龍慶日記

黒山羊

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ケイト編

~新章・第十三節~ 新天地

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~集合場所~


バベルが集合場所に到着すると、皆もすでに到着していた。

パオが、バベルの元に走り寄ってくる。



パオは、泣いていたのか、目が赤い。

パオ「心配したんだぞ!まさかの単独行動とはね。」

バベル「そういう意味かと思ってた。」

そういってバベルは笑って見せる。

パオも笑い返す。


バベル「大型の機械まで向こうの橋付近に来ていた。ここに長居すると危険かもしれない。先を急ごう」

パオ「そうだね。なんとか今日中には、目的地まで到着できると思うけど。」

副隊長「パオさん、そろそろ目的地を教えてもらえますか?」

パオ「そうだなー・・・。」

パオはバベルを見る。



バベルは、笑顔で答える。

バベル「南だ!さあ、出発しよう。」

パオ「・・・だそうだ。道の状況にもよるが、4~5時間もあれば到着できるだろう。」

副隊長「ああ、なんとなく分かりました。」


全員車両に乗り込み、一団は移動を開始する。








~5時間後~

途中、ルートの変更はあったようだが、目的地に到着した。

夜間のバイクは、寒く冷え込み、辛いものであった。

トラックの荷台に乗っている人も同じだろう。




バベルは、バイクの機動力を生かし、周囲を索敵し戻ってくる。

パオ「どうだった?」

バベル「ドラゴンの気配も、機械たちもいないようだね。」

副隊長「では、この付近の宿に泊まりましょうか。」



3人は、比較的被害の少ない旅館を拠点にすることにした。

旅館には温泉も湧いているので、冷え切った体を温めれそうだ。







~男湯大浴場~

温泉は広く、休憩し落ち着いてものから入浴している。

バベルも装備の確認を終えると風呂場へと移動した。


バベルの後を追うように、副隊長を含め数名ついてきている。


洗い場でお湯をかぶっていると、副隊長が声をかけてきた。

副隊長「隊長は今までどれだけの戦闘を繰り返してきたんですか?」


頭を洗いながら答える。

バベル「覚えてる限りでは、この1か月で、研究所近くのドラゴンとの戦闘が、12回くらいだったかな?それから、自立戦闘型機械との戦闘が2回。あとは、ドラゴン犬との戦闘が10回くらい?最後は、今日のタイヤ機械と大型の自立戦闘型機械の戦闘が1回。」

