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しおりを挟む「フィーリィーは騒いだりしないから邪魔だとは思わないよ。迷惑とも思わない。それに……」
首を傾げて兄を見上げる。
「我儘は私やアレクと一緒がいいって可愛いものだし、フィはもっと甘えてもいい」
その我儘が一番厄介で迷惑だと思う。
「もっと甘えてもいいの?」
「勿論、フィのお願いなら何でも叶えるよ」
「本当? ルーにぃもクーにぃも僕を嫌わない? 離れていかない?」
不安でたまらない。嫌わないで、離れていかないで、側にいて、何度も何度も繰り返す。
「フィを嫌うことは絶対にない。フィから離れることもしない。むしろ――」
ルーにぃが言いよどんだのに首を傾げると苦笑された。
傾げたまま見詰めていたら、顔が近付いてきて額にチュッとされた。
「フィは嫌じゃない?」
額にチュッとされた事かなと思い首を横に振る。
「嫌じゃないの!ルーにぃも!」
お返し!とチュッとしようとしたけど頬にしか届かなかった。しかも唇近くになってしまった。
ヤバかったかなとルーにぃを見ると目を見開いて固まっていた。
「ルーにぃ?」
唇には当たってないけどと不安にプルプルなりながら兄の反応を待った。
「フィ」
名前を呼ばれて抱き締められた。いつもと同じでホッとした。
「アレクにもしてあげたら喜ぶ」
「はい!」
尻尾がパタパタと揺れる。馬車に揺れられ夕陽が沈む前に宿についた。
家以外で初めて泊まる。ルーにぃに抱っこされたまま、部屋に案内された。
自室より少し広い清潔感があるシンプルな室内に入ると降ろされる。
今日初めて、てるてる坊主ローブを脱ぐとヘタレていた獣耳が解放感にピンっとなる。
「アレクはまだ見たい」
普通なら使用人がついてくれるけど、僕がいるから大人はいない。護衛の人は距離を保って半分は隠れてくれている。
兄がてるてるローブをハンガーにかけて壁にかけてくれた。
「ありがとう、ルーにぃ」
笑顔でお礼を言うと抱き上げられて椅子に下ろされた。テーブルに用意されていた紅茶をそそいでくれた。
「アレクが帰るまでゆっくりしよう」
元気に頷き、町長と話したゲームの説明を兄にしながらまったり過ごした。
「ボールか」
「柔らかい素材なの! にぃ達がくれた何か跳ねるあれでもいいの!」
なんか、ぽよんぽよんするスライムみたいな円盤の形の玩具をくれた。よく跳ねる。
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