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1年生、夏
練習、練習
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GWに入ったけれど、相変わらず素振りの練習が多い。飽きるけど、素振りは基礎だからしっかりやらなければならない。今日も1000回ずつだ。
「おい吉田!振り切りはおでこの位置だって言っただろ!言われたことくらいやれ!ペナルティで階段10往復!」
「はい!」
ことある事に階段10往復が課せられる。正直、出来てないことがあるのに階段10往復で練習を抜けちゃ、余計出来ないから効率が悪いと思うんだけど、先生がこう言うなら従うしかない。
ただ、先生がおでこって言ったのはちょっとかわいかったな。あんな強面の先生がおでこって。そんなことを考えながら階段を走った。
ぶっちゃけ、階段走ってる方が気が楽だ。私は先生に注意されがちだし、そもそも運動神経がよくないからあまり上手くいかない。そんなことに気を払うより、階段を走る方がマシだ。
昔の私だったらここで心が折れているところだろうけど、メンタルはバレーの監督で鍛えられたから大丈夫。昔も今も、怒られるのは変わってないんだよなぁ。真面目にやってるつもりなんだけど。
今のところ、1年では私が1番ペナルティ食らってると思う。
走り終わったら練習に戻る。1000回はノルマだけど、厳密に何回やったかまでは聞かれない。大体みんな終わっただろうって頃に先生がやってきて、次の指示が出る。
今日は体育館1階が空いていたから、壁打ちの練習をした。バレーの壁打ちとボールの軌道は同じ。感覚でいうと、テニスに近いのかな。テニスやったことないけど。卓球は床にボールついちゃダメだし。
先輩曰く、素振りの形の練習になるらしい。この練習では、私は何も言われなかった。進歩したかな。他の人は注意はされても、走りに行けと言われた人はいなかった。
*
今日はGW最終日だ。今日もアップから始まり、素振り、球拾いと順に練習が進んでいく。だいぶ慣れてきた。
休憩の時間は8分程度。お茶を飲んだり、トイレに行ったりする時間が大抵1時間~2時間に1回ある。休憩の時間は学年ごとに交代だから、基本的には体育館の外に降りていって、時間になったら上に戻る。
休憩がそろそろ終わる頃、いつものことだけど、先生がなにやら怒っているらしい。明らかに8分以上経ったけど、先生の説教は止まらない。私たち1年生は、体育館内の階段に座って待っていた。上をチラチラ見ても、休憩を交代する気配はない。先輩たちはまだ休憩していない。
小声で戸倉や海未ちゃんたちと話しながら、時間が過ぎるのを待つ。1年が関係ないなら帰らせてくれたらいいのに。
それから1時間くらい経って、先輩たちが休憩に入った。
「1年が連帯責任で怒られないのも、多分これが最後だよ……」
ボソッと草野先輩がそう言ったのを、私は聞き逃さなかった。
*
素振りの練習が続き、GWが開けてから上級生の練習に混ぜてもらえるようになった。
今日は、回転について教えてくれるらしい。
「まず、卓球には大きくわけて6種類の回転がある。1つ目は自分から見て手前から奥に回るのが『上回転』。ラケットに当たったら上に飛ぶぞ。
2つ目は、奥から手前に回る『下回転』だ。これはラケットに当たったら下に落ちる。2、3年生にとっては当たり前だろうが、1年に教えるにあたって復習という感じで聞け」
顧問の森田先生が説明をする。技術的な指導は基本的に森田先生がやっている。
「上回転に対しては、1年にこの間教えた素振りが有効だ。逆回転にして返すのが返しやすい。反対に、下回転に対しては『ツッツキ』で取ると取りやすい。おい、草野、手本としてやってみろ」
この間やった素振りと、ツッツキという技を見せられる。ツッツキは、ピン球の下側を手前から奥に擦るような形だ。なんだか難しそうだ。
「3つ目は『右回転』。上から見て時計回りに回転している。右側に壁を作って取ると取りやすい。
4つ目は『左回転』。上から見て反時計回りに回転している。これは左側に壁を作ると取りやすい。
他に手前から見て時計回りの『右スクリュー回転』、反時計回りの『左スクリュー回転』もあるが、これは中学レベルの大会ではあまり使われないので、興味がある者だけ聞きに来い」
色んな回転の話をされて頭がショートしそうだ。
「基本的には上・下・左・右の回転を組み合わせて使うことが多い。2、3年は1年にサーブ出してやれ。じゃあ、1台目に草野…」
先生が各台に6~7人ずつ程度振り分けていく。私は西野先輩と同じ台で、先輩以外は全員男子だ。
交代しながら練習する。なかなか上手くいかず、変な方向にボールが飛んでいく。難しい。でも、周りも似たような感じだ。
あ、今の一球、めっちゃいい感じに返った!ちゃんと先輩のいるところに返ったのは初めてだ。
「そうそう、そんな感じ~」
先輩がグッドサインをしながらニコッと笑う。私が男子だったらイチコロだな、なんて思う。
「おい、土屋!ちゃんと右回転を出してやれ。それは上回転だろ!2年になったんだからそのくらいちゃんとやれ!」
「すんません…」
先生が怒っている。土屋先輩は西野先輩の隣にいるから、先生はこっちの方を見ているってことだ。結構離れてるところに先生はいるのに、よく見てる。
「清水、ラケットを上に向けるな。壁を作れ、壁を」
「はい」
