ショタ魔王と第三皇子

梅雨

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魔王城の生活

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「起きて着替えてだけでどうしてこんなに時間がかかるんですかねぇ。まぁ魔王様をしっかり起こせたのは素晴らしいですが」

結局着替えを最後まで手伝い、アルに案内されて食事室に着いた時には一時間が経過していた。
ランハートは変わらず笑顔だったが、口調は少し刺々しかったから機嫌悪かったんだろう。すぐに引っ込んで別の執事が出てきた。

「おはようございまぁす。魔王様、奥方様」

凄く厳つい人が出てきた。
波打つ線に剃られたバリアードスタイルの髪は赤く染められていて、箇所箇所に黒髪が覗く。肩幅が広いせいか大きなシルエット、上だけでこの威圧感だ。
目線を下げたらツルツルの鱗、蛇腹が飛び込んでくる。
ラミア、いやナーガだろうか。上半身が人間で下半身が蛇の魔族。本では呼んだことあったけど、見るのは初めてだ。

「この人がフォルカさん?」
「そうだよ。フォルカはすっごいごはん作りの天才なの」
「あんら魔王様嬉しいこと言ってくれるじゃなぁい‼︎」

両手に持った料理をテーブルに置くと、凄い勢いで詰め寄られる。線のような瞳孔はこちらを品定めしているかのように鋭い。が、すぐに突き刺さるような視線は和らぐ。

「あ、と」
「奥方様、はじめまして。アタシはフォルカ、魔王城の料理長兼ママ、やってまぁす‼︎」
「......こちらこそはじめまして。ニオでいいよ、フォルカ」
「初夜記念初同衾記念に朝ごはん少し豪華にしちゃった。いっぱい食べてね」
「しょ⁉︎」

品のない単語に過剰に反応してしまう。
アルの前でなんてこというんだ。

「ニオ?はやく食べよう?」

動揺しているのは俺だけのようで、アルは特に気にした様子もなく自分の席まで行って座った。
そうか、初夜も同衾も意味が分かってないんだ。

「ふふっ。じゃ、アタシは裏にいるから、何かあったらそこのベル鳴らしてちょーだい?」

揶揄われたと気付いたとき、フォルカはもう裏に戻ってしまったようだった。アルが急かしてくるため、自分も一番近い椅子に座る。

「いただきます」
「いただきます」

野菜がたっぷり入っているミネストローネも、外側カリッと中は柔らかく噛みごたえのあるバタールも、フワフワなスクランブルエッグも、初めて食べた。頬が溶けてしまいそうだ。

「ニオ、美味しい?これもどうぞ」

自分の皿にのっていた肉をいくつか俺の皿に移す。アルの皿には俺の皿より多く食材が積まれていた。特に問題なくヒョイパクと食べているし、嫌いというわけではなさそうだ。行儀は悪いけれど厚意はありがたく受け取っておこう。

「美味い。すごいな。フォルカは」

城でも最低限の生活は出来ていた。食事も用意されはする。
まぁ使用人達から良く見られていないから、カビ始めたパンとか異物混入スープとか出されたりはしたけれど。
ここまでちゃんとした食事はしばらくしていない。

「昨日フォルカがニオに会いにきたんだ」
「え?」
「アレルギー?がないかどうかだけ調べたいからって言って、注射してた。気付かなかっただろ?」

右腕、左腕と袖を捲ると、確かに注射の後らしき処置がされてある。知らぬ間に会ってたのか。魔族は全員行動力が凄いな。

「ごはんにかける想いが強いんだ。フォルカは。だからニオも一緒に美味しかったって言おう」
「あぁ。フォルカにはこれからもお世話になるし」

スクランブルエッグに敷かれていた最後のベーコンを齧る。口の中に広がった塩と肉の味を噛み締めつつ、ミニトマト片手に苦しむアルを眺めていた。










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