目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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2章・スタートライン

第2話 冒険者登録

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~教会~

この世界では、判決は神にゆだねられ、判決が降りなければ、神官が決めるという神託制裁判という考えがある。
3人は、豊穣の神の像の前に、連れてこられた。
像の前では、神官が3人をみている。




「エイト、あれ見て、似てないね。」

レヴィアは、豊穣の神の像を見て笑っている。

「こら、私語は厳禁だぞ。」

警備隊長が、レヴィアに小声で注意する。
その様子を見ていた神官が、難しい顔をしながら口を開く。

「先ほど、善良な旅人たちから訴えがあった。街道を進んでいると、腹痛を訴える少女が現れ、介護している最中に馬車を盗まれたそうだ。」


3人は、顔を見合わせ、驚いた表情をする。
警備隊長も、何か言いたそうな表情だ。
エイトは、神官に事の真相を説明する為に神官の方を見た。

「神官様、それは違います。私たちは・・・。」



神官が警備員に指示をして、エイトが喋れないように、口枷をはめさせる。

「取り調べるまでもない。被害者が訴えているのだからな。この少年は王国の牢に搬送し、少女たちは私が調べる。」

「神官様、今回の被害者は、この少年たちですぞ!あんなゴロツキの話を信じてはいけません。」

警備隊長が神官に喰いつく。やっぱり警備隊長はいい人そうだ。

「だまれ!お前も神にたてつく反乱者で牢にいれてやる!」

神官が合図を送ると、警備員たちが、警備隊長を押さえつけた。

「隊長、すみません・・・。」

「くっ・・・。お前たち、気にするな。」



神官たちのやり取りを傍観していた レヴィアが口を開く。

「あーあ、私たちを罠にはめてもいいのかなー。山賊の正体バラしちゃおっかなー。馬車の中で凄い物見つけたんだけどなー。」

「な、なんだと!適当な事を言うな!この娘も口をふさげ!」

神官は、あきらかに何か動揺をしている。



「これなーんだ?」

レヴィアは、いつの間にかロープを解いていたようで、バックからフラスコを取り出した。

「?」

神官も警備員も、フラスコの正体がわかっていないのか、不思議そうにフラスコを見つめている。



レヴィアは、エイトの口枷を外し、フラスコを投げる。
レヴィアが投げたフラスコは、空を舞い、地面に落ち、粉々に砕けた。
床にこぼれた液体は、モクモクと大量の煙を出し始める。

それを見ていた、エイトは、大きな声で叫んだ!

「伏せろ!爆薬だ!」

神官も警備員も逃げるように机の陰に隠れ縮こまっている。
その隙に、エイトとアルルは外に逃げ出す。レヴィアは、警備隊長を一緒に連れ出した。
教会を出る間際に、神官たちに聞こえるように大きな声でレヴィアが言う。

「この警備隊長は、人質になってもらおう!」



外に出ると、山賊から奪った馬車に、4人は乗り込み、馬車を走らせる。



警備隊長は、馬車の中で申し訳なさそうにしている。

「すまない。助かった。」

レヴィアは、気にすることはないといった仕草で、警備隊長に伝える。
そして、エイトに話しかける。

「次は、働かないからね。」

エイトは、優しくほほえんでいた。






途中、警備隊長の服を山賊が保管していた盗品?の中から選び、冒険者風に仕上げた。

警備隊長の名前は、レイザー=フォックス

家族は、奥さんとは死別していて、一人娘がいたそうだが、いまは遠いところに住んでいるため、一人で暮らしているそうだ。
今回、死者の国に繋がる地獄の門を目指している話をすると、ついていきたいと言うので、仲間として行動することになった。
神官の恨みを買ってしまっては、警備隊長として復職することも難しいだろうから、賢明な判断だろう。
レヴィアたちは、レイザーを快く仲間にすることに決めたようだ。









~地獄の門の迷宮、入り口付近の町~

町の入り口には、警備員が立っている。

「レヴィアさん、どうします?」

アルルが心配そうに、レヴィアに質問する。
レヴィアは、にっこりとほほえみ頷くと、レイザーに目線を送る。

「ああ、任せてくれ。」

そういうと、レイザーは警備員の元に駆け寄り話しを始めた。



警備員は、レヴィア達の方を指さし、胸の前で手を横に振ったりしている。
どうにも分が悪そうだが・・・。

「面倒そうだね。無視して進もうか。」

「やめてよレヴィア。また捕まるよ。」

レイザーが戻ってくる。



「盗品の馬車を入れると、見つかる恐れがあるから、馬車はダメだそうだが、4人だけなら通してくれるそうだ。」

アルルは安心したのか、緊張した表情から安堵の表情へと変わる。

「問題ない。馬車は便利だったが、迷宮には乗り入れることができないからね。」

「そういってくれると助かる。」

4人は、馬車を捨て町に入る。


町の中は、冒険者や商人、貴族に一般市民など、様々な人で溢れていて活気がある。

「じゃあ、食事をとって、迷宮を目指そうか!」

エイトは、貨幣の入った袋を取り出し、枚数を数え始めた。

「そうですね。じゃあ、先に皆さんの冒険者カードを登録してきますね!」

アルルは、手を出し待っている。



「・・・・・・。」他の3人





「あの、もしかして、冒険者カードを持ってないんですか!?」

「何それ?」

「えぇーーー!冒険者の身分を証明するカードで、それがないと迷宮には入れてもらえませんよ!」


「エイト、知ってた?」

「いや、まったく。レイザーさんは?」

「最近まで、警備員だったので・・・。」




レヴィアが閃く。

「よし!それを登録に行こう。そうすれば、解決だね!」

アルルが暗い顔になる。

「そんな簡単にできませんよ。
 ・・・だって冒険者カードを発行してるのは、所属するギルドか、教会なんですから。」

エイトとレイザーも、暗い顔になる。
さらに追い打ちをかけるように、アルルは口を開く。

「それに、ギルドは、長年の実績がないと、発行してもらえないし。
 教会では、神官が神託をして、豊穣の神の許しがないと発行できないそうです。犯罪者には厳しいって聞きますし・・・。」



エイトとレヴィアが笑う。

「なーんだ。神託なら、間違いないね。急いでいこう!」

「信じる者は救われるから、大丈夫!」

パーティは、レヴィアに急かされて教会を目指す。

「レヴィアさん、本当に大丈夫なんですか?」

アルルとレイザーは、まだ心配そうな顔をしたままだ。





教会についたパーティは、神託を受けるための手続きをする。

「本日も教会のご利用、ありがとうございます。冒険者カードの説明をしますね。

 まず、冒険者カードにはランクがあります。
 ランクによる違いは、発行手数料と蘇生の寄付金の違いだけです。


 まず、【ランクC】
 このランクは、神託でと選ばれた人が、ギルドを通して発行するカードです。
 発行手数料や、蘇生の寄付、年会手数料は、ギルドに準じて違うので、ギルドで確認してください。ギルドによっては、ノルマがあったりします。

 次に、 【ランクB】
 このランクからは、神託でと選ばれた人が、ギルドを通して発行するカードです。
 発行手数料や、蘇生の寄付、年会手数料は、ギルドに準じて違うので、ギルドで確認してください。ギルドによっては、ノルマがあったりします。


 次に、 【ランクA】
このランクからは、神託でと選ばれた人が、発行するカードです。
 発行手数料は、金貨10,000枚
 蘇生の寄付は、金貨500枚
 年会手数料は、無料です。


 最後に、【ランクS】
 このランクは、豊穣の神が認めた冒険者だけに贈られるもので、発行手数料、蘇生の寄付、年会手数料が全て無料です!!!!

 まあ、Sランクに選ばれた冒険者は、この10年間で、2人だけって言われてますからね。
 次は、お支払方法なんですが・・・。」


説明が長すぎたのか、レヴィアが口を挟む。

「じゃあ、Sランクの大人3枚、子供1枚下さい。」

「いや、だれが子供なんだよ。」

エイトの突っ込みに、受付を含め4人は、一斉にエイトを見る。

「いやいや、まだこれから身長は伸びるから!」





「まあ、内容は分かった。早く神託を受けたい。その後、説明を聞くことにするよ。」

そういうと、レヴィアは、教会の奥にある神託室に歩いていく。
・・・レイザーは、保護者と思われてるのか、受付に注意されていた。




 ~ to be continued



【補足】


教会:
この世界では、判決は神にゆだねられ、判決が降りなければ、神官が決めるという神託制裁判という考えがあるが、地方の神官は、汚職にまみれ、神託を行うことがない。


レイザー(48):
立派な口髭の清潔感あふれる紳士。背も高く、白髪が似合っている。
神官に背き、罰を受けようとしたところを、レヴィアたちの機転で助けられる。


冒険者カード:
冒険者の身分を証明するカード。これがないと迷宮にも入れない。
購入には、破格の費用を払う必要があり、貴族以外の冒険者は、組合(ギルド)に所属して金銭を負担してもらっている。なので、ギルドカードと呼ばれたりする。


ギルド:
組合の事。協会に加入できないような小さな団体をまとめているのが、組合。
商人組合や、冒険者組合、傭兵組合など、組合は職業の数だけ存在する。



神託室:
神様から神託(啓示)を受けるための神聖な部屋。
全ての教会に設置されていて、司法の中心でもある。





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