短編作品劇場

黒山羊

文字の大きさ
上 下
6 / 34
眠れる森の美少年

昔ばなし

しおりを挟む
むかしむかし、あるところに、魔物や妖精、剣に魔法が、当たり前のように存在する国、アテラティッツがありました。



アテラティッツとは、彼らの国の言葉で、夢が叶う、と言う意味です。



周囲を海に囲まれた、小さな島国ですが、国中に笑い声が溢れている国です。




お腹がすけば、魔法でパンを出し、お腹を満たす。


お金に困れば、森で魔物を倒し、宝石を得る。





なに不自由ない生活で、人々は、とても幸せに暮らしていました。








しかし、そんな彼らの幸せは、突然に奪われることになります。



ある日、海の向こうから、一人の傷ついた男性が流されてきました。


アテラティッツの王である、メリクル王は、この男性を手厚く介抱しました。




傷の癒えた戦士は、メリクル王の質問に答えます。

島の外にも世界が広がり、外から来たこと。

外の世界の人間は、魔法を使えないこと。

そして、剣を使って魔物を倒せないこと。



メリクル王は、決心しました。

世界を征服しようと・・・。











~城の会議室~

メリクル王「以上のことから、海の向こう側に攻めて行こうと思う。」

会議室に集まった長老たちは、全員拍手をしています。

大臣ウタン「メリクル王、満場一致で可決ですね。」



王妃「メリクル、本当に大丈夫ですか?王子もまだ小さいですし、貴方に万が一のことがあれば・・・。」

メリクル王「剣も魔法も使えない人間に、負けるはずがない。安心して待っていなさい。」

王妃「・・・はい。」



大臣ウタン「それでは、戦いの準備をしてきます!」

大臣は、ルンルン気分で会議室をでていきました。





~3日後~

国の若者が兵士として集められます。

兵士たちは、水上歩行の魔法を使い、海の上を行進して行きました。





~3週間後・夜明け前~

島を出た兵士達が、捕虜を連れ、引き返してくるのが見えます。

それにしても、捕虜の数が多いようです。

兵士の倍以上は、いるでしょう。




城のテラスから様子を見ていた王妃は、異変に気づきました。




王妃「様子がおかしいわね。国民に注意するように伝えなさい。」

侍女「はい、分かりました」

侍女は、部屋を出て行き、国中の人に注意を伝えるように、鐘を鳴らしに行きます。



王妃は、警戒しながら兵士達を見ていました。

すると、王妃の前に、1羽の白い鳩が舞い降ります。

その白い鳩は、王族の印を首につけている伝書鳩です。

メリクル王からの凱旋の知らせでしょうか?


王妃は伝書鳩の足についている筒を開け、手紙を読みました。


王妃の顔色が、みるみる変わっていきます。




王妃は、緊急事態に備えて、王子の元に急ぎます。

その途中、外から爆発音が聞こえてきました。


外を確認すると、町の方から煙が上がり、無数の連続した小さな爆発音と悲鳴が聞こえてきます。


身の危険を感じた王妃は、5歳になったばかりの寝ている王子を、抱きかかえ城をでることにしました。



そのまま、逃げるように森に隠れます。



巨大な爆発音は、城の方からも聞こえ始めました。

城からは煙が、モクモクと上がっています。






王妃は、森の精霊に王子を守ってもらうように、お願いすることにしました。


森の中に、魔物の血で魔方陣を描き、古の魔法を使い精霊を召喚します。


王妃「アヤテシカ、ラカチーノ!・・・タンアンハ、ルーバヤ、イガ、ネオ!」



魔法の詠唱が終わると、突風が吹き、魔方陣が光輝きます。

その光の中から、精霊が現れました。



精霊は、人間に近い姿をしているが、頭と下半身が山羊、背中には蝙蝠のようなドラゴンの羽を持っています。




召喚された精霊が、低く恐ろしい声で話します。

精霊「願い事を言え。」

王妃「この子を助けて下さい。」


精霊「対価は?対価に見あった待遇で、その子の命を守ろう。」

王妃「はい。私や夫の命と、この国に生きる者の死後の魂を全て。」

精霊が笑いました。


精霊「この、バール自ら、その子の主父となり、子でなくなるまで預かろう!」

王妃「お願いします。」

精霊バール「よかろう。契約は成立した。」

精霊バールが、そういって右腕を上げると、青空は消え、真っ黒い雨雲が現れ、風が吹き始めました。



すると、王妃の腕の中で眠る王子が煙となって、風の中に消えていきます。

精霊バール「盟約通り、命と魂は頂く。」

そういい残すと、精霊バールも、煙となって風の中に消えていきました。



残された王妃の元に、異国の兵士がやってきます。


王妃は持っていた短剣で、その場で自害しました。


王妃の死と同時刻、異国の土地でメリクル王も、処刑時間の前に舌を噛みきり、自害しました。





その後、世界最後の魔法の王国は、雨の中に沈み世界から消えてなくなってしまいました。




~ おしまい



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...