清水は私の隣で打ってる男子だ。先輩を怒る時より、1年に注意する方が先生はまだ優しい。今日は、先生は私には何も言わずに通り過ぎていった。
卓球は難しい。
「おい吉田!振り切りはおでこの位置だって言っただろ!言われたことくらいやれ!ペナルティで階段10往復!」
「はい!」
ことある事に階段10往復が課せられる。正直、出来てないことがあるのに階段10往復で練習を抜けちゃ、余計出来ないから効率が悪いと思うんだけど、先生がこう言うなら従うしかない。
ただ、先生がおでこって言ったのはちょっとかわいかったな。あんな強面の先生がおでこって。そんなことを考えながら階段を走った。
ぶっちゃけ、階段走ってる方が気が楽だ。私は先生に注意されがちだし、そもそも運動神経がよくないからあまり上手くいかない。そんなことに気を払うより、階段を走る方がマシだ。
昔の私だったらここで心が折れているところだろうけど、メンタルはバレーの監督で鍛えられたから大丈夫。昔も今も、怒られるのは変わってないんだよなぁ。真面目にやってるつもりなんだけど。
今のところ、1年では私が1番ペナルティ食らってると思う。
走り終わったら練習に戻る。1000回はノルマだけど、厳密に何回やったかまでは聞かれない。大体みんな終わっただろうって頃に先生がやってきて、次の指示が出る。
今日は体育館1階が空いていたから、壁打ちの練習をした。バレーの壁打ちとボールの軌道は同じ。感覚でいうと、テニスに近いのかな。テニスやったことないけど。卓球は床にボールついちゃダメだし。
先輩曰く、素振りの形の練習になるらしい。この練習では、私は何も言われなかった。進歩したかな。他の人は注意はされても、走りに行けと言われた人はいなかった。
*
今日はGW最終日だ。今日もアップから始まり、素振り、球拾いと順に練習が進んでいく。だいぶ慣れてきた。
休憩の時間は8分程度。お茶を飲んだり、トイレに行ったりする時間が大抵1時間~2時間に1回ある。休憩の時間は学年ごとに交代だから、基本的には体育館の外に降りていって、時間になったら上に戻る。
休憩がそろそろ終わる頃、いつものことだけど、先生がなにやら怒っているらしい。明らかに8分以上経ったけど、先生の説教は止まらない。私たち1年生は、体育館内の階段に座って待っていた。上をチラチラ見ても、休憩を交代する気配はない。先輩たちはまだ休憩していない。
小声で戸倉や海未ちゃんたちと話しながら、時間が過ぎるのを待つ。1年が関係ないなら帰らせてくれたらいいのに。
それから1時間くらい経って、先輩たちが休憩に入った。
「1年が連帯責任で怒られないのも、多分これが最後だよ……」
ボソッと草野先輩がそう言ったのを、私は聞き逃さなかった。
*
素振りの練習が続き、GWが開けてから上級生の練習に混ぜてもらえるようになった。
今日は、回転について教えてくれるらしい。
「まず、卓球には大きくわけて6種類の回転がある。1つ目は自分から見て手前から奥に回るのが『上回転』。ラケットに当たったら上に飛ぶぞ。
2つ目は、奥から手前に回る『下回転』だ。これはラケットに当たったら下に落ちる。2、3年生にとっては当たり前だろうが、1年に教えるにあたって復習という感じで聞け」
顧問の森田先生が説明をする。技術的な指導は基本的に森田先生がやっている。
「上回転に対しては、1年にこの間教えた素振りが有効だ。逆回転にして返すのが返しやすい。反対に、下回転に対しては『ツッツキ』で取ると取りやすい。おい、草野、手本としてやってみろ」
この間やった素振りと、ツッツキという技を見せられる。ツッツキは、ピン球の下側を手前から奥に擦るような形だ。なんだか難しそうだ。
「3つ目は『右回転』。上から見て時計回りに回転している。右側に壁を作って取ると取りやすい。
4つ目は『左回転』。上から見て反時計回りに回転している。これは左側に壁を作ると取りやすい。
他に手前から見て時計回りの『右スクリュー回転』、反時計回りの『左スクリュー回転』もあるが、これは中学レベルの大会ではあまり使われないので、興味がある者だけ聞きに来い」
色んな回転の話をされて頭がショートしそうだ。
「基本的には上・下・左・右の回転を組み合わせて使うことが多い。2、3年は1年にサーブ出してやれ。じゃあ、1台目に草野…」
先生が各台に6~7人ずつ程度振り分けていく。私は西野先輩と同じ台で、先輩以外は全員男子だ。
交代しながら練習する。なかなか上手くいかず、変な方向にボールが飛んでいく。難しい。でも、周りも似たような感じだ。
あ、今の一球、めっちゃいい感じに返った!ちゃんと先輩のいるところに返ったのは初めてだ。
「そうそう、そんな感じ~」
先輩がグッドサインをしながらニコッと笑う。私が男子だったらイチコロだな、なんて思う。
「おい、土屋!ちゃんと右回転を出してやれ。それは上回転だろ!2年になったんだからそのくらいちゃんとやれ!」
「すんません…」
先生が怒っている。土屋先輩は西野先輩の隣にいるから、先生はこっちの方を見ているってことだ。結構離れてるところに先生はいるのに、よく見てる。
「清水、ラケットを上に向けるな。壁を作れ、壁を」
「はい」
清水は私の隣で打ってる男子だ。先輩を怒る時より、1年に注意する方が先生はまだ優しい。今日は、先生は私には何も言わずに通り過ぎていった。
卓球は難しい。
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