目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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5章・英雄の誕生

洞窟14階 便利な道具

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パーティは、14階層にたどり着く、ここの階は 極寒の寒さが冒険者の体力を奪う。
この階層全体は、壁や天井、床などが淡く光り、ランタンの明かりを消しても十分に明るい。

「レヴィアさんの防寒着を着ていても寒さを感じますね。」

「でも、これ来てないとすぐ凍死しちゃうよ。」

アルルとミザリは、レヴィアに頼み、防寒具にフードをつけてもらい、さらに寒くなる気温に対応している。
エイトも あきらめたのか、防寒着を着ている。

「かなり寒いよね。洞窟内で強い風が吹かないのがせめてもの救いだよね。」

「それにしても、明るすぎない?」

レヴィアは、周囲の明るさに警戒しているようだ。
そんなレヴィアに、エイトが説明を始める。

「ああ、これは冷鱗石の効果だよ。」

そういって、エイトは光り輝く壁を棍棒で叩くと、壁が鱗状に剥がれ落ちる。
手のひらサイズに剥がれた鱗状の壁は、氷のように冷たく、淡く光っている。

「これは、周囲の熱を光に替えるんだ。
 この石事体、0℃近くまで下がるから、溶けないことを加味すれば、雪や氷なんかよりも断然に冷やす能力が高いんだよ。」

「凄いね。これを使えばランタンの代わりにならないかな?」

さっそくミザリが商売になればと考え、質問してきた。
しかし、エイトは肩をすくめる。

「僕も考えたんだけど、ランタンの明かりを出そうと思えば、馬車いっぱいぐらいの冷鱗石が必要になるよね。」

「どう考えても、効率が悪いですね。しかも、それだけあれば、かなりでしょうから。」

アルルの言葉がエイトの中で、何か引っかかった。

「ああ、無駄だよね。先を急ごうかな。早くを探そうよ。」

レヴィアが先に進むように促したとき、エイトは 何かに気づいたのか、冷鱗石の発掘を始める。

「レヴィア姉さん、エイト どうしちゃったの?」

「さあ?珍しい虫か何か見つけたんじゃないかな?」

レヴィアは、エイトの行動に興味がないようで、周囲を見回している。

「エイトさん、どうしたんですか。私も一緒に手伝いましょうか?」

アルルがエイトに近寄り、エイトの手助けを始める。

「助かるよ、ありがとう!」

エイトは、嬉しそうに笑顔を見せる。

「ああ、しまった。僕も手伝ってくる!」

ミザリもエイトに声をかけて、採掘を手伝い始める。
レヴィアは、何かに気づいたようで、声を上げる。

「なるほど!」

「レヴィア、何か気づいたのか?」

レイザーがレヴィアに質問する。
レヴィアが笑みを浮かべながらレイザーに説明した。

「ああ、恋の争奪戦が始まったところだよ。」








~30分後~

「二人とも、助かったよ!」

「「どういたしまして!」」

アルルとミザリは、声をそろえて返事する。
3人の集めた冷鱗石は、かなりの量になっている。

「レヴィア、四次元ポシェットから何か入れ物を取ってもらえないかな。食料のケースとかでいいんだけど。」

「ああ、お安い御用だけど、そんなに大量に持ち運んでどうするの?
 明かりにする作戦は愚策だと思うんだけど。」

エイトは、嬉しそうに笑いながら答える。

「違うよ。熱を奪って光に替える特性をつかって、便利な物を作るんだよ。」

「室内用の明かりですか?」

「違うよ、道しるべ用の石だよ。」

アルルとミザリが便利な物を答える。
しかし、どうやら違うようだ。エイトの嬉しそうな笑顔は変わらない。

「ううん。残念だけど、二人とも違うよ。」

「ああ、何か調合の材料かな?」

レヴィアも答えてみる。
エイトは 首を横に振ると、ほぼ正解に近いヒントを出した。

「いや、この冷鱗石を密閉した箱の上の段に入れて、下の段に冷やしたい物を入れておくと!」

「すごい!いつでも冷たい物を楽しめる機械になるんだね!!!」

頭の回転が速いミザリが答えを導き出す。
他のメンバーもエイトの発明に驚いた顔を見せる。
その表情に嬉しそうに話し始めるエイト。

「そう!僕は、≪冷倉庫≫って名づけようと思うんだ!」

「いいね。これでウィンターとの約束も解決された。」

その答えを待っていたように、レヴィアが親指を立て、エイトに合図を送った。
