龍慶日記

黒山羊

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ケイト編

~新章・最終節~

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~山の麓~

バベルは山の麓の森の入り口で、傷ついたミツハシを見つけた。

バベルは、車を降り、ミツハシに近寄る。

ミツハシ「隊長、ワナです!」





バベルが、ミツハシに近づくと、背後から透明のドラゴンが姿を現す!




ミツハシの言葉が、バベルを救う。

ドラゴンの牙を間一髪のところで、バベルは前に飛び込むように回避する!



よろけたバベルに、そのままドラゴンは、2撃目の噛みつきを放つ!




ダダダダダ!

ミツハシがバベルを庇うように援護して弾幕を張る。





ドラゴンは怯み、攻撃目標をバベルから、ミツハシに変更する。


ドラゴンは、ミツハシの左足を噛みちぎり、ミツハシを沈黙させる!





バベルは、態勢を立て直し、突剣を抜き、ミツハシを襲うドラゴンの首の付け根を貫いた。







急所を貫かれたドラゴンは、暫く暴れた後、全身が光の粒に変わっていった。






透明のドラゴンを倒したあと、傷ついたミツハシに応急手当を施し、車に乗せて言った。

バベル「ミツハシ、俺は決着をつけてくる。先に基地に戻り、近くのシェルターで待機していてくれ。」





ミツハシ「は、・・・はい。」

傷ついたミツハシは、返事をするのも苦しそうだ。

傷ついたミツハシを乗せた車を、自動運転でショッピングモール跡の基地に送る。





バベルは周囲を見渡し、森の方を見る。

バベル「イダ、そこに居るんだろ。」




イダが、森の中から姿を現す。

イダは、警戒しているのか、バベルと距離をおいている。

バベル「正直に答えるんだ。この仮面の本当の目的はなんなんだ。」



イダ「それは、アスカを救う為に、」

バベルが言葉を遮る。



バベル「アスカを殺さずに救えるのか?」




イダ「・・・。」




バベル「お前たちの作戦は、ラースを消滅させる為に、俺を洗脳してアスカを殺させる。・・・そうなんだろ。」




イダ「・・・。」




バベル「俺は仮面を被らないし、アスカも殺させない。」





イダが腕を組み、雰囲気が変わる。

イダ「いや、参ったな。君がそこまで考えているとは、思わなかったよ。」

イダの口調も変わった。




バベル「・・・ホープか?」

イダ(ホープ)「そうだよ。ところで君は、ラースを消滅させる方法でも思い付いたのかな?」



バベル「いや、案はあるが、具体的な方法は、まだ何も考えていない。」



イダ(ホープ)「具体的な解決策もなく、どうやって彼女を助ける?ちなみに、考えている案は?」


バベル「いま考えているのは、この仮面をアスカに被せて、ラースを消滅させる方法だ。ただ、実際に成功するのか失敗するのかは、やってみないと分からない。」






・・・。






ホープは、考え事をしているのか、沈黙が続く。






イダ(ホープ)「面白い作戦だね。試してみるとしよう。
しかし、その作戦を実行するには、私からの条件がある。


作戦が失敗した場合は、君がラースを・・・。彼女を殺す。それが私からの条件になる。

それから、注意しておきたいんだが、今のアスカの動きは、D細胞の適合者と同じくらいに素早いみたいだよ。それでも約束することができるのかな?」









バベル「・・・分かった。約束する。」








~30分後、遭遇予測地点~

銃声が徐々に近づいてくる。

ホープの配備した機械たちが、追い込んで来ているようだ。






イダ(ホープ)「来たようだ。準備はいいな。」

バベル「ああ。」



バベルは、腰の突剣を帯刀したまま、右手に持っていた仮面をイダに渡す。

失敗は、許されない。

バベルは、直前までイメージして、万全に準備をしていた。







バベルの目の前に、アスカが現れる。

アスカは、着ていた衣服がはだけ、体中に傷を負っている。


バベル「アスカ、なのか・・・。」



