15 / 48
魔王城の生活
8
しおりを挟む
しばらくキュロの資料室でゲームを眺めていた。
どんどん手捌きが激しくなっていって、目に負えなくなってきたあたりで、ついに眼精疲労が俺を襲ってくる。
画面から目を離し暗い部屋を見つめていた時、たまたま本来の目的を思い出して置きっぱなしにされていた紙をとる。
少しくしゃっとした紙にあっと思わず声を漏らすと、どうしたのとキュロが覗き込んできた。ゲームは一時停止されているようだ。この短期間でわざわざ手を止めてまでこちらの心配をしてくれるようになるなんて。
一瞬だが豪速球で人に懐く小動物とアルラウネを重ねてしまった。
「これ、これが目的だった」
「たった一枚のこの紙切れのために?」
「紙切れって......何が書いてあるの」
気になっていた内容を読み上げてもらうとキュロに問うが、全然聞いてもらえず。紙も軽く読み流してポイっと床に放り投げられた。
キュロにとって重要じゃないのか興味のない内容だったのか。今の俺では判断のしようがない。
どうして魔族と人間は共通の文字を使用してないのだろうか。いや文化が違うし言語が同じなだけありがたいと思うべきなんだけども。
「キュロ、気になるから教えてくれないか」
「いいけど。本当にそんな大した内容じゃないよ」
「いいから」
酷く深い溜息の後、蔦が先程放り投げられた紙を広いあげてキュロの近くまで運んでいく。
「俺の仕事、みっ......二つあるの。一つはこの資料室の管理。もう一つは庭園の大まかな管理。この紙切れにはね、庭園についての魔王様からの要望がたくさん。それはもうたくさん書かれてる」
キュロからすれば死ぬほど読んだらしい要望の数々。
なるほど、それなら読んだ瞬間に捨てても仕方がない、のかな。
「例えば、城壁の装飾を見飽きたから変えてほしいとか。庭園の花全部一新してほしい、種類はなんでもいい、とか。あ、でもこれはだいぶ前のお願いだけど」
「最近のは?」
「最近のは......あー」
「?」
「ニオ様からも言ってくんない?たった一種類の花だけで東西南北の庭園全部埋め尽くしてほしいとかどうかしてるって」
「一種類の花?」
「人間がオルレアって呼んでる花」
自分の顔が熱くなったのが分かった。
キュロが死ぬほどウザがっているその注文の元凶は俺だ。
その花を好きだと知っているアルが、何度も何度も注文を繰り返しているんだろう。
「ごめん」
「なんでニオ様が謝るの」
「それ、多分俺のせいだから」
キュロの顔が段々渋くなっていく。
本当に嫌になる程お願いされてるんだろうな。申し訳ない気持ちが募っていくけれど、どうにか出来るほどの力を俺は持ってない。
何か言っても、でもこの花好きだろう?で押し通される気がする。変なところでアルの確固たる意思が働きそうだ。
「ねぇ、ニオ様。今から文字起こすから、それ魔王様の前でそのまま音読して」
「えっ。でも俺魔族の文字読めないけど」
「ちゃんと人間の文字にするから。いい?」
「わ、分かった」
どんどん手捌きが激しくなっていって、目に負えなくなってきたあたりで、ついに眼精疲労が俺を襲ってくる。
画面から目を離し暗い部屋を見つめていた時、たまたま本来の目的を思い出して置きっぱなしにされていた紙をとる。
少しくしゃっとした紙にあっと思わず声を漏らすと、どうしたのとキュロが覗き込んできた。ゲームは一時停止されているようだ。この短期間でわざわざ手を止めてまでこちらの心配をしてくれるようになるなんて。
一瞬だが豪速球で人に懐く小動物とアルラウネを重ねてしまった。
「これ、これが目的だった」
「たった一枚のこの紙切れのために?」
「紙切れって......何が書いてあるの」
気になっていた内容を読み上げてもらうとキュロに問うが、全然聞いてもらえず。紙も軽く読み流してポイっと床に放り投げられた。
キュロにとって重要じゃないのか興味のない内容だったのか。今の俺では判断のしようがない。
どうして魔族と人間は共通の文字を使用してないのだろうか。いや文化が違うし言語が同じなだけありがたいと思うべきなんだけども。
「キュロ、気になるから教えてくれないか」
「いいけど。本当にそんな大した内容じゃないよ」
「いいから」
酷く深い溜息の後、蔦が先程放り投げられた紙を広いあげてキュロの近くまで運んでいく。
「俺の仕事、みっ......二つあるの。一つはこの資料室の管理。もう一つは庭園の大まかな管理。この紙切れにはね、庭園についての魔王様からの要望がたくさん。それはもうたくさん書かれてる」