エイトは 笑顔から一転、不安そうな表情に変わる。

「・・・約束?また何かしたんでしょ。」

不安そうなエイトに、打って変わって満面の笑みのレヴィアが答える。
ミザリも横で、満面の笑みを見せている。

「ああ、とってもいいことだ。だよね、ミザリ副会長。」

「そうだね。レヴィア会長!」

レヴィアとミザリは、頼まれもせず、せっせと空き箱に冷鱗石を詰め始めた。






冷鱗石を使い終わった食料調達用の箱に詰めて、四次元ポシェットに入れる。
それでも、かなりの量の冷鱗石が余っている。
レヴィアは、冷鱗石を手に取り、観察している。
そんなレヴィアを見ていた アルルが声をかける。

「これ、取りすぎましたね。」

「なんだか、僕も張り切っちゃってたからね。」

エイトの一言に、にやけて質問するレヴィア。

「どっちのおかげで張り切れたのかな?」

「どういう意味?」

エイトが質問をしようとした時、ミザリとアルルが割り込むように、質問の邪魔をする。

「レヴィア姉さん!」

「レヴィアさん!ほら、をいじってないで、先を目指しましょうよ。」


レヴィア「溶けない氷・・・。そうだ!アルル、君の剣を使わせてもらいたい。」

レヴィアは、アルルの片手剣を借り、錬金術を使い、冷鱗石と融合させ命名する!


「出来た!氷の片手剣アイスソードだ!」

「スゴイ!魔装具を作れるまでに錬金が進化してるなんて!」

「まさか、魔装具の生成を直接見れる日がくるなんて!」

アルルとレイザーは、目を丸くして驚いている。
レヴィアは、自慢げに氷の片手剣アイスソードの解説を始める。



氷の片手剣アイスソード

・永久に解けない氷でできた淡く光る剣。
・切り口を凍らせる力があり、対象に凍傷のダメージも与える。
・他にも、お風呂の温度調整や、暑い日の気温調整、夜間トイレに行きたいときの蝋燭の代わりなども得意とする。



パーティは、大盛り上がりだ。

「冒険者相手に、魔装具を作って売れば、大儲け間違いなしだよ!」

「いまの装備品に氷の属性を錬金して命名したら凄いんじゃないですか?
 私も、雪の女王なんて 2つ名がつくかも。」

「魔装具持ちが増えたな。私の突剣も頼もうかな。」

ミザリ、アルル、レイザーの言葉に、レヴィアの気分も良くなったみたいだ。

「よーし!魔装具作り、頑張っちゃおうかな!!」

そんなメンバーを エイトは冷静に見ていた。

「みんな、場を盛り下げるようで 申し訳ないんだけど、どこまで極寒のエリアが続くか分からないのに、氷の武器を作ると 後が大変だよ・・・。」

エイトの一言に、極寒の地の空気がより一層と寒さを増した気がした。
レヴィアも何かを思い出したかのように、口を開く。

「ああ、そうだった。20階までは極寒エリアって、ウィンター会長が言ってた気がする。
 アルルは、さっそく戦力外か・・・。」

その後、エイトのアドバイスもあり、ランタンと融合させることで、かなりの明かりを作るランタンが生成された。





 ~ to be continued



【補足】


・冷鱗石

地上にも存在する鉱石。地上では、洞窟内のような結晶では見つからず、河原などで、まれに小石などに混ざって発見される。石の特徴としていえば、鱗のような形をしていることと、周囲の熱を吸収し、淡い光を放つ。同じ量であれば、緑光苔の方が何倍も明るい。



・(ミザリ)しまった。僕も手伝ってくる!

アルルに嬉しそうな笑顔を見せるエイトを見て、先を越されたと感じたようだ。



・魔装具を作れるまでに錬金が進化

普通の錬金術師は、二つの物質を混ぜるのも苦労するし、想像と創造のバランスが合わない。レヴィアは、無尽蔵の体力で錬金を続けてきた結果、錬金の超達人になっていた。
普通の人間では、ここまで出来ない。



・2つ名

その冒険者を表す名称。
有名な人物では、今は亡き、雷神バルサーク、金色の魔導士ゼタ。などが存在した。



・ランタンと融合

ランタンの周囲に冷鱗石を含ませることで、光を反射、増幅させるだけでなく、直接手で持つことができ、明かりの強いランタンを作ることに成功した。
後日談だが、通常のランタンが、銀貨80枚/1個に対し、
レヴィアのランタンは、金貨3枚/1個の価格にもかかわらず。王国や貴族、一般人からも大量に受注があったそうだ。





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