短編作品劇場

黒山羊

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アケテハイケナイ

カルテ02

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今回の患者は、オマエザキ・ミツカ






彼女は、元彼氏に暴行を受け、妊娠し、そのことを警察に届けた逆恨みで、元彼氏に顔を切られ一生残る大怪我を負った。元彼氏はすでに自殺しており、彼女も傷が癒えるまで、元彼氏の遺族のお金で入院を続けている。







~病院の個室?~

高級な家具が並ぶホテルのような病室の中、患者と母親、主治医の3人が話をしていた。



ミツカ「先生、顔の傷は整形手術とかでよくなるんですよね。もう子供をあきらめて、顔の手術をしてもらいたいんですけど。」



エンドウ主治医「困ったな・・・。君が産みたいって言ってたから、病院としても手配してて、もうすでに堕ろせないほど大きくなってるんだよ。君にも危険がともなうし。」



ミツカ「そんな説明は受けてません。いま好きな人ができたんで、早く整形して綺麗な顔になって退院したいんです。なんとかお願いします。」



母親「うちの、ミツカちゃんの将来がかかってるんですよ!先生がしっかりしてくれないと、可哀想じゃないですか。無理やり妊娠させられてるんですよ!!!」





エンドウ主治医「うーん・・・。」


主治医は、頭を抱えて悩んでいる。





エンドウ主治医「ミツカさん。私の口からは言えないんですけど、秘密が守れるなら、特別に紹介できますけど・・・。」

そういって、主治医は母親を見る。



母親「なによ!私にも聞く権利はありますからね!!!」



エンドウ主治医「分かりました。では、方法はありません。今回の入院は、病院としても特例で、弁護士同伴の元、同意書をいただいているので、聞いていないとか知らなかったは通用しませんから。」

主治医は、お辞儀をして部屋を出ようとする。


ミツカ「先生、ちょっと待ってよ!ババアが出てけよ!私の将来がかかってんだから!」


母親は、渋々出ていく。主治医とすれ違うときに、きつく睨みつけながら。



エンドウ主治医「・・・では、お話ししましょう。ミツカさんは、この病院の417号室の話をしっていますか?」


ミツカは首を横に振る。





エンドウ主治医「417号室のドクターは、ちょっと変わった人で、病院ができないような治療を引き受けてくれるんですよ。ただ、その病室では、3つのルールがあって。

1つ目は、ドクターの質問に、決して誤魔化さずに正直に答えること。
2つ目は、ドクターの質問以外への返事は厳禁で、決して否定せず肯定のみすること。
3つ目は、アケテハイケナイ病室の中で起きたことは、誰にも話してはならない。もし話してしまうと、話した本人と、その話を聞いた者は、命を奪われてしまう。

まあ、3つのルールさえ守れば、安全は保障されるんですけどね。」






ミツカ「怪談か何かですか?」



エンドウ主治医「まあ、そんなところです。今夜だけ、病室のカギを開けておくので、本当に必要なら行ってみて下さい。中央エレベーターは24時間動いてますから。」



ミツカ「ええ、考えておきます。」




エンドウ主治医「あと、行くんなら一人をおすすめしますよ。3つ目のルールのこともありますから。」















~その日の夜~

消灯時刻を過ぎた、23:00にミツカは、417号室に行ってみることにした。


中央エレベーターを降り、左右に通路が広がる。目の前の案内板には、416号室までしか記載されていない。


ミツカは、だまされたと思いながら、4階を回る。休息ルームには、背広を着た男性がいて不気味な場所だ。








結局、探してみたが、417号室を見つけることはできなかった。


ミツカ「まじ、あのヤブ医者、ババアに言って変えてもらうしかないな。」




ミツカがエレベーターに乗り、上の階に戻ろうとしたとき、

エレベーター内の鏡に映る、417号室を見つける。





ミツカ「あれ?目の前にあったんだ。」



彼女は、エレベーターをおり、417号室の扉を開く。










彼女は、一瞬で部屋の中に引き込まれる。そのまま、後ろの扉が閉まり、あたりは暗闇に包まれる。









部屋の奥から、人の声が聞こえてきた。


若い男の声「オマエザキ ミツカ、16歳、独身、周囲の人間をだまして、片思いの男性に報復を受けた。今回の症状は、さらに人の命を奪い、顔の傷を治したい。そういう欲望に取りつかれている。・・・ようだな。」




ミツカ「は?おまえ誰だよ!」





ドクター「すまない。私はこの部屋のドクターになる。よろしく。では、君の症状を改善させる処方をする前に、いくつか確認したいのだが、


今回、君は片思いの年上の男性に恋人ができて、その男性を自分の物にする為に、援助交際で不特定多数の人間に種付けを依頼し、さらに金品をもらっていた。そこで妊娠した君は、片思いの相手に乱暴を受けたと警察に届け出、恋人と別れるように仕組んだ。もちろん、妊娠が事実なので、警察は君の証言を信じ、男性を逮捕した。


