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全力で駆けつけた君は、リノの気配が見える建物の扉の前に立つ。
そして、呼吸を整えながら、全力で重厚な扉を蹴破った。

建物の中に入ると、白い煙のようなものが視界を遮り始めた。
この煙は 君の視界に映る、人を取り巻く煙のようでもある。
その子供ほどの大きさの煙は、君にすがりつくように周囲を取り囲む。

悪意はないといえ、フカワの瞳のままでは、視界を確保できないと判断した君は フカワの力を解き、室内を見渡した。


室内は 一見すると片付いているように見えるが、注意して見ると壁や床、置いてある家具にさえ、カッターナイフのような小型の刃物で切りつけたような跡が無数に残っている。
君は リノの気配を最初に見つけた奥の部屋に続く扉へと近づくと、その扉の奥から、腰が直角になるほど曲がった老人が姿を見せた。

「老いぼれの家に何用で ございますかな?」

「リノを返してもらおう。
 リノは俺の大事なおと...。」

「りの?はて?
 いったいなんの事やら?」

老人は君の言葉を遮り、見事なまでに とぼけてみせる。

「とぼけても無駄だ!
 いますぐ、リノを返せ!」

「ですから、そんな名前の少女など知りませんよ。」

ふたたび、とぼける老人に君は声を荒げる。

「リノは大切な弟なんだ!
 もし、これ以上...。」

老人は君の言葉を遮り、大声を出し怒鳴りつけるように話し始めた。

「はあ?
 お、と、う、と!?
 あの容姿で男!?
 ふざけるな!
 これから、たっぷり可愛がってやろうとした娘が、おとうと!?
 それなら、さっさと殺して次の獲物を探さなくちゃならんわ!
 クソがっ!!!」




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