アスカ「・・・。」




アスカからは、野生の獣のような殺気を感じる。彼女の目はドラゴン特有の横長の瞳をしていて、バベルを睨みつけている。








バベルは、アスカを捕まえる為に、アスカの腰をめがけ、タックルをする。


アスカは、タックルを防ぐために、本能的に右足を蹴り上げバベルを攻撃した。


バベルはとっさに、アスカの左に回り込み、背後をとり、右手でアスカの右腕、左手でアスカの体を抑えた。


アスカは、左手でバベルの腰の突剣を引き抜き、バベルの左脇腹を刺して逃れる。






バベルには躊躇があるが、アスカにはそれがない。


さほど変わらない身体能力で、思いの違いの差は大きく差を広げる。





バベルは、少しアスカと距離を置き、刺された脇腹を抑える。

出血はすぐ止まり、傷も塞がっている。




ホープは、バベルが形勢不利と見て、機械に一斉攻撃の命令を下す。

バベルとアスカを取り囲む自立戦闘型機械や、タイヤ機械の銃器が一斉に火を噴く。





アスカは、弾丸より早く、バベルとの間合いを詰める。


バベルも態勢を整え、アスカの攻撃に呼吸を合わせる。


アスカの繰り出す突剣を、紙一重でかわす。


2撃目は、腰に差していた鞘を引き抜き、突きを払う。


3撃目、4撃目、5撃目。


連続して突きを放つが、バベルは攻撃をさばいていく。



6撃目を放つ前に、二人を銃弾が襲う。

二人は、攻撃を銃弾を回避するために、間をあける。




イダのカメラを通してみるハイスピードカメラでは、二人の動きを捉えることができない。


バベル「ホープ、弾丸が邪魔だ!」





イダ(ホープ)「すまない。」

ホープは、機械に攻撃停止を命じる。





バベルもアスカもドラゴンの力を使い、その異次元の速度の中で攻防を繰り広げる。





経験の差か、バベルの反撃が、アスカの胴を薙ぎ払い、アスカの動きが止まる。






バベルは、アスカを捕らえる為に近づく。


アスカ「ごめん。ケイト、独りにしないで・・・。」


バベル「アスカ!」




その瞬間!一瞬のスキをつき、

アスカの突剣が、バベルの心臓を貫く・・・。



突剣をつたい、バベルの血が流れおちる。




アスカ「・・・これで終わりだ。」





バベルは、握っていた鞘を落とし、そのまま崩れるように膝をつく。


イダ(ホープ)「くそ!」



ホープは動けなかった。もし機械が攻撃したとしても、いまのアスカに弾丸は当たることがない。

いまのホープには、絶好の好機チャンスを伺うことしかできない。







勝利したはずの、アスカが苦しみ始める・・・。



アスカは、頭を押さえ、うずくまる。







アスカ「イヤーーーーーーー!もうやめて!!」


アスカの目から、涙がこぼれる。








アスカ「だめ、・・・ケイト、死なないで、一緒に居ようって約束したじゃない!」





・・・。







バベルは・・・。ケイトは動かない。アスカの意識が戻って安心したのか、一瞬だが、口元が緩んだ気がした。





アスカ「ケイト、一緒にいようね。お父さんやお母さん、お兄ちゃん、みんなケイトなら喜んでくれるはずだから・・・。私の恋人って紹介していいかな・・・。まだデートもしてないのに、早すぎるかな?

ねえ、ケイト・・・。」


アスカは、ケイトを後ろから優しく抱きしめる。







アスカの血が、ケイトに流れ込む・・・。


アスカ「もし、生まれ変われたら、また会えるといいね。愛してるよ。」



アスカは、ケイトを抱きしめ目を閉じる。























ケイトの遺体を回収しようと、機械が動き始める。








イダ(ホープ)「まて、しばらくこのままにしておけ、この付近には誰も近づけるな。」


ホープの命令で、機械は警戒モードで待機状態になる。











イダ「すまない、バベル。まだ君の力は必要なんだ。原始のドラゴンを殲滅するまでは・・・。」









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