5 / 31
5
しおりを挟む「ふぇぇ行っちゃヤダァァ」
兄二人に盛大に泣いて我儘を言っている。いやいやと首を振る。
「泣かないで~」
ルーにぃの尻尾にしがみつき、必死に離さないようにしている。クーにぃがヨシヨシと頭を撫でてくれた。
「フィーリィー、今は行かないから落ちついて」
今はと言われて悪化した。
「いや!置いて行かないで、ふぇぇ」
クーにぃの尻尾も必死に胸に抱き込む。いつもなら嬉しいもふもふも今は離してなるものかとしがみつく。
「リカルド兄上」
クーにぃが困ったようにルーにぃに声を掛ける。ヒックヒックと涙をポロポロ落としながら二人を見上げる。
「フィも一緒に行く?」
兄たちは町に視察に行く。父の代わりに2日ほど町長と話し合い、治安や領民の不自由や町の不備などを確認する。
「町にはたくさん人がいるんだよ~。怖くない?」
正直、めっちゃ怖い。町って事は大人がたくさんいる。今、想像しただけで青ざめてプルプルしてしまう。
「アレクは残れたらと思ったけど、町の規模と滞在日数を考えると別行動で視察しなければいけない」
「僕が抱っこするから一緒に町を周る~? それとも兄上と一緒に町長と話す~?」
残る、町に一緒に行ってルーにぃと町長の話し合いに同席、クーにぃに抱っこされて町を見て回る。3択。
「一緒、一緒がいい」
残る選択はない。一人で家にいるのは怖い。また暴れて誰かを傷付けるかもしれない。兄達といれないと不安で我を忘れる。
「なら一緒に行こう」
「三人で出掛けるのは初めてだね」
コクリと頷いた。一週間後、町に向かう。たくさんの人を見ることになるだろうと今から覚悟し頑張ると決意する。
兄達に耳と尻尾を撫でてと甘え、今すでにプルプルしている身体をヨシヨシと慰めて貰っていた。
突然コンコンとドアがノックされ、ビックリして毛が逆立つ。お茶とお菓子を食事ワゴンに乗せた侍女が入ってきた。
「あっ、リズ」
ルーにぃの後ろに隠れ小声で言うとリズがニコッと笑った。前に傷付けてしまったのに笑いかけてくれる。
『私が悪いのです。泣いていても近付いてはいけないと言われていましたのに、私の妹と重なって……申し訳ありません』
触れてこようとした大人の手が怖くて爪を立てて振り払ってしまった。リズの手から血が流れていたのに固まって何も出来なかった。
『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』
離れていたら怖くない。兄達もいる。ぴったりくっついたまま、震え声でリズにたずねた。
「リ……ズ。傷は……痛くない?」
目線を下げて顔も見れず、なのにリズは怒った様子もなく嬉しそうに返事をしてくれた。
「はい、私は丈夫なのが取り柄なので、もう治りました。大丈夫です。フィーリィー様」
リズの尻尾が揺れている。嘘じゃないのにホッとする。
「ごめん……なさい、リズ」
「たくさん謝って貰いましたわ。それに近付いた私も悪いです」
視界にションボリするリズの姿にオロオロしていると、クーにぃが耳を撫でてくれた。
「フィが思い詰めるとリズも悲しいよ~。お互いごめんなさいで仲直り、ねっ?」
チラッとリズを見ると何度も頷かれた。
「仲直り?」
首を傾げてきくとリズの尻尾がパタパタ揺れた。
「はいっ!フィーリィー様」
良かったとへにょと笑うとリズの顔が真っ赤になった。不思議に思って左右の兄を見ると、ルーにぃは頭を撫でクーにぃは分かる分かると頷いていた。
はてなと思いながらリズが用意してくれたお茶とお菓子を美味しく食べた。
「視察楽しみだね~」
忘れていた視察にまたプルプルと震えた。
12
お気に入りに追加
164
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる