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ショタな魔王様
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「俺、は」
玉座の間で最も簡単に城を落としたアルが、本気で世界征服しようと考えればアスラトリスなんて一日経つより早く滅ぼせてしまうのは分かる。
「俺は」
そんなことしないと言ったアルの言葉に嘘偽りを感じない。
魔族がいままで人間に何をしてきたのか、忘れたわけじゃないんだ。
殺戮の光景は本に記され、現在進行形でも行われている。
アスラトリスも被害は受けているし、その根源といってもいい魔王の求婚なんて。
「......」
国を裏切る行為になるんだろうか。
でも俺がアルに妻になったら国にも人間にも手を出さないでくれって言えばいいんじゃないか。
国は俺がいなくても動いて、誰もが俺を忘れても何も変わらない。
どうせ姫と勘違いされて誘拐されたであろう俺は殺されたことになってるはずだ。
じゃあ、何も問題ないだろう。
あの城じゃないこの場所は、息がしやすい。
「たまに、弟達や国の様子って見せてもらえるか」
「ニオが望むなら。認識阻害の魔法で直接行くこともできるよ」
「国に手を出さないって、約束してくれるか」
「それは当たり前。国バーンはランハートにやった方がいいって言われたからやったの」
「......ずっと笑ってるくせにひどい奴だなアイツ」
笑顔で提案している様子が目に浮かぶ。
その提案に気が乗らなかったんだろう、口をモゴモゴしたアルの顔に気が緩んだ。
あぁいけない。返す言葉は決まっているのに、空気が足りない。
今思い出したように息を吸って、ゆっくり吐いた。
「アル、俺の答えは」
風が吹き、花弁は空に巻き上がる。一緒に攫われそうだった俺の言葉はちゃんとアルに届いたようだ。
「よろこんで」
大きく見開かれた瞳に俺が映った、次の瞬間にアルは急に立ち上がって飛び込んできた。アルの身体を支えようとしたが、勢い任せの突進に近い抱擁を上手く受け止められるはずもなく、二人で花畑に倒れ込んだ。
身体で潰してしまった花が弾けるように散って、空に浮かぶ。
遠く遠く消えて見えなくなっても、またこの庭園のどこかに咲くのだろう。俺は今なくなってしまった花が目に入っても気付かないし、気付けない。でも、どこかで咲いているんだ。
ちゃんと、生きているんだ。
「なぁ、アル」
俺の頭を腹に抱えたまま離さないアルを抱き返す。
優しく、彼から受けた想いを返すように。
「なぁに?」
「これから、よろしく」
「うん。よろしく、僕のニオ」
玉座の間で最も簡単に城を落としたアルが、本気で世界征服しようと考えればアスラトリスなんて一日経つより早く滅ぼせてしまうのは分かる。
「俺は」
そんなことしないと言ったアルの言葉に嘘偽りを感じない。
魔族がいままで人間に何をしてきたのか、忘れたわけじゃないんだ。
殺戮の光景は本に記され、現在進行形でも行われている。
アスラトリスも被害は受けているし、その根源といってもいい魔王の求婚なんて。
「......」
国を裏切る行為になるんだろうか。
でも俺がアルに妻になったら国にも人間にも手を出さないでくれって言えばいいんじゃないか。
国は俺がいなくても動いて、誰もが俺を忘れても何も変わらない。
どうせ姫と勘違いされて誘拐されたであろう俺は殺されたことになってるはずだ。
じゃあ、何も問題ないだろう。
あの城じゃないこの場所は、息がしやすい。
「たまに、弟達や国の様子って見せてもらえるか」
「ニオが望むなら。認識阻害の魔法で直接行くこともできるよ」
「国に手を出さないって、約束してくれるか」
「それは当たり前。国バーンはランハートにやった方がいいって言われたからやったの」
「......ずっと笑ってるくせにひどい奴だなアイツ」
笑顔で提案している様子が目に浮かぶ。
その提案に気が乗らなかったんだろう、口をモゴモゴしたアルの顔に気が緩んだ。
あぁいけない。返す言葉は決まっているのに、空気が足りない。
今思い出したように息を吸って、ゆっくり吐いた。
「アル、俺の答えは」
風が吹き、花弁は空に巻き上がる。一緒に攫われそうだった俺の言葉はちゃんとアルに届いたようだ。
「よろこんで」
大きく見開かれた瞳に俺が映った、次の瞬間にアルは急に立ち上がって飛び込んできた。アルの身体を支えようとしたが、勢い任せの突進に近い抱擁を上手く受け止められるはずもなく、二人で花畑に倒れ込んだ。
身体で潰してしまった花が弾けるように散って、空に浮かぶ。
遠く遠く消えて見えなくなっても、またこの庭園のどこかに咲くのだろう。俺は今なくなってしまった花が目に入っても気付かないし、気付けない。でも、どこかで咲いているんだ。
ちゃんと、生きているんだ。
「なぁ、アル」
俺の頭を腹に抱えたまま離さないアルを抱き返す。
優しく、彼から受けた想いを返すように。
「なぁに?」
「これから、よろしく」
「うん。よろしく、僕のニオ」
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