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しおりを挟む「朝から晩まで働かされ、食事は1日一食、病気で動けないと殴られたと、その子は院まで逃げてこれましたが、幼い子達だと無理な場合もあります。でも本当に子供を望んで慈しんで育てて下さる方もいるのです。家族ができる機会を奪う事もしたくありませんが、子が傷付くような事になるかもしれない。私には判断が出来ない状態なのです」
ただで働かせて食事も満足に与えず、殴ることもする。前世の自分を思い出して息が詰まった。
目の前が真っ暗になる。
「フィーリィー」
虚ろになりかけた時、クーにぃの優しい声がした。目線をあげるとギュッと抱き締められた。暖かい。
「大好きだよ。フィ」
僕の異変に気付いた兄が尻尾をヨシヨシと撫でてくれる。止まっていた息を吐いて目を瞑って兄にすがりつく。
僕には兄たちがいるから大丈夫。
「ありがとう、クーにぃ」
気持ちが落ち着いて目を開けて兄に微笑むと、クーにぃも笑顔を返してくれた。
院長先生は困り顔で無言で様子を窺っていた。突然の事に驚かせてしまった。
「あの……ごめんなさい」
「いいえ、具合が悪くなりましたか?」
心配気にきかれ、首を横に振った。僕は大丈夫。
「そんな奴らは一握りだよね。その一握りのために良縁を断るのも子供たちに悪いね」
血が繋がらなくても大切に思いあって家族になれるかもしれない。それを判断するにはどうしたらいいか。
「にぃ……お試し期間ないの?」
小さな声できいてみる。
「お試し?」
コクリと頷く。
「養子に望む人の家にまず数日泊まって、上手くやっていけそうなら1ヶ月とか泊まるの伸ばすの。納得して養子に行っても、養子親と養子の子にそれぞれ話を聞く調査を1ヶ月や3ヶ月に一回はするの」
クーにぃが驚いている。
「そのお試しがあるなら、いきなりの養子より子供たちに気持ちの余裕ができるね」
「調査……養子にいけば院との関係は切れます。養子にいった後、どうなっているか分かりません。調査があると知れれば使用人目当ての養子はいなくなるかもしれません」
院長先生も同意してくれた。
「にぃ、子供や大人でも逃げ込める場所……ない?」
シェルターみたいな場所。前世の僕の親は外面が良かった。服の下が傷だらけで顔が傷ついても躾がいきすぎてしまったと反省の色を見せて騙していた。
逃げれる場所があると知っていれば、そこに行ったと思う。
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