しかし、身に覚えのない罪で逮捕された彼は、罪を認めず、マスコミの興味の的になる。


彼は、その結果、全てを失い、君の犯行と分かると、報復の為に君を殺そうとするが、思いとどまり、傷を負わせるだけで逃げ出す。彼はその後、女性を傷つけたという自責の念から自殺。マスコミはこれを、いいように解釈し報道する。


君と母親は、自殺した遺族に追い打ちをかけるように、最高級の病室で入院生活を補償してもらい・・・」






ミツカ「うるせーんだよ!私は、レイプされて、あの男の子供を妊娠して、顔に怪我まで負ったの!テレビでもインターネットでも、そう言われてるでしょ!それが真実なんだよ!!!」


そういって、部屋を出ようとするが、扉は固く閉ざされ開けることはできない。







彼女が扉を開けようとムキになっているとき、部屋の奥の方がぼんやりと明るくなる。

明るくなった部屋の奥には、椅子に座る髭の男の姿がある。彼がドクターのようだ。



ドクター「この部屋で嘘をついてはいけない。」





ドクターが、右手を軽く振ると、ミツカの体が宙に持ち上がる。


ミツカ「お前!話せよ!警察に話したら、お前も逮捕されるんだぞ!」


ミツカ「ちょっと、何する気よ!や、やめて、やめてよ。おねがいします。どんなことでもしますか、らが、ががああ、あ」




彼女を押さえつける巨大な影は、彼女の口を開き、ペンチのような物で、舌を引き抜く。




ドクター「君は、まだ若い。綺麗な顔と真実の舌を君にプレゼントしよう。」

















~翌日~

彼女が目を覚ますと、そこは自分の病室のようだ。


慌てて、鏡を見る。



顔の傷は消え、跡形もなくなっている。






病室に入ってきた母親は、動揺している。



母親「ミツカちゃん、今日はマスコミの取材なのよ!顔の傷はどうしたの!!」


ミツカ「・・・。」


母親「あの医者が何かしたのね!ミツカちゃん、もうすぐテレビ局の人がくるから、急いで包帯をまいて顔を隠して!お母さんが、うまく説明するから!!!」





~30分後~

ミツカと母親は取材に応じる為に、病院の取材室を貸し切っていた。


母親「・・・そうなんです。うちの子は、心と顔に大きな傷を負わされてしまったの。でもこういった事件で苦しむ多くの女性のために、苦しいけど立ち上がることにしたんです!」


記者「ミツカさん、一言お願いします。」



ミツカ「はい。今回の事件は、全て私が仕組んだことで・・・。あ、あれ?」

記者「どういった意味ですか?」




ミツカ「はい。私はパパ活をしながら、妊娠して、それを彼の子供と偽って・・・。」


母親「き、今日は、体調が悪いから、帰ります。ほら、ミツカちゃん、行きましょう。」


記者「パパ活って、どういう意味ですか、援助交際のことですよね。子供を偽るって何ですか!!?」




ミツカ「うるせーんだよ!うちのババアが金をせびれるから、このまま顔を怪我したことにしろって言ってんだよ!今回の事件は、自殺した男は、ただの顔見知りだよ!」


母親「ミツカちゃん、何言ってんの!!!」





事件の事について嘘が言えなくなってしまい、動揺し暴れるミツカと、それを抑える母親、そのとき、顔の包帯もズレ落ちる。



記者「おい、これ殺人事件とか、保険金詐欺とかじゃないの?」

別の記者「やばいな、おい。・・・奥さん、今回の事件は、あなたが仕組んだんですか!?」

記者「娘に援助交際をさせて、男性の子として認知させる事件ですよね。男性が会社経営しててお金を持ってるって知ってたからの犯行なんでしょ!」


母親「このこは被害者なんです!もう辞めて下さい!」


別の記者「あんたが被害者にしたんだろ!」













その日の夜、4階を徘徊する姿を見られた後、彼女は失踪してしまう。




数日後、彼女の上着に遺書が入った状態で警察署の駐車場で死体が発見される。

公開された防犯カメラの映像を見る限りでは、一人で歩いてきて駐車場で自殺したようだ。



彼女の自殺は不可解な点が多く、死後2日以上経過していたこと。

自殺に使われたと思う鋭利な刃物が見当たらないこと。

傷口からは、一切の出血がなかったことなどが挙げられている。



これを警察の隠蔽という声も世論から上がり、証明するためにも防犯カメラの映像が公開されたようだ。






彼女の母親は、多額の賠償金の請求があり、逃げ出すも警察に捕まる。

これから、彼女の母親の裁判が人の手によって始まる。





~END


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