの人形の前に、もう二つ人形が造られる。一つは俺の人形、ともう一つは。

「......ん?」

足が少し崩れていて、顔は殴られたような凹み方をしている。このワザとらしい手抜きはランハートだろう。どれだけ嫌いなんだ。

「まず、俺は今回ニオ様に魔法を教えるためにわざわざこうして地上にまで来た。それは魔王様とニオ様のためなの」
「俺とアルの?」
「そう」
「え、全然なんでか想像できない」
「......そう」

目も口も弧を描いているのに笑顔と思えない顔。仕方ないじゃないか。答えの想像がつかない、ヒントもない。難問、いや問題ではないけれど察しろと言われても無理だ。

「答えを教えてくれないか」
「もとよりそのつもり。ちょっと待って。自分の口からアレ言いたくない」

人形の間にニョロニョロ生えてきた植物はウツボカズラの腹に人間の口を縫い付けたみたいな奇妙な姿をしていた。胃液らしきものを何度か吐き出すと、大きく空気を取り込んで頭の痛いことを叫び出した。

『ニオと僕のドキドキ‼︎愛し愛されデート大作戦‼︎‼︎』

アルの声だ。紛れもないアルの声だ。
あの俺に対して異様に甘く優しい声が、頭パッパラパーにでもなったのかって語彙でとんでもなく恥ずかしい事を言っている。
思わず頭を抱えてしまった。そんな俺を見て頷くキュロ。なるほど今日の彼の気が乗らないといった態度はこれのせいか。ガツンと来たアルの衝撃に、よく味わって食べていたフォルカのサンドウィッチの味がもう思い出せない。










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