龍慶日記

黒山羊

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ケイト編

~新章・第六節~

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~見張り~

バベルは、迷彩服と見張りを代わり、バスの屋根に上る。

外は冷える。







待っていた兵士「バベル隊長、おつかれさまでーす。」

バベル「お疲れ様、確か、ニノミヤだったかな?宜しく!」




ニノミヤ「そうっす、俺、ニノミヤって言います。」


ニノミヤ「バベル隊長も、俺たちと同じ一般人だったんすか?」

バベル「?」




ニノミヤ「俺、もともと、飲食店でバイトしてたんすよ、で、こんなことになって、送ってもらったところで、店長と一緒にシェルターに逃げたんすけど、姉ちゃんと父ちゃんが、シェルターに入るの、全然間に合わなくて、で、こーなったんすよ。」



なんとなく言ってることは分かるが・・・。


バベル「うん。大変だったね。えっと、俺は、この数日間の記憶はあるけど、それ以前の記憶はほとんどないんだ。だから、一般人だったのかどうかは、分からない。銃器の扱い方が分かるから、もしかしたら軍人だったのかもしれない。それすらも分からない状態なんっすよ。」

とりあえず、語尾を合わせた。



ニノミヤ「本気っすか!やベっすね!っか、クールじゃないっすか!やっぱ隊長は、やりますねー!」

バベル「うんっす。お母さんは?」




ニノミヤ「母ちゃんっすか?母ちゃんは、俺が中学の時に、チャリンコとぶつかって、2、3日して死んじゃったんすよ。相手、チャリっすよ、どこのチャリとか、誰とぶつかったとか、まったく聞いてなくて、ただ死んだだけっす。もう3年くらい前っすけど、やっぱ思い出すとつらいっすね。」

バベル「つらいってことは、いいお母さんだったんだろ。」



ニノミヤ「へへっ、そうっすね、俺、中学んとき、いじめられてて、学校まったく行ってなかったんすけど、母ちゃんはいつも味方でしたね。でも母ちゃん死んでから、本気で一人になった感じして、街の飲食店でバイトはじめたんすよ。母ちゃんの友達の店だったんで、年ごまかして使ってもらってたんすけど。」

へんな喋り方だし、ピアスの数も凄くて、変わった奴だと思っていたが、ニノミヤは、いい奴だった。


ニノミヤ「でも、本気バベル隊長についてこれてよかったっす。母ちゃんがいつも言ってたんすよ。あんたは根はいい子だから、人の役に立つ仕事しなさいって、世界を救うなんて、本気ヒーローじゃないっすか!」


バベル「だな。マジヒーローだな。」


他にもニノミヤは、いろいろ話をしていた。

いままで、誰も話を聞いてくれなかったのか、交代の時間まで、楽しそうに話をしていた。






見張りはしていなかったが・・・。










~パオの車~



バベルは、持っていた合鍵で助手席のドアを開けて車内に入る。

やはり寒い。


運転席に、パオの姿はなく、後部座席のアスカの横で寝ている。

二人寄り添えば温かいからだろう。


バベルは、自分の毛布を後部座席の二人にかけた。




パオ「バベル、おかえり。」

バベル「ただいま、パオ。待っててくれて、ありがと。」


パオ「私、寝てたよ。」

バベル「知ってる。でも、起きてくれたでしょ。」

パオ「うん。おやすみ、バベル。」


バベル「おやすみ、パオ。」













~早朝~

パオがバベルを起こす。



バベル「おはよ!パオ」

パオ「寝起き抜群にいいね。昨日は毛布ありがと。君は寒くなかったの?」



バベル「うん。あまり。皮膚の表面は寒く感じるんだけど、体の芯は温まってるんだよね。いつも。」

パオ「左腕の機能かな?生命維持装置か何か。」

パオは、難しい顔で考えている。



バベル「便利機能だね!パオのお父さんに感謝。」


パオが笑顔になる。

パオ「うん。だね。」


パオ「一応、隊長なんだし、点呼を取ったり、状況の確認をした方がいいんじゃない?」


バベル「うん。そうするっす。」

パオ「?」





バベルは、バスに向かう。


まだ何人か寝ているがしかたないだろう。

ニノミヤも、バベルの予想どおり、まだ寝ていた。

バベルが車内に入ると、一人の兵士が近づいてくる。


兵士「バベル隊長、自分は、ゴトウといいます。一般人ではありますが、こういった戦場の旅にあこがれていました。隊長や、副隊長のサポートをしていきますので、宜しくお願いします!」


バベルは、ゴトウの話し方につられる。

バベル「了解、では、ゴトウ隊員に任務を与える。バス内の人数の確認と、報告事項があれば報告事項を、出発までに報告してくれ!」

ゴトウ「了解!!!」

ゴトウの返事が、ニノミヤ以外の起床の合図になったようだ。





迷彩服「隊長、何やってるんですか。」

迷彩服が笑っている。現れた。


ゴトウ「タナカ副隊長、笑わないで下さいよ!点呼は、重要な任務ですから。」

迷彩服(タナカ)「分かってるよ、現場でも点呼と体操は重要だったから。」


迷彩服「隊長、今日から運転は、ナナセに引き継がせたいんですが?もともと整備士だったみたいで、運転技術もしっかりしてます。」

バベル「了解、副隊長に任せるよ。ナナセ、食事をとったら出発しよう。何か伝えたいことがある場合は、パッシングで合図を送ってくれ!今日は、シェルターの解放に向かう予定だ。」

