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外伝(新世界)
英雄の軌跡(1)
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青年の名は、バナン
カザンの奴隷区に生まれ育った貧しい青年です。
彼は幼い頃から、力が強く、乱暴者だったと言われています。
と同時に、貧しき奴隷区の英雄でもありました。
英雄と呼ばれる理由は、彼が幼き少年だったころ、商人区で、腹をすかせた少女が盗みを犯しました。
盗んだのは、ごみ箱に捨てられていたパンです。
神殿騎士は、少女に、むち打ちの刑を命じました。
罪名は、捨ててあるものを盗んだ罪、でした。
捨てた人に対して、盗みを行ったという。通常では考えられない罪です。
少女は幼く、鞭で打たれれば死んでしまうでしょう。
処刑は日の出と共に始まります。
そこに、まだ少年だったバナンが現れてこう言います。
バナン「少女の盗んだパンは、私が盗んで捨てたものです。私の捨てた物を盗んだ少女を罰するのであれば、今後、私たちの生活を脅かす商人区の人たちにも罰を与えて下さい。もちろん、私は盗んだ罪を償います。」
裁判をした神殿騎士が言います。
神殿騎士「では、お前の刑は、鉄棒打ち10打擲だ。もし悲鳴を上げることなく耐え続けることができるのであれば、この少女は解放しよう。しかし、一声でも上げれば、むち打ちの刑は続行する。」
そう一方的に話すと、バナンは、その場で捕らえられ、懲罰代に縛られ、10打擲の鉄棒打ちを受けました。
鍛え上げられた大人でも、5打擲もすれば、死んでしまうような処刑です。
鉄棒の打ちつける音は、静かな朝の商人区全域まで聞こえたと言われています。
しかし、バナンは最後の瞬間まで、目を見開き、一声も上げることはありませんでした。
10打擲目を打ち終えると、神殿騎士はこう言いました。
神殿騎士「お前の声が聞こえなかったのは、気を失っていたからだ。少女は、むち打ちの刑にする。」
この一声に、奴隷区の見世物戦士が奮い立ちました。
しかし、装備のない見世物戦士と、重装備の神殿騎士では、戦いになりません。
騒ぎが大きくなり、いままさに、戦闘が起きようとしている時、一人の金色の鎧を着た神殿騎士が駆けつけました。
彼は、バナンを見てこういいました。
金色騎士「少女を解放し、この罪を与えた物にも同じ罪を与えよ。」
判決を下した神殿騎士は抗議しました。
金色騎士「その盗まれたパンは、私が、この少年に恵んだものだ。お前は調べもせずに権力を乱用した。その罪は、罰を与えた分だけ償う必要がある。」
金色騎士は、次に捕らえられている少女を指さします。
金色騎士「そこの少女は、この少年が約束をした結果、守ることができた。しかし罪は罪、誰かを罰せねばならない。
この取引を勝手に行ったものに比がある。罪人と勝手に交渉をした者の資格を全て、はく奪せよ!
これは、教祖オーランド卿の意向である。」
元神殿騎士「そんな、私は・・・。」
周りにいた神殿騎士が元神殿騎士を捕らえる。
別の神殿騎士「おい、自分で潔く罪を受けるか、縛られて受けるか選べ。元神殿騎士だし選ばせてやる。」
元神殿騎士「いや、待ってくれ、おい、仲間じゃないか。なあ。見逃してくれよ。」
別の神殿騎士「縛りつけろ。さるぐつわを噛ませてやれ、痛みに耐えれるはずだ。」
元神殿騎士「いやだーやめ・・・・・・・・・・・・。」
別の神殿騎士「ガレアス様、4打擲で死亡が確認されました。」
金色騎士「わかった。見世物は終わりだ!」
金色騎士が、そう号令をかけると、商人区の人々も、奴隷区の人々も、処刑場を離れました。
その場には、バナンと少女、金色騎士、そして数人の神殿騎士が残されます。
金色騎士「少年、名前は?」
バナン「聡明な騎士様。私の名前は、バナンです。」
金色騎士「バナン、君の名前は覚えておこう。もし私が困った時は助けてくれればいい。」
そういうと、金色騎士は、柄の部分に針鼠の飾りのついた一振りの長剣を、バナンに与えました。
幼い彼には、まだまだ使えないような大きな剣です。
バナン「ありがとうございます。あなたの役に立てるように、剣の腕を磨きます。」
