19 / 48
魔王城の生活
12
しおりを挟む
「......拷問室には近付くなってランハートに言われてるんだ。ごめん」
「それじゃ仕方ないかー」
ルベル。キュロの恋人、太陽にも例えられていたが納得だ。彼が声を発し、笑顔になる度に後光が見える気がする。
こんなに明るい性格しているのに、手に持った得物の放つ物騒なオーラが拷問官であることを示していた。
「いつでも遊びに来てくれて大丈夫なんで‼︎気が向いたら来てください‼︎オレ奥方様とおしゃべりしたい‼︎」
「わ、分かった。聞いてみる」
「ありがとうございます‼︎じゃ、オレ仕事に戻りますね‼︎今拷問中なのに抜け出してきちゃったので‼︎」
「あっ待って」
颯爽と去っていくルベルの背に妙な悪寒がして引き留めてしまった。
「はい‼︎」
「今拷問してるのって、人間?」
「......そうですけど。気になる?」
固唾を飲み込んで頷くと、少し悩んだルベルはまぁいいかとポケットから手帳を取り出した。黒い背表紙なのに燭台の炎を反射してテカテカしている。革だからじゃない、あれは絨毯のシミと同じ血だ。持ってる物全てについているんじゃないかあれ。
「え~っと。名前はグレア、齢二十三。南の国にて魔王軍の兵士二十を殺害。国の第二騎士団に所属してあり、貴族と裏取引し単身での魔物討伐を繰り返してたらしいよ?ここ数年で随分いい生活してたらしくて、だいぶ鈍ってたから捕えるの簡単で助かったんだ~‼︎」
「そ、そうなのか」
「うん‼︎今はね~、ゆりかご使ってドンッてやってる‼︎奥方様にも見せてあげたいな~。怒られるからやらないけど」
怒られるからがやらない理由なのはどうなんだろう。
ルベルの倫理観があるのかないのか。いやそれよりゆりかごって何だ。拷問なのか。赤ちゃんの格好させて遊ぶ、とか。
「殺したりするのか、そのグレアって人」
「え?殺さない殺さない。ちゃんと話すこと話してくれたら帰すのが決まりなんだ。心身ともに直して国に返品......安心した?」
あからさまに俺がほっとしたのに気付いたらしいルベルは、ほのかに笑顔を浮かべる。
「あぁ、ありがとう」
「そっか、よかった。じゃあ今度こそまたねだ‼︎奥方様‼︎」
手を大きく振りながら走り去っていくルベルに俺も手を振りかえす。
タバサ先生の言っていた通りの魔族だったな。
あの絨毯はどうするんだろう、と思っていたらどこからともなくメイドが出てきて魔法で手早くシミを消していた。
東の国には黒い装束を身に纏って素早く仕事をこなす忍者というものがいるらしいが、それを連想させるような早業だった。
そういえばメイドの誰にも挨拶していないな。と声をかけようとしたが、俺を一瞥した後何事もなかったかのように姿を消した。
「ランハートに言えば挨拶する機会くらい作ってくれるか」
昨日も廊下で見かけた時も、俺の姿を見る度メイド達は溶けるように消えていった。なんなら執事もそうだ。ランハート以外の使用人とは話したことがない。
「わざわざ言うのも申し訳ないな」
「仕方ありませんヨ。彼女らはミーンナ恥ずかしがり屋さんなのデス」
「わっ⁉︎」
「それじゃ仕方ないかー」
ルベル。キュロの恋人、太陽にも例えられていたが納得だ。彼が声を発し、笑顔になる度に後光が見える気がする。
こんなに明るい性格しているのに、手に持った得物の放つ物騒なオーラが拷問官であることを示していた。
「いつでも遊びに来てくれて大丈夫なんで‼︎気が向いたら来てください‼︎オレ奥方様とおしゃべりしたい‼︎」
「わ、分かった。聞いてみる」
「ありがとうございます‼︎じゃ、オレ仕事に戻りますね‼︎今拷問中なのに抜け出してきちゃったので‼︎」
「あっ待って」
颯爽と去っていくルベルの背に妙な悪寒がして引き留めてしまった。
「はい‼︎」
「今拷問してるのって、人間?」
「......そうですけど。気になる?」
固唾を飲み込んで頷くと、少し悩んだルベルはまぁいいかとポケットから手帳を取り出した。黒い背表紙なのに燭台の炎を反射してテカテカしている。革だからじゃない、あれは絨毯のシミと同じ血だ。持ってる物全てについているんじゃないかあれ。
「え~っと。名前はグレア、齢二十三。南の国にて魔王軍の兵士二十を殺害。国の第二騎士団に所属してあり、貴族と裏取引し単身での魔物討伐を繰り返してたらしいよ?ここ数年で随分いい生活してたらしくて、だいぶ鈍ってたから捕えるの簡単で助かったんだ~‼︎」
「そ、そうなのか」
「うん‼︎今はね~、ゆりかご使ってドンッてやってる‼︎奥方様にも見せてあげたいな~。怒られるからやらないけど」
怒られるからがやらない理由なのはどうなんだろう。
ルベルの倫理観があるのかないのか。いやそれよりゆりかごって何だ。拷問なのか。赤ちゃんの格好させて遊ぶ、とか。
「殺したりするのか、そのグレアって人」
「え?殺さない殺さない。ちゃんと話すこと話してくれたら帰すのが決まりなんだ。心身ともに直して国に返品......安心した?」
あからさまに俺がほっとしたのに気付いたらしいルベルは、ほのかに笑顔を浮かべる。
「あぁ、ありがとう」
「そっか、よかった。じゃあ今度こそまたねだ‼︎奥方様‼︎」
手を大きく振りながら走り去っていくルベルに俺も手を振りかえす。
タバサ先生の言っていた通りの魔族だったな。
あの絨毯はどうするんだろう、と思っていたらどこからともなくメイドが出てきて魔法で手早くシミを消していた。
東の国には黒い装束を身に纏って素早く仕事をこなす忍者というものがいるらしいが、それを連想させるような早業だった。
そういえばメイドの誰にも挨拶していないな。と声をかけようとしたが、俺を一瞥した後何事もなかったかのように姿を消した。
「ランハートに言えば挨拶する機会くらい作ってくれるか」
昨日も廊下で見かけた時も、俺の姿を見る度メイド達は溶けるように消えていった。なんなら執事もそうだ。ランハート以外の使用人とは話したことがない。
「わざわざ言うのも申し訳ないな」
「仕方ありませんヨ。彼女らはミーンナ恥ずかしがり屋さんなのデス」
「わっ⁉︎」
10
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる