ショタ魔王と第三皇子

梅雨

文字の大きさ
上 下
10 / 48
魔王城の生活

3

しおりを挟む
「起きて着替えてだけでどうしてこんなに時間がかかるんですかねぇ。まぁ魔王様をしっかり起こせたのは素晴らしいですが」

結局着替えを最後まで手伝い、アルに案内されて食事室に着いた時には一時間が経過していた。
ランハートは変わらず笑顔だったが、口調は少し刺々しかったから機嫌悪かったんだろう。すぐに引っ込んで別の執事が出てきた。

「おはようございまぁす。魔王様、奥方様」

凄く厳つい人が出てきた。
波打つ線に剃られたバリアードスタイルの髪は赤く染められていて、箇所箇所に黒髪が覗く。肩幅が広いせいか大きなシルエット、上だけでこの威圧感だ。
目線を下げたらツルツルの鱗、蛇腹が飛び込んでくる。
ラミア、いやナーガだろうか。上半身が人間で下半身が蛇の魔族。本では呼んだことあったけど、見るのは初めてだ。

「この人がフォルカさん?」
「そうだよ。フォルカはすっごいごはん作りの天才なの」
「あんら魔王様嬉しいこと言ってくれるじゃなぁい‼︎」

両手に持った料理をテーブルに置くと、凄い勢いで詰め寄られる。線のような瞳孔はこちらを品定めしているかのように鋭い。が、すぐに突き刺さるような視線は和らぐ。

「あ、と」
「奥方様、はじめまして。アタシはフォルカ、魔王城の料理長兼ママ、やってまぁす‼︎」
「......こちらこそはじめまして。ニオでいいよ、フォルカ」
「初夜記念初同衾記念に朝ごはん少し豪華にしちゃった。いっぱい食べてね」
「しょ⁉︎」

品のない単語に過剰に反応してしまう。
アルの前でなんてこというんだ。

「ニオ?はやく食べよう?」

動揺しているのは俺だけのようで、アルは特に気にした様子もなく自分の席まで行って座った。
そうか、初夜も同衾も意味が分かってないんだ。

「ふふっ。じゃ、アタシは裏にいるから、何かあったらそこのベル鳴らしてちょーだい?」

揶揄われたと気付いたとき、フォルカはもう裏に戻ってしまったようだった。アルが急かしてくるため、自分も一番近い椅子に座る。

「いただきます」
「いただきます」

野菜がたっぷり入っているミネストローネも、外側カリッと中は柔らかく噛みごたえのあるバタールも、フワフワなスクランブルエッグも、初めて食べた。頬が溶けてしまいそうだ。

「ニオ、美味しい?これもどうぞ」

自分の皿にのっていた肉をいくつか俺の皿に移す。アルの皿には俺の皿より多く食材が積まれていた。特に問題なくヒョイパクと食べているし、嫌いというわけではなさそうだ。行儀は悪いけれど厚意はありがたく受け取っておこう。

「美味い。すごいな。フォルカは」

城でも最低限の生活は出来ていた。食事も用意されはする。
まぁ使用人達から良く見られていないから、カビ始めたパンとか異物混入スープとか出されたりはしたけれど。
ここまでちゃんとした食事はしばらくしていない。

「昨日フォルカがニオに会いにきたんだ」
「え?」
「アレルギー?がないかどうかだけ調べたいからって言って、注射してた。気付かなかっただろ?」

右腕、左腕と袖を捲ると、確かに注射の後らしき処置がされてある。知らぬ間に会ってたのか。魔族は全員行動力が凄いな。

「ごはんにかける想いが強いんだ。フォルカは。だからニオも一緒に美味しかったって言おう」
「あぁ。フォルカにはこれからもお世話になるし」

スクランブルエッグに敷かれていた最後のベーコンを齧る。口の中に広がった塩と肉の味を噛み締めつつ、ミニトマト片手に苦しむアルを眺めていた。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

R18 オトコノコ達

名も知らぬ素人
BL
男子達の話

サッカー少年の性教育

てつじん
BL
小学6年生のサッカー少年、蹴翔(シュート)くん。 コーチに体を悪戯されて、それを聞いたお父さんは身をもってシュートくんに性教育をしてあげちゃいます。

転生したので異世界でショタコンライフを堪能します

のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。 けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。 どうやら俺は転生してしまったようだ。 元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!! ショタ最高!ショタは世界を救う!!! ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

少年はメスにもなる

碧碧
BL
「少年はオスになる」の続編です。単体でも読めます。 監禁された少年が前立腺と尿道の開発をされるお話。 フラット貞操帯、媚薬、焦らし(ほんのり)、小スカ、大スカ(ほんのり)、腸内洗浄、メスイキ、エネマグラ、連続絶頂、前立腺責め、尿道責め、亀頭責め(ほんのり)、プロステートチップ、攻めに媚薬、攻めの射精我慢、攻め喘ぎ(押し殺し系)、見られながらの性行為などがあります。 挿入ありです。本編では調教師×ショタ、調教師×ショタ×モブショタの3Pもありますので閲覧ご注意ください。 番外編では全て小スカでの絶頂があり、とにかくラブラブ甘々恋人セックスしています。堅物おじさん調教師がすっかり溺愛攻めとなりました。 早熟→恋人セックス。受けに煽られる攻め。受けが飲精します。 成熟→調教プレイ。乳首責めや射精我慢、オナホ腰振り、オナホに入れながらセックスなど。攻めが受けの前で自慰、飲精、攻めフェラもあります。 完熟(前編)→3年後と10年後の話。乳首責め、甘イキ、攻めが受けの中で潮吹き、攻めに手コキ、飲精など。 完熟(後編)→ほぼエロのみ。15年後の話。調教プレイ。乳首責め、射精我慢、甘イキ、脳イキ、キスイキ、亀頭責め、ローションガーゼ、オナホ、オナホコキ、潮吹き、睡姦、連続絶頂、メスイキなど。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...