このやり取りをみていた、奴隷区の住民から、行動も発言も素晴らしく、英雄と呼ばれるようになったと言われています。
~ END
カザンの奴隷区に生まれ育った貧しい青年です。
彼は幼い頃から、力が強く、乱暴者だったと言われています。
と同時に、貧しき奴隷区の英雄でもありました。
英雄と呼ばれる理由は、彼が幼き少年だったころ、商人区で、腹をすかせた少女が盗みを犯しました。
盗んだのは、ごみ箱に捨てられていたパンです。
神殿騎士は、少女に、むち打ちの刑を命じました。
罪名は、捨ててあるものを盗んだ罪、でした。
捨てた人に対して、盗みを行ったという。通常では考えられない罪です。
少女は幼く、鞭で打たれれば死んでしまうでしょう。
処刑は日の出と共に始まります。
そこに、まだ少年だったバナンが現れてこう言います。
バナン「少女の盗んだパンは、私が盗んで捨てたものです。私の捨てた物を盗んだ少女を罰するのであれば、今後、私たちの生活を脅かす商人区の人たちにも罰を与えて下さい。もちろん、私は盗んだ罪を償います。」
裁判をした神殿騎士が言います。
神殿騎士「では、お前の刑は、鉄棒打ち10打擲だ。もし悲鳴を上げることなく耐え続けることができるのであれば、この少女は解放しよう。しかし、一声でも上げれば、むち打ちの刑は続行する。」
そう一方的に話すと、バナンは、その場で捕らえられ、懲罰代に縛られ、10打擲の鉄棒打ちを受けました。
鍛え上げられた大人でも、5打擲もすれば、死んでしまうような処刑です。
鉄棒の打ちつける音は、静かな朝の商人区全域まで聞こえたと言われています。
しかし、バナンは最後の瞬間まで、目を見開き、一声も上げることはありませんでした。
10打擲目を打ち終えると、神殿騎士はこう言いました。
神殿騎士「お前の声が聞こえなかったのは、気を失っていたからだ。少女は、むち打ちの刑にする。」
この一声に、奴隷区の見世物戦士が奮い立ちました。
しかし、装備のない見世物戦士と、重装備の神殿騎士では、戦いになりません。
騒ぎが大きくなり、いままさに、戦闘が起きようとしている時、一人の金色の鎧を着た神殿騎士が駆けつけました。
彼は、バナンを見てこういいました。
金色騎士「少女を解放し、この罪を与えた物にも同じ罪を与えよ。」
判決を下した神殿騎士は抗議しました。
金色騎士「その盗まれたパンは、私が、この少年に恵んだものだ。お前は調べもせずに権力を乱用した。その罪は、罰を与えた分だけ償う必要がある。」
金色騎士は、次に捕らえられている少女を指さします。
金色騎士「そこの少女は、この少年が約束をした結果、守ることができた。しかし罪は罪、誰かを罰せねばならない。
この取引を勝手に行ったものに比がある。罪人と勝手に交渉をした者の資格を全て、はく奪せよ!
これは、教祖オーランド卿の意向である。」
元神殿騎士「そんな、私は・・・。」
周りにいた神殿騎士が元神殿騎士を捕らえる。
別の神殿騎士「おい、自分で潔く罪を受けるか、縛られて受けるか選べ。元神殿騎士だし選ばせてやる。」
元神殿騎士「いや、待ってくれ、おい、仲間じゃないか。なあ。見逃してくれよ。」
別の神殿騎士「縛りつけろ。さるぐつわを噛ませてやれ、痛みに耐えれるはずだ。」
元神殿騎士「いやだーやめ・・・・・・・・・・・・。」
別の神殿騎士「ガレアス様、4打擲で死亡が確認されました。」
金色騎士「わかった。見世物は終わりだ!」
金色騎士が、そう号令をかけると、商人区の人々も、奴隷区の人々も、処刑場を離れました。
その場には、バナンと少女、金色騎士、そして数人の神殿騎士が残されます。
金色騎士「少年、名前は?」
バナン「聡明な騎士様。私の名前は、バナンです。」
金色騎士「バナン、君の名前は覚えておこう。もし私が困った時は助けてくれればいい。」
そういうと、金色騎士は、柄の部分に針鼠の飾りのついた一振りの長剣を、バナンに与えました。
幼い彼には、まだまだ使えないような大きな剣です。
バナン「ありがとうございます。あなたの役に立てるように、剣の腕を磨きます。」
このやり取りをみていた、奴隷区の住民から、行動も発言も素晴らしく、英雄と呼ばれるようになったと言われています。
~ END
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