キュロからすれば死ぬほど読んだらしい要望の数々。
なるほど、それなら読んだ瞬間に捨てても仕方がない、のかな。
「例えば、城壁の装飾を見飽きたから変えてほしいとか。庭園の花全部一新してほしい、種類はなんでもいい、とか。あ、でもこれはだいぶ前のお願いだけど」
「最近のは?」
「最近のは......あー」
「?」
「ニオ様からも言ってくんない?たった一種類の花だけで東西南北の庭園全部埋め尽くしてほしいとかどうかしてるって」
「一種類の花?」
「人間がオルレアって呼んでる花」
自分の顔が熱くなったのが分かった。
キュロが死ぬほどウザがっているその注文の元凶は俺だ。
その花を好きだと知っているアルが、何度も何度も注文を繰り返しているんだろう。
「ごめん」
「なんでニオ様が謝るの」
「それ、多分俺のせいだから」
キュロの顔が段々渋くなっていく。
本当に嫌になる程お願いされてるんだろうな。申し訳ない気持ちが募っていくけれど、どうにか出来るほどの力を俺は持ってない。
何か言っても、でもこの花好きだろう?で押し通される気がする。変なところでアルの確固たる意思が働きそうだ。
「ねぇ、ニオ様。今から文字起こすから、それ魔王様の前でそのまま音読して」
「えっ。でも俺魔族の文字読めないけど」
「ちゃんと人間の文字にするから。いい?」
「わ、分かった」
10
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ショタ18禁読み切り詰め合わせ
ichiko
BL
今まで書きためたショタ物の小説です。フェチ全開で欲望のままに書いているので閲覧注意です。スポーツユニフォーム姿の少年にあんな事やこんな事をみたいな内容が多いです。
転生したので異世界でショタコンライフを堪能します
のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。
けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。
どうやら俺は転生してしまったようだ。
元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!!
ショタ最高!ショタは世界を救う!!!
ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!
少年はメスにもなる
碧碧
BL
「少年はオスになる」の続編です。単体でも読めます。
監禁された少年が前立腺と尿道の開発をされるお話。
フラット貞操帯、媚薬、焦らし(ほんのり)、小スカ、大スカ(ほんのり)、腸内洗浄、メスイキ、エネマグラ、連続絶頂、前立腺責め、尿道責め、亀頭責め(ほんのり)、プロステートチップ、攻めに媚薬、攻めの射精我慢、攻め喘ぎ(押し殺し系)、見られながらの性行為などがあります。
挿入ありです。本編では調教師×ショタ、調教師×ショタ×モブショタの3Pもありますので閲覧ご注意ください。
番外編では全て小スカでの絶頂があり、とにかくラブラブ甘々恋人セックスしています。堅物おじさん調教師がすっかり溺愛攻めとなりました。
早熟→恋人セックス。受けに煽られる攻め。受けが飲精します。
成熟→調教プレイ。乳首責めや射精我慢、オナホ腰振り、オナホに入れながらセックスなど。攻めが受けの前で自慰、飲精、攻めフェラもあります。
完熟(前編)→3年後と10年後の話。乳首責め、甘イキ、攻めが受けの中で潮吹き、攻めに手コキ、飲精など。
完熟(後編)→ほぼエロのみ。15年後の話。調教プレイ。乳首責め、射精我慢、甘イキ、脳イキ、キスイキ、亀頭責め、ローションガーゼ、オナホ、オナホコキ、潮吹き、睡姦、連続絶頂、メスイキなど。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ショタコンおじさんが異世界で少年達と冒険します
フェア
BL
少年パーティーの危機をたまたま救ったタカヒロは、真面目な没落騎士、ツンデレエルフ、ワンコ獣人という3人の少年達と一緒に冒険することに。ショタに命の恩人として大事にされるおじさんのハーレムストーリーです。
第1章 全12話で完結、第2章 連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる