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天使と呼ばれた悪魔

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城門を超えると、そこには生き残った悪魔召喚士たちと召喚された悪魔が数匹残されているだけの状態であった。
生き残った悪魔召喚士たちの中に、千紘の姿も見える。

千紘は 城門付近にエイルの姿を確認すると、涙を流しながら駆け寄ってくる。

「なぜ来たの、ここは危険なんだよ!」


いままで意識が朦朧としていたエイルは、千紘に抱きかかえられるように抱きしめられ、その深紅の瞳に光を取り戻す。


「千紘・・・。
 遅れてごめん。
 俺が千紘を守るから。
 千紘の笑顔を守る為に戦うから。」


「・・・もう遅いんだよ。
 城門が破られて、みんな戦う意思を亡くし始めた。
 王国軍も城壁の内側に引き上げていったし 戦う意味なんかないの。」

「じゃあ、なぜ千紘は最前線で戦い続けているの。
 まだ あきらめていなからなんじゃないのか。」


「それは・・・。
 私たちが逃げてしまったら、本当に終わってしまいそうで・・・。
 私は みんなを守りたい。エイルと出会わせてくれた、この世界を・・・。」


エイルも千紘を抱きしめる。


「千紘、俺は魔界王エイルシッド。
 ニルヴァーナ・アース・エイルシッド・トライアス。
 全宇宙最強の悪魔なんだぜ。
 千紘が守りたい この世界、俺が代わりに守ってやる。」


抱きしめあう2人に、飛びかかるように魔王軍の魔獣が襲い掛かってきた。
エイルは 千紘を抱きしめたまま、その漆黒の翼を激しく広げ、突風で魔獣を弾き飛ばす。


「千紘、俺の最期の戦いを見守っていてくれ。」

「最期って・・・?」


エイルは、千紘に優しくキスをすると二コリと笑って見せる。


「古の魔神の血を受け継ぎ、神々を守護する守護天使の子 エイルシッドが命ずる。
 我が血に眠る破壊の龍神ヴォラティエよ。
 いまこそ その夢幻の如き力を解き放つ!
 我が影、竜神の王ヴォラティエよ、その無限の力を我に返上せよ!
 全てを焼き尽くす破滅の光。
 全てを生みだす破壊の炎。
 再び我が元に集え・・・解放リリース

次の瞬間、エイルの体は淡く光はじめた。
その光は、体から解き放たれるように、ゆっくりと綻び始める。



レバノンが持っていた 千紘の悪魔召喚士の手帳も、エイルの詠唱に合わせて激しく光りだす。
王国軍も魔王軍も、エイルに起きた異変に気付き戦いの手を止める。



神官長は、レバノンに駆け寄り現状の確認をする。

「レバノン、いま何が起きているのでしょうか!?」

「わかりません。
 しかし一つだけ言えるのは、
 愛の力・・・奇跡が起きたということですかな。」

レバノンは、そう答えて 手に持っていた千紘の悪魔召喚士の手帳を神官長に渡す。
神官長は、千紘の手帳を開き、能力を確認した。
その能力は、初めて見た時と変わらない。
違いといえば、知力と成長性、そして・・・。



体力  測定不能
魔力  測定不能
腕力  測定不能
敏捷  測定不能
知力  測定不能

成長性 測定不能
総合力 測定不能

使用魔法
ファイヤーボール
:10兆度の超火球が、周囲の星々を焼き尽くし浄化する。

メテオストーム
:使用した惑星の生きとし生けるもの全てに直径100Kmの極炎の塊を衝突させ浄化する。

スーパーノヴァ
:隣接する宇宙を巻き込み消滅させ浄化する。




「な、なんてことなの!」

「悪魔なんてレベルじゃないですな。
 魔法の全てが想像を超えるレベル、全てに浄化の文言も含まれる。
 おそらく、彼は悪魔の姿をした本物の神の化身でしょうな。」

「彼は神の化身なの・・・。」



魔王軍の悪魔や魔獣たちは、エイルの魔力に怯え、散り散りに逃げ出していく。
エイルが その両手を高く掲げると、町を襲っていた炎がエイルの上空に集まっていく。
そして、祈るように手を合わせた瞬間、エイルの上空に集まった炎は光の矢となり、魔王軍の悪魔や魔獣に襲い掛かる。

なんとか回避して直撃を免れた魔王軍の生き残りは、生きた心地がしなかっただろう、死に物狂いで他の悪魔や魔獣を押しのけ、我先にと その場を離脱していく。


魔王軍が撤退していく中、一人取り残された白髪の青年だけ不敵な笑みを浮かべていた。
この青年が魔王本人なのだろうか。


青年は、白髪に青い瞳の美しい青年で 純白の2対の翼をもっている。
白髪の悪魔は、対照的なエイルを見つめ、よくとおる透き通った声で語り掛けてきた。


「我が名は、守護天使 セフィラルド。
 まさか、我が宿敵、守護天使エイルシッドと再開することができるとはな。
 いまこそ、天冥大戦に決着をつけようぞ。」


そう語り終えると、白髪の悪魔は その純白の美しい翼を力強く動かし、エイルに飛びかかってきた。
エイルは、とっさに攻撃を防ぎ反撃にでるが、予見されていたのか エイルの攻撃も空を切った。

「ほほう、前に戦った時よりも動きが俊敏になっているようだな。
 それとも、消滅の前の最期のあがきか。
 かかってこい、エイルシッド・アテラティッツよ。」


エイルを包み込む光は 徐々に綻び、解けるように天へと還っていく。
その光を見上げた エイルは、一気に勝負に出たいようで、白髪の悪魔の挑発に乗るように戦いを開始した。


(ダメ、エイル。
 戦わないで、私と一緒に逃げよう。もう十分だよ。
 私は エイルが傷つくところを見たくない。
 それに、その光・・・。)




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