バベル「ああ、昨日も中型のドラゴンと戦かったな。乗ってきたバスぐらいのやつ。」


風呂場にいた人たちが集まってくる。


老人「隊長は、休む暇なく、みんなの為に戦っとるんですね。体は大丈夫ですか?」

バベル「全然なんともないですよ。」


副隊長「そんなに戦闘を繰り返してるんですか!そりゃ、俺なんかが歯向かって助かるわけがないや。」

バベルが笑うと、みんな大笑いする。


男性「でも、隊長は背中の古傷以外、一切傷を負ってないんですね。さすがだ!」

バベルは背中に手を回す。

触ってみると、確かに何かに切られたような傷跡がある。

バベル「なんだろう?」


一同「そんな大きな傷、普通だったら痛みで一生忘れませんよ!」

老人「隊長は、怖い方だと思っとりましたが、よか男だ!」

風呂場は笑い声がこだまし、皆、楽しそうにしている。






バベルは、湯船につかり、傷の事を考えていた。

副隊長「隊長、どうしたんですか?」

バベル「いや、この傷の事を思い出せないんだ。何か、重要なことを忘れてる気がする。」

副隊長「ドラゴンからやられた傷じゃないんですか?」

バベル「いや、違うと思う。何か、もっと大切な・・・。まあいいや、」

副隊長「そうですよ、過去の傷なんか思い出したってしょうがないですからね。」


副隊長「俺も、昔の女に腹を刺されたことがありましたけど、いまでもその傷をみると、嫌な思い出がよみがえってきますよ。」

そういって、へその下の傷跡を・・・。嫌なモノを見せてくる。



バベルは、変なモノをみたからか、頭痛と吐き気がしたので、風呂を上がることにした。





部屋に帰ると、パオが待っていた。

バベル「どうしたの?お化けでもでた?」

パオ「いや、アスカの体を拭いてあげないとって思って。うん。そう、私がね。」



バベル「ああ、助かるよ。何か手伝おっか?」

パオ「いや、いい。大丈夫。君は向こう向いてて。」


静かな室内に衣服の擦れる音がする。


パオ「ねえ、変なこと聞いてもいい?」

バベル「今日の風呂場での事件?」

パオ「なにそれ?いや、気になるけど、違う。」

バベル「いいよ。何かあったの?」

パオ「いや、ほら、私と出会う前なんだけど、バベルがアスカの、その、ほら、」


意を決したように、パオが話し始める。

パオ「・・・体を拭いてあげたりしてたの?だってアスカ、とっても綺麗だし。」





バベル「いや。メディカルマシーンに入れっぱなしだったよ。リルムも機械だから何もしてなかったと思うけど。」

パオ「えっ!?」

バベル「アスカがキレイになってたのは、メディカルマシーンの効果なんじゃない?」

パオ「えぇ!そんな美容効果があるの!廃棄せずにとっておけばよかったかも!」


パオの声が元気になる。


パオ「では、さっきの風呂場の事件を聞くとするかな。」

バベル「いや、実は副隊長が・・・。」

パオは、大うけしていた。



パオがアスカの衣服を着せ終わり冗談っぽく言う。

パオ「隊長、完了です。」

バベル「了解!」

そういって振り向くバベル。


パオ「そういえば、アスカの腹部にも刺されたような傷があるよ。知らなかったでしょ。」

バベル「アスカにも傷があるんだ。」

パオ「昔の男問題だったりして・・・。」


パオ「どうしたの、・・・あの、ごめん。言い過ぎたかも。」

徐々に、険しい顔になるバベル。






バベル「やっとアスカのこと、思い出した。アスカの魂を破壊したのは、俺だった・・・。」

バベルの目から涙が溢れる。





パオ「どうしたのいったい?大丈夫?」


「アスカ・・・ごめん・・・。」


パオが優しく抱きしめる。

パオの腕の中で、彼は泣き続けた。













~翌朝~

パオが目覚めると、そこにバベルの姿はなかった。










パオは、後ろを振り返る。

アスカは、眠ったままだ。


そのまま立ち上がると、1階のフロントで見張りをしていた人に声をかけた。



パオ「隊長は!バベル隊長はどこ!」



男性「夜遅くに、刀を持って外に出ていったらしいですけど。」





パオは、裸足のまま外に飛び出す。




その様子を見ていた副隊長が、慌てて駆け寄る。

副隊長「パオさん、一体どうしたんですか!?」





パオ「彼が、彼が・・・。」





パオの目から涙が止まらない。












副隊長「隊長ー!パオさんが泣いてますよ。どうしたんですかー!」

大きな声で呼びかける副隊長。



バベル「あーいま行くー!ちょっと待っててー。」

大きな声で返事をするバベル。



パオは振り返る。




駐車場の隅で、バベルは、日本刀を持って何かしているようだが。


副隊長「パオさんには、内緒って言ってたんですけど、バレちゃってますよね。」


バベル「もういいよー!こっちきてー!」


副隊長「分かりましたー!」


副隊長「パオさん、隊長からプレゼントがあるみたいですよ。」



パオは涙を拭い、バベルの元に近づく。



バベルの横にいた老人が言う。

老人「わしが指導できるから、始動した計画だったんですぞ!」


バベルも笑顔でパオを迎える。

バベル「おはよ!昨日もありがと。いつもお世話になってる御礼に作ってみたんだ。」


パオの目から、また涙がこぼれる。

パオ「ありがと。うれしい。」




寒空の下、そこには氷の彫刻があった。

その彫刻は、とても美しく輝いていた。



副隊長「これ、隊長が作ったんですか!?」

男性「プロの領域じゃないですか!」


女の子「ママー!あの氷みてー!」

女性「ほんと、きれいね。」


いつの間にか、外に人が集まってきた。




バベル「さて、この近くにドラゴンはもういない。」

副隊長「どういうことですか?」

バベル「暗いうちに、空から見つけ出し、撃破しておいた。」

パオ「!!?」


バベル「それから、周囲に機械たちの姿も見えない。」


バベル「それに、地熱で気候は温暖。食物も育っている。つまり、ここは安全だ。」





バベルは、両手を広げ、大きな声で叫ぶ!



バベル「みんな!新天地へようこそ!いまココに、バベルが宣言しよう!
この火山があり、気候穏やかな土地こそが、我々人類の楽園になると!」



「おおおおおお!バベル隊長ぉぉぉ!」
「もう、ドラゴンに襲われる心配もないんだー!」
「やったー!」



辺りに歓喜の声がこだまする。






バベルが再度、こぶしを上げる。



歓声が止まり、朝の静寂に包まれる。





こぶしを下げ、バベルが語る。


バベル「私は、他に生き残った仲間を連れてこなければならない。しばらくの間、留守になる。その間は、パオに従い、私が戻るまでの間、未来のため、子供たちの為に、この土地をよりよく発展させてもらいたい。みんな、私に・・・。パオに協力してやってくれ!」


一斉に拍手が鳴り響く。







バベル「パオ、副隊長、君たちに、僕が戻るまでここの管理と防衛を任せたい。」


パオ「バベルはどうするの?」

バベル「迷彩服たちを迎えに行かなきゃいけないでしょ。ちゃんと戻ってくるよ。それまで、アスカを宜しく頼むね。こんなことお願いできるのは、パオしかいないから。」


パオ「うん。バベル、気を付けてね。」



バベルは、バイクのエンジンをかけた。


バベル「じゃあ、行ってきまーす。」






あっという間に、バベルの姿が見えなくなる。


パオ「けっこう別れ際がさっぱりしてたね。」


副隊長「昨日、温泉から出るときも、さっと上がってしまいましたよ。性格なんですかね。」




パオ「さあ?彼っぽくていいんじゃない。」








 ~ to be continued






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