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デートの準備
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朝、目を覚ますとすでにアルはいなかった。
最近忙しいらしく、夕食以外で顔を合わせることがあまりない。
魔王の仕事といえば城や街を襲うのは魔王軍が管理しきれなかったり、まだ統括出来ていない魔物達。その殲滅が頭に浮かんだが、フォルカ曰く、南諸国の魔族撲滅運動が活発になってきたそうだ。
魔王軍の目的は大陸全土の支配。
人間との和平交渉がとうの昔に潰えてしまったせいで、魔族と人類はどちらかが倒れ平伏するまで戦いを余儀なくされた。が、アルは戦力を配置しているだけでこちらから攻めることはないと言っている。只今どの国とも魔王軍は停戦中。
無鉄砲に突っ込んでこないかぎり、争いは起きない。
無駄な死者は出したくない。
そのためにアルは身に合わない量の仕事をこなしている。正直身体を壊してしまわないか心配だ。
俺も何か手伝えればいいのだけど、ランハートに相談しても分厚くオブラートに包まれた大人しくしてろが返ってくるだけだ。
そりゃあ剣も魔法も出来ないけど。何も出来ないから何もしないのは、嫌だ。
努力さえも怠ってしまったら俺には何も残らない。
『でも成長が実感出来ない努力ほど、自分が無駄に感じるものってないよね。時間の喪失感とか精神とかめっちゃくるし』
「⁉︎」
『口から全部出てた』
どこからかキュロの声がする。
周りを探してもいない。いやそりゃいるのに見つけられなかったら目が腐ってると思う。
扉もキチンと閉まっているし、あの大きなクローゼットの中にも誰もいない。そういう魔法なんだろうか。
『探してもいないよ。植物を介してるの』
あれか、と窓際に置かれた小さな鉢に咲く花を見る。魔法で作られたものでなく、本物の花だ。
眩しい日光が絶え間なく注がれている。魔王城の外の国々は晴天らしい。
魔王城付近は雲が常に浮かんで曇り空でどこも変わらない澱んだ景色なのにこの寝室の窓からは朝日が差し込む。
なぜかといえば、人間には日光がないと死んでしまうとかいう情報をアルが仕入れていたせい。健康に良くないというのは分かるが、死んでしまうのは聞いたことがない。
魔王の特権で特別な魔法を使い、太陽を拝めるようにしてくれているそうだが、どこに繋いでいるのかは秘密なんだそうだ。
庭園の花は魔力が太陽の代わりになって育っていたり、そもそも魔法で作られていたりと、純粋な花がないとランハートが言っていたっけ。
「会話も出来るとか凄いな。魔族の魔法」
『いいから。東の庭園に来て。ご飯食べながら話そう』
呆れた、というより心底面倒臭そうな声。
休まずにゲームずっとやってたりしたのかな。あれ物凄い目と頭に負担くるし。
『鬼畜執事から頼まれたんだ。ニオ様の暇潰し相手になってほしいって』
最近忙しいらしく、夕食以外で顔を合わせることがあまりない。
魔王の仕事といえば城や街を襲うのは魔王軍が管理しきれなかったり、まだ統括出来ていない魔物達。その殲滅が頭に浮かんだが、フォルカ曰く、南諸国の魔族撲滅運動が活発になってきたそうだ。
魔王軍の目的は大陸全土の支配。
人間との和平交渉がとうの昔に潰えてしまったせいで、魔族と人類はどちらかが倒れ平伏するまで戦いを余儀なくされた。が、アルは戦力を配置しているだけでこちらから攻めることはないと言っている。只今どの国とも魔王軍は停戦中。
無鉄砲に突っ込んでこないかぎり、争いは起きない。
無駄な死者は出したくない。
そのためにアルは身に合わない量の仕事をこなしている。正直身体を壊してしまわないか心配だ。
俺も何か手伝えればいいのだけど、ランハートに相談しても分厚くオブラートに包まれた大人しくしてろが返ってくるだけだ。
そりゃあ剣も魔法も出来ないけど。何も出来ないから何もしないのは、嫌だ。
努力さえも怠ってしまったら俺には何も残らない。
『でも成長が実感出来ない努力ほど、自分が無駄に感じるものってないよね。時間の喪失感とか精神とかめっちゃくるし』
「⁉︎」
『口から全部出てた』
どこからかキュロの声がする。
周りを探してもいない。いやそりゃいるのに見つけられなかったら目が腐ってると思う。
扉もキチンと閉まっているし、あの大きなクローゼットの中にも誰もいない。そういう魔法なんだろうか。
『探してもいないよ。植物を介してるの』
あれか、と窓際に置かれた小さな鉢に咲く花を見る。魔法で作られたものでなく、本物の花だ。
眩しい日光が絶え間なく注がれている。魔王城の外の国々は晴天らしい。
魔王城付近は雲が常に浮かんで曇り空でどこも変わらない澱んだ景色なのにこの寝室の窓からは朝日が差し込む。
なぜかといえば、人間には日光がないと死んでしまうとかいう情報をアルが仕入れていたせい。健康に良くないというのは分かるが、死んでしまうのは聞いたことがない。
魔王の特権で特別な魔法を使い、太陽を拝めるようにしてくれているそうだが、どこに繋いでいるのかは秘密なんだそうだ。
庭園の花は魔力が太陽の代わりになって育っていたり、そもそも魔法で作られていたりと、純粋な花がないとランハートが言っていたっけ。
「会話も出来るとか凄いな。魔族の魔法」
『いいから。東の庭園に来て。ご飯食べながら話そう』
呆れた、というより心底面倒臭そうな声。
休まずにゲームずっとやってたりしたのかな。あれ物凄い目と頭に負担くるし。
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