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しおりを挟む「逃げれる場所……警備が見回りをしていて問題があれば捕縛したりするけど、今回みたいに虐げられた子供が助けを求められる所は……ないね」
「一度、孤児院を出ると戻って来ると考える子達はほとんどいません。……誰にも助けを求められないと我慢する子達ばかりだと思います」
心臓がギュッと締め付けられる。誰にも助けを求められない気持ちは痛いほど分かる。
「クーにぃ、お願い、避難所、つくって」
兄に涙目で必死にすがりつく。辛くて苦しくて傷付いて、我慢して、死んでしまうなんて僕だけでいい。
クーにぃは優しく頭を撫でてくれた。
「リカルド兄上と父上に相談するよ。警備兵がいる避難所を作って誰でも逃げ込めるようにしようか」
交番みたいな場所をつくってくれるのかと安堵する。保護されて助かる人達はきっといる。
「お願い、にぃ」
「任せて、だから悲しまなくて大丈夫だよ。フィ」
ヨシヨシとされ、嬉しくて尻尾が揺れる。優しい兄たちが大好き。
「本当に、本当にそんな場所が」
院長先生が信じられないと感極まった涙声で震えている。
「大切な弟に嘘はつかないよー。お試し期間もいいよね。子も大人も余裕がもてるよ」
お試し期間や避難所は後日、大人で詳しく話し合って決めるみたい。良かったと安心する。
「お昼までもうちょっとだねー。さっき見れなかった裏庭とか見に行こうかー」
疲れて外の空気が吸いたくなったので頷く。立ち上がると院長先生がドアまで見送ってくれた。
「じゃあまた後で~」
抱っこされたまま、院長先生に小さく手を振ると笑顔で頭を下げられた。
護衛の人はいるけど姿は見えない。兄と二人っきりで気が抜けて全身をくったりさせる。
「用事はほとんどすんだしー、新しく入った二人を確認したら帰ろうか~?」
くったりしている弟を労ってくれるクーにぃに申し訳ない気持ちになる。
「大丈夫なの。頑張る」
きっと多分、まだ確認しなきゃいけない事があると思う。邪魔しちゃダメと意気込む。
芝生の中をサクサク歩いて広い孤児院敷地内を見て回る。自然が多いんだけど違和感がある。
「にぃ、ブランコない?」
遊具が一つもない。これだと駆けっこや木登りしかできない。
「ブランコって何~?」
首を傾げる兄にギョッと驚く。そう言えば子供がいるのに我が家にもブランコとかなかったかも。
スライム円盤はあるのに。
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