ナナセ「はい。隊長。」


ゴトウ「バベル隊長!点呼完了しました。昨日は異常なし、特に動くものの気配もなかったそうです。」

バベル「了解、明日も頼む。」

ゴトウ「了解!」


バベルはパオの車両に戻る。




パオ「うまくいったみたいだね。」

バベル「うん。なんとかね。」


パオは、後ろを確認して、車を進ませた。










山道を抜ければ、シェルターがあるそうだ。

パオはずっと不思議そうな顔をしている。


バベル「パオ、どうしたんだ?」

パオ「いや、ずっと気になっていたんだけど、世界は放射能で汚染されているでしょ。でも、そこまで被害が大きくないんだよね。予想よりずっと。もっと、山が燃えてたり、街は崩壊していて、ヒャッハーな感じでもいいのに、まったくそんなことはない。バベルのいた研究所付近はどうだった?」

バベル「町の方は、それこそ瓦礫の山だったけど、森が燃えたりはなかったかな。一部分だけ木がなくなってる山もあったけど。」

パオ「それが、おかしいんだよ。理論上の破壊力と実際の影響が、まったく合わない。いったい何が起こってるんだ?」

バベル「ちょうど、ドラゴンに命中したとかじゃないの?」

パオ「なるほど、面白い見解だね。」

バベル「前見てよ前、道の先に野犬の群れがいるよ!」

パオ「!」




パオは、慌てて左によけて、ブレーキを踏む!バスは右から追い越すように、横向きに止まる。


パオ「バベル!様子がおかしい、あれ、犬じゃないよ!」




バベルは、銃を持ち、飛び出した。





一斉に、犬のような生物が襲ってくる!


ダダダダダダダダダダ!





バベルが、バスの先頭に立ち、銃を放つ。

バベル「敵だ!弾幕を張れ!敵を近づけるな!」


兵士たちも、バスの窓を開け、銃を撃つ!



迷彩服「なんだ、ありゃ?ドラゴンの変種か?」

ゴトウ「ウォォォォォ!!!!!」




弾幕を張り、敵を近づけない作戦は、成功した。

犬のような生物は、30匹はいただろう、一網打尽にすることができた。


バベル「ドラゴン犬だな。」

迷彩服「ドラゴン犬ですか?」

バベル「そう、犬なんだけど、ドラゴンみたいに多種多様だし、異様だ。」

ニノミヤ「本気パネーっすね!」


パオ「バベル!急いで車に乗って!すぐにここを通過しよう!いまの銃声で集まってくるといけない!」


バベルは、車に駆け込む。



車を走らせると、後方から、ドラゴン犬の群れが追いかけてくる。

バスは、迷彩服の指示で、窓から後ろを攻撃し、ドラゴン犬の追撃を逃れた。















~2時間後 シェルター前~

パオがシェルターのパネルを操作する。


ドアが開く。





シェルターの中には、避難していた人々が大勢いた。

男性A「外は安全なのか?」

女性A「もう出ても大丈夫なの?」



パオ「みなさん、私たちは、みなさんを救いに来ました。落ち着いて話を聞いてください。」


男性B「外の様子を見せてくれ!」

男性C「そこをどいてくれ、家に帰らないと、母が待ってるんだ!」



パン!








ゴトウ「動くな!そのまま、床に膝をつけろ!」


女性B「横暴よ!私たちがいったい何をしたっていうの!誰か!警察を呼んで!」






パンパンパン!

ゴトウ「次は当てるぞ!女だからって撃たれないと思うなよ!」






バベルが膝をつく、















パオ「ゴトウ隊員、隊長に跳弾が当たっているようだが・・・。」



・・・ゴトウの顔から血の気が引く。




男性B「本物の銃だ!仲間を撃ってるぞ!」





パオ「バベル、そのまま、うずくまっていてくれ。」


シェルター内の人々は、膝を床につけ始める。





パオ「みな、落ち着いたかな?私たちは、第9シェルターから来た生き残りである。第9シェルターは、ドラゴンではなく、機械に襲われ壊滅した。逃げようにも、シェルターの外は、放射能の汚染もあり、外に出るだけで命はつきる。しかし、私たちが持ってきたワクチンで、放射能汚染に耐えれるようになる。ワクチンは潤沢にあり、全員を受けさせることができる。ただ効果が確認されるまで、5日ほどかかるので、その間、ここに滞在させてもらいたい。

もちろん、私たちを信じる必要はない、外に行きたければ行ってもらっても構わない。しかし、放射能で汚染された後に来ても、その命を救える可能性は下がるので、今から外に出ていく人間には、絶対にワクチンは使わない。

最後に、不安もあるだろうが、質問は、ワクチンを接種するときに、一人10秒以内で許可する。それ以外の質問の答えは、全て銃弾になると思ってくれ。以上」


もちろん、質問をする声は上がらない。




パオは、バベルを介抱するふりをして、シェルターの入り口に向かい、ワクチンの入ったケースを取りに行く。




ワクチンケースを持ってくると、全員に、針のない注射器で、ワクチンを投与し始めた。


見慣れない機械だが、パオに確認すると、ワクチンを高圧で吹き付け皮膚から注入する機械だそうだ。





全員のワクチン投与が終わったのは、質問もあったりで、21時を回っていた。










 ~ to be continued







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