美醜逆転獣世界

ノラ

文字の大きさ
上 下
12 / 31

12

しおりを挟む



「眠ったね」


 フィが眠ると寝室からソッと出た。


 足音を抑えて、ソファーに座り、今日の視察の報告を仕事口調でアレクが話す。


「今日は農場と街を視察して回りました。天候も問題なく、無事に収穫できたそうです。害獣の被害もなく、今回は集団の盗人もいなかったと」


「そう、街の裏通りは?」


「はい、ガラの悪い密売人を数人、捕らえました。後は無許可の商売女性を保護、然るべく処罰と事情聴取の後に必要なら職業斡旋をします」


 リカルドが頷くとため息をもらす。


「すまない。嫌な仕事を任せて」


「いいえ、兄上が気にして下さる程、嫌だとは思っていません。馬鹿の罵りにもなれました。それに――」


 犯罪者を捕らえると必ず容姿の罵詈雑言を吐かれる。昔はムカついて殴り飛ばして気絶させていたけど、今はそんな事はしない。


「フィがいるので、感情の揺れも落ち着いてます」


 前なら腹立つ態度も言葉も、フィーリィーが生まれてから受け流せるようになった。


「そうだね。フィは私達の心を癒してくれる。でも私達はフィの心をまだ癒せていない」


 大人に過剰に怯える弟。原因が全く分からないまま五歳になった。

 

「私も報告がある」


 そう言いリカルドは、アレクにスケッチブックを渡した。中を開き、ページを確認する。絵がいくつか書かれていた。


「これは?」


「フィーリィーが書いた。遊び、フィはゲームと言っていた。どれも全く知らないものばかりで、簡単に作製できそうな楽しそうなものばかりだよ」


 アレクは驚き目を見開き、絵に目線を落とす。しっかりした線に文字が書かれている。


 ゲームは遊びと言う意味で、それぞれゲーム名が決まっているみたいだった。


「フィが考えたのならすごいですね」


「……そう。町長もきいていたから誤魔化す事が出来なかった」


 アレクが首を傾げる。誤魔化す必要があるのだろうか。


「あの見た目だけでも注目される。それでいて、今までにない事を発案する賢さがあると知られてしまった。あの子は護衛を恐がる。一番側にいる私達が守らないといけない」


 リカルドが渋い顔をしていた理由がようやく理解できたアレクも顔を歪ませる。


「家にいてくれれば安全ですが、今回みたいに僕たちについてくるとなると」


「父上に相談して早急に対策をとるよ。明日はアレクと孤児院だね。気を付けて」


「はい」


 必ず守る。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...