龍慶日記

黒山羊

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ケイト編

~新章・第十五節~

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~シェルター内~

司令室から出ると、クルマヤが待っていた。



クルマヤ「バベルさん、大丈夫でした?」

バベル「ああ、何もなかったよ。」

クルマヤ「えっ、そうなんですね。あの、よかったら、頼みがあるんですけど、聞いてもらえませんか?」



バベルは考えた。迷彩服との集合までまだまだ時間はある。しかし、明日の予定で墓作りがあるから、無駄なことはしたくない。穴掘りは重労働なので、できれば今日は早く寝たい。



バベル「いや、今日は早く寝たいかな。」

クルマヤ「そんなこと言わずに、お願いします。」




バベル「でも、明日は重労働だから。」

クルマヤ「分かりました。寝るところ準備するんで、話聞いてくださいよ。お願いしますよ。」

バベル「えー。でも・・・。」




タンクトップが騒ぎを聞きつけ、司令室から出てくる。

タンクトップ「泊まるところがないなら、うちに来ない?うちは広くていいよー。」

そういうと、バベルにウィンクをしてきた。



バベル「クルマヤの家に行くことに決まった所だったんで。すみません。」


そういうと、クルマヤの腕を引っ張り、その場を離れた。


タンクトップ「けっこう、わがままさんね。」









~クルマヤの家~

割り振られた部屋にたどり着くと、十人程の男女が部屋に待機していた。

中には、中学生くらいの女の子もいる。

他にも、兵士A以外にも、見たことがある顔がある。




中にいた一人が、クルマヤと入れ替わりで外に出る。

クルマヤは、廊下を警戒し、ドアを閉めた。



クルマヤ「バベルさん、・・・。いや、バベル隊長!実は、このシェルターを解放するために手伝ってもらいたいんです。このシェルターは、アニキ一派が仕切っていて酷い場所なんです。」

バベル「いい人そうだったけどね。」

クルマヤ「バベル隊長は騙されてますよ!アイツらは、気に食わなければ、殴る蹴るの暴行をしたり、それ以上のことも平気でしてきます。ここは、人間の生きていく場所じゃないんです。」

バベル「・・・で?」

兵士A「はい、そこで、バベル隊長には、あの司令室にいる奴らを皆殺しにしてもらいたいんですよ。あいつらさえいなくなれば、きっとここにも平和が訪れますから!」

バベル「殺した後は?」

女性A「そのときは、・・・バベル隊長がここのリーダーをやればいいんじゃないかな?私たちはサポートに回る。ね!みんなもそう思わない?」

兵士A「そうだな、そうしよう!バベル隊長、お願いできますよね!」

バベル「・・・。」


バベルは黙ったまま動かない。



バベル「いや、お断りさせてもらうよ。本当に酷いことをしているのであれば、俺が辞めさせよう。しかし、俺が同じように乱暴をしたらどうする?アニキさん達より強い俺に勝てるの?正直、外の世界に飛び出す方が未来は広がるよ。きっと。」




女性Aの表情が険しくなる。



女性A「はぁ?何言ってるか意味わかんないんですけど!」

兵士A「まあまあ、落ち着いて。」



女性A「そもそも、こんな新参者に任せようなんて提案、あんたが始めたんでしょ。コイツから私たちの作戦が漏れたらどうすんのよ!作戦に同意できないんなら殺しなさいよ。」

兵士A「いや、そういっても、助けてもらった命の恩人だし。・・・なぁ、」

クルマヤ「そうだよ。バベルさんを殺すとかできるわけないだろ!・・・返り討ちだよ。」

二人は、女性Aの威圧に負け、下を向いている。




バベル「わかった。じゃあ俺が、外に出ていきたい人を募って、第3勢力を作ろう!」


女性Aの逆鱗に触れたようだ。


女性A「お前、バカか!かよわい女性が外で生きていけるわけないだろ!いっぺん死んで来い!」

クルマヤ「おい、落ち着けよ!」

女性A「なに偉そうにいってんだ!」


クルマヤ「いいから、落ち着けっていってるだろ!・・・俺は、バベル隊長の意見に賛成する。隊長の言う通り、ここにいても争いは終わらない。俺たちが来た頃は、ここのシェルターの人数も多かっただろ。それなのに、いまは半分くらいになってる。おかしいと思わないのか?それに、外に出ることはできる。みんなD細胞を移植されているんだ。外に出ても生きていける。」


兵士A「俺もバベル隊長に着いていこうと思う。隊長はいい人そうだし、正直、ここで苦しんで生きるより、危険も多いだろうが、外での生活の方がいいかなって思ってる。」




女性A「・・・バカじゃないの?」


そういうと、女性Aは立ち上がり、部屋の入り口まで歩く。


女性A「ほら!あんたも帰るよ!」

そういうと、少女を睨みつける。

女性A「てめーも逆らうのか!誰が女にしてやったと思ってんだ!」

外の見張りが扉を開ける。



見張り「お前の声だけ、外まで聞こえてるぞ。熱くなりすぎだろ。」


女性A「ヒマワリ、てめー覚えてろよ!」


女性Aは、舌打ちをし、部屋を出た。

それを追うように、皆、出ていく。







残ったのは、バベルを含め5名(女の子1名)だった。

女の子は、D細胞の適合率が高まってるのか、左目がドラゴンの瞳になっていて、こめかみ付近の皮膚も硬質化してきているようだ。


バベル「・・・怒らせちゃった?」



クルマヤ「あの、・・・そうだ!せっかくだから、自己紹介しましょ。うん。それがいい!俺は、クルマヤ・マナブです。名前の通り、もともと整備士をやってました。じゃあ、次は、キヨ。キヨマサは、中学からの親友なんです。」

クルマヤは、好青年でハキハキと喋る。年も18~20くらいだろう。





次に指名された、キヨマサは、パーマの似合うジャニーズ風のイケメンだ。

キヨマサ「はい、本名は、アキハバラ・イクオです。みんなには、キヨマサって呼んでもらってます。ちょっと名前がレアなんで、すみません。ちなみに、仕事は清掃車の運転をしてました。じゃあ、次はレイさん。」





次に指名された、レイ(兵士A)は、ぽっちゃり系男子という感じだ。すこしピチピチしたシャツを着ている。胸にあるロゴが、胴長の動物になっている。

レイ「バベルさん、よろしくお願いします。アンドウ・レイです!みんなからは、運転免許証をコンプリートしてるからかな・・・?雰囲気が似てるからかな・・・?

