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一方その頃、アグノムの町にて 拳骨のグルバフと対峙していた六勇者たちも、既に戦闘に突入していた。

一糸纏わぬ拳骨のグルバフに、群がるように集まり、一方的に攻撃をする六勇者たち。
しかし、その攻撃は空を切り、拳骨のグルバフに当たることがない。
それどころか、グルバフの纏っていた黒い煙が集結し形を変えながら六勇者に襲いかかる。

「みなさん!
 避けて下さい!!」

村雨美雲の号令で攻撃に集中していたアスカたちは、黒い煙の回避に専念する。

上空に集まった 黒い煙は、音もなく六勇者を押しつぶしにかかる。
地面に落下した黒い煙の塊は、落下と同時に大地をえぐったあと、周囲に飛散し六勇者の視界を奪う。

「みんな、大丈夫!?」

アスカの問いに、それぞれに無事を伝えあった。

「アスカさん!
 風の魔法で煙を、取り除きます!
 我、魂に命ず、風よ黒き煙をうち払え!」

村雨美雲が魔法を唱えると、黒い煙は 遥か上空へと吹き上げられていく。
吹き荒れる風の中、黒い煙の中央にいた拳骨のグルバフは、ニヤリと笑みを浮かべた。


「みんな、気を付けて!
 何かくる!!!」

アスカの号令と共に、グルバフが呪文を詠唱した。

「竜神の父にして竜神の王ヴォラティエよ、その力の一片を、只一時、我に貸し与えたまえ。
 全てを生みだす破壊の炎、いま一度、神の手に。
 燃えよ小宇宙コスモ
 ・・・ファイアーボール。」

拳骨のグルバフの指先から放たれた、ソフトボールほどの火の玉は、村雨美雲の風の魔法と混ざり合い、激しい炎の柱となり周囲の建物を焼き尽くす。
そのまま、炎の柱は燃え続け、六勇者を中に閉じ込めた。

「六勇者よ、短文詠唱とは なかなかだな。
 しかし、無知とは恐ろしい。
 あの規模の魔法、相殺のリスクを知らなかったとしか思えない。」

ドサッ!

アスカの後方で誰かが倒れる音が聞こえた。
アスカが振り返ると、そこに村雨美雲が倒れている。

「美雲!」
「アスカさん、前!!!」

村雨美雲に駆け寄っていた、篠崎雪華の声で、前を向き返すアスカの頬に、グルバフの拳がめり込む。

「ちくしょー!
 やめろー!」

少し離れた位置から、天津國治が叫んだ。
と、同時に、鬼島蒼汰と宮前源次郎が飛びかかる。

拳骨のグルバフは、二人の攻撃を避けるように距離をとる。
背後に天津國治がいるが、攻撃する度胸がないと読んでいるのか、一瞬だけ視線を向けると、そのまま鬼島蒼汰たちの方を向き直し、魔法を詠唱し、氷の塊で反撃する。

傷つき倒れ 満身創痍の六勇者たちを見渡したまま、笑みを浮かべた拳骨のグルバフは 天津國治に言い放つ。

「恐怖に震えたまま眠れ。」

両腕を高く掲げたグルバフの遥か上空に黒い煙が集まり始めた。






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