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悪魔召喚士

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~数週間前、日本~

「ただいまー!
 お母さん聞いてー、美鈴がねー。
 小鳥のあとぜき見ててネタバレを、
 あれ?
 お母さーん!」

学校から帰ってきたばかりなのか、カバンを椅子の上に置き、制服姿の千紘は母親を探し始める。

「お母さーん?
 私一人で行っちゃうよー。」

(おかしいな、今日はパートも早く終わるから、一緒に映画に行く約束だったのに。)

千紘は 母親が居ないことを察し、徐々に日が暮れる部屋の中で、母親の帰りを待つ。
LINEで連絡するが、返事もないし、既読すらつかない。

(どうしちゃったのかな?
 もしかして、一緒に行く約束を勘違いしてて、自分一人で映画に行っちゃったのかな?
 お母さん、ちょっと変わってるからな・・・。)

あまり深く考えずに、千紘はテレビを見始め、いつの間にか眠りについていた。



千紘が目を覚ますと、リビングは暗闇に包まれていた。
スマホの明かりを頼りに、リビングの電気をつける。

「お母さん、何してんの!
 もう、9時なんですけど!
 いったいど・・・。」

プルルルル!
 プルルルル!

千紘がボヤイていると、家の電話が鳴り響いたので、慌てて電話に出る。

「はい、神宮寺です。
 え、あ、はい。
 私は娘です。
 はい、はい。
 お母さんが!
 ど、どこの病院ですか!」

千紘は電話を切ると、泣きながら父親に電話する。

「お父さん・・・電話に出てよ・・・。
 お母さんが・・・・・・。」



~悪魔召喚の間~

(お願い、私に力を貸して・・・。
 やり直す力を・・・。
 お母さんと一緒に居たい。
 また家族で、一緒に・・・。)

千紘が最後の召喚の儀式を始めると、頭の中に声が響いてくる。

(家族の愛の結晶は、決して砕けない。
 その思い、俺が叶えよう。
 我が名は・・・。)

「あなたと契約するわ!
 お願い、私に力を貸して!」

千紘は、最後の召喚だったので、悪魔が召喚されてしまう前に契約を成立させてしまった。
そんな千紘の目の前には、一人の紳士が立っていた。
その紳士は、いままで召喚してきた悪魔とは違い、人間と変わらない姿をしていて、短く整えた顎髭と長髪が似合う素敵な男性だった。年は、20代後半といった頃だろうか。
外見は人間と変わらないのだが、背中から生えた2対の竜の翼があり、強力な悪魔のようであった。

「あ、あの・・・。」

「・・・ん?」

「あの、私は あなたを召喚して契約した、神宮寺 千紘といいます。
 あなたの名前は?」

「俺の名前は・・・。
 ・
 ・
 ・
 なんだっけ?」

「・・・はい?」

混乱する2人の元に、部屋に入って来た神官が声をかける。

「もしかして、召喚の途中で契約をしたんじゃないですか?」

「・・・あっ!」

「やはり。
 ・
 ・
 ・
 名前を名乗らずに契約してしまうと、召喚された悪魔は記憶を一時的になくしてしまうんですよ。
 まあ、能力は変わらないので、上級テクニックとして記憶を消す契約として乱用する召喚士もいるんですけどね。」


千紘は気まずそうに、黒髪の悪魔を見る。
黒髪の悪魔は、その美しい赤い瞳で、まっすぐに千紘を見つめ返し答える。

「まあ、ほら、あれだ。
 羽化効力だっけ・・・?
 仕方ねーな。」

「羽化効力?
 ・・・もしかして、不可抗力ですか?」

「・・・うん。
 そう、それ、それが言いたかった。」

(・・・ヤバイ!
 見た目がいいのに、アレだ!
 かなり頭が悪い悪魔みたいだ!
 ・
 ・
 ・
 もしかすれば、記憶をなくした弊害かも・・・。)




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