アムロ!って呼ばれてます。職業は、プランターの整備技師でした。最後は、クマノちゃん!」




クマノ「ヨロシクお願いします。クマノ・ヒマワリです。来年中学生になるはずでした。」




バベル「みんなよろしく!クルマヤ、キヨマサ、アフロ、ヒマワリ!」

そういって、みんなと握手する。



アフロ「・・・あれ、聞き間違いかな?バベルさん?」

バベル「アフロ、どうした?」


キヨマサ「もういいじゃないですか。アフロさん。」

クルマヤ「そうだね。アフロさん。」

ヒマワリは、少し笑っている。



クルマヤ「バベル隊長、この4人が隊長にお供します。他にも着いてくるっていう人はいると思うんですが、大丈夫ですか?」


バベル「ああ、車さえ見つかれば、問題ないと思うよ。」



キヨマサ「それなら任せて下さい!ちょっと離れた場所に隠してあります。」

アフロ「では、明日、墓を掘りに行くときに、一人だけ残して車を取りに行きましょうか。それだったら、外に出ても怪しまれないし。」

クルマヤ「そうだね!どうせ、明日はこの3人になるだろうから!」



バベルが、浮かない顔をしている。

バベル「じゃあ、墓堀が1名になるってこと?」

ヒマワリ「そういうことですかね?女の子の為にも、掘ってあげた方がいいと思うけど・・・。」

アフロ「いや、それは、ちょっと・・・。」



4人は、アフロ(兵士A・自称アムロ)を見る。




キヨマサ「アフロさん、あきらめるしかないでしょ。」

アフロ「ああ・・・。アフロ、行きます!」



クルマヤだけ、大爆笑している。

他の3人には、伝わらないギャグだったようだ。








その日は、クルマヤたちの部屋で作戦会議をし、その後、休ませてもらった。





【作戦会議の結果】

1・明日、墓を作りに行く際、車を取りに向かう。そこで、整備士のクルマヤに、認証システムとGPSなど、位置が把握される可能性があるものをすべて外してもらう。(2時間程度あれば、全て外せるそうだ。)

2・車を移動させ、シェルターに戻る。その時に、バベルのバイクも運ぶ。

3・墓を作っている間に、キヨマサとヒマワリは、外に出たい仲間を募る。

4・全員が合流し、バベルが囮になっている間に、車両に乗り込み、ひとまず西へ移動する。

5・その後、西の高速道路入り口近くにある、ヒマワリ畑で合流する。

注意点・アニキとタンクトップはD細胞の変異体になり、細胞の適合率が90%近くあるが、意識を失っていないそうだ。D細胞の適合率が高いので、他の兵士よりも強力な力を持つらしい。




注意点を聞いておいてよかった。
今回の作戦は、バベルの囮以外、特に問題ない作戦だろう。
明日、早急に動くのは、女性Aたちも警戒する必要があるからだ。














~翌朝~

3人は、シェルター入り口に向かった。

そこには、兵士Bの遺体と共に、女の子の姿があった。

コブン「ああ、来たか。今日の墓作りは、この子も連れてやってくれ、アニキから許可がでてる。」

アフロ「えっ、でも外は危険もあるかもしれませんよ。あまり近くに埋めると、匂いでドラゴンを引き付けるかもしれないから、遠くに埋めてあげようと思ったんですけど。」

コブン「別に構わないだろ。強い戦士もいるわけだし、それとも、せっかくアニキに頼んでやったのに、俺の頼みが聞けないってのか!」

クルマヤ「いえ、そんなことは。バベルさん、大丈夫ですよね。俺らが守ればいいだけだから。」

バベル「そうだな。万が一、襲われた時は、俺が守るから大丈夫だ。」

そういって、女の子と手をつなぐ。


コブン「なら、もう一人増えても問題ないよな?」

アフロ「もう一人?」

コブン「姉さん!大丈夫そうですよ。」


タンクトップがやってきた。




バベル「アネさん?」

タンクトップ「あら、よろしくね!」

コブン「お前らはスコップもって大変だろ。銃は姉さんだけが持ってって護衛してくれるそうだ。」

バベル「よろしく、アネさん。」

そういって無警戒に握手する。


タンクトップ「まあ、ちゃんと礼儀をわきまえてる感じが好印象ね!」

バベル「掘るのも手伝ってくれたら助かるのに。」

タンクトップ「あらー、掘ってほしいの?」

バベル「ええ、できれば。」

そういって笑顔をみせる。




タンクトップがコブンを睨む。

タンクトップ「おい、てめ、ガセじゃねーんだろうな。」


コブンが慌てて咳をする。

コブン「ゴホッゴホッ!大丈夫。カゼじゃないです。カゼじゃないから、ゴホゴホ・・・。」




このとき、バベル以外の二人は同じことを考えていた。




バレてる以前に、バベルさんの空気読まない感は凄いと!








 ~ to be continued







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