20 / 31
20
しおりを挟む「フィーリィー様~!! 次は何する~?」
カイに呼ばれて立ち上がり駆け寄ると子供たちに囲まれた。
「次はね」
何しようかと考えていたら身体に影がかかった。
「あれ、君は誰?」
低い声、大きな身体、こちらに伸びてくる手。真っ暗い闇のような恐怖が全身を包み込む。
「やぁぁああっっ――――!!! こないで!! 止めて!!」
両手で頭を抱えて地面に丸まる。痛い止めて怖い苦しい。もう許して、ごめんなさい。ガタガタ震えながら言葉を繰り返す。
「フィーリィー様!?」
周りの子供たちが守るようにフィーリィーを取り囲んだ。
「フィ!!」
弟の悲鳴に慌てて駆け寄るアレクに、カイとカリンが立ちはだかる。
「近付くな!」
「大人に殴られて捨てられた子と同じ反応してる。近付かないで!」
守るように囲んでいる他の子供も動こうとしない。騒ぎをきいた院長先生が駆け付けるとカリンが涙を溢しそうになりながら訴える。
「院長先生!フィーリィー様を連れて行かないで!ここで守って!」
状況が分からない院長はアレクとカリンに目線をさ迷わせる。
アレクがそんな言葉を無視するように囲みに近付いた。
全身が痛い。どうして笑ってるの。怖いよ。息が出来ない。誰か助けて。
「フィーリィー」
フィーリィー。誰の名前。
「フィ、怖くないよ。僕たちが守る。ずっと一緒」
この声は誰。
「愛してる。僕たちの大切な弟」
弟。そうだ。¨フィーリィー¨には大好きな兄が二人いる。
「クー……にぃ」
手を伸ばすとギュッと握ってくれた。生まれた時からずっと守ってくれている暖かいぬくもりに息をつく。
「クー……にぃ、……にぃ」
「ここにいる。大丈夫」
全身を包むように抱き締められ、意識がだんだんと落ち着いていく。瞑っていた目を開けると、クーにぃの鮮やかな桃髪と綺麗な青い瞳が視界に映る。
頭を優しく撫でられ、苦しみが薄らいでいく。潤んでぼやける瞳で周りを見るとカイやカリンや子供たちが心配そうにこちらを見守っていた。
「フィーリィー様……」
カリンに名を呼ばれた。
「ごめんなさい。心配かけて」
身体に力が入らない。クーにぃにしがみつく事ができない。
「それは大丈夫です。でも――」
「カリン、フィーリィーは僕と家に帰る。君たちが何を言っても」
ギュッと抱き締められ、抱き上げられた。
11
お気に入りに追加
167
あなたにおすすめの小説


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる