龍慶日記

黒山羊

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ケイト編

第二話 ~衝撃の行方~

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~作戦会議室~


中将(白髪の男)「よくきた!ケイトくん、君に協力してもら・・・・。」

ケイト心の声(ムラサメ・ゴエモン!?)





中将「で、あるからして、我々の作戦には、君の素晴らしい・・・・。」

ケイト心の声(素晴らしい?ゴエモンって名前、素晴らしいかも。)





中将「ということなんだよ。私が注目する、君の中に眠る・・・・。」

ケイト心の声(眠る?ゴエモン、目覚める力で、キセル使ったり、銃弾を切ったりするのかな?)





中将「そこでだ!ケイトくん、君に協力してもらいたい!」

ケイト心の声(ゴエモンって名前に、なったんだろう?由来は何だろう?やっぱり・・・。)






中将「一般市民の君に無理を言うようで申し訳ないが、お願いできないだろうか。」

ケイト「・・・。」
ケイトは難しい顔で、ゴエモンを見る。




会議室内に緊張が走る。
他の将校も、ケイトの言動を、中将の次の一手を固唾を飲んで見守る。




ムラサメ「ケイトくん、ぜひ協力してほしい。頼む。」


ケイト心の声(そうか!ムラサメさん、産まれたころの髪型がボンバーヘッドだったんだな!)

ケイト「わかりました!謎は全て解けました!」




会議室の将校が一斉にケイトを見る!


中将は、立ち上がり拍手を始めた。

中将「すばらしい!さすが研究所でD細胞実験に協力した人だ!神がかりの身体能力だけでなく、聡明な頭脳も兼ね備えているとは!」

他の将校も一斉に立ち上がり拍手を始めた。



ムラサメ「ありがとう!」

ムラサメに至っては、3階級特進もあり、緊張していたんだろうか、ケイトの返事で涙まで流している。


ケイト心の声(あれ?ムラサメ・ゴエモンの名前の話じゃなさそうだな。本人も泣いちゃってるし・・・。どうしよう・・・。)


中将「理解し即断してくれた君に、私からのささやかなプレゼントを渡そう。君たちソロモン研究所のD細胞の人体実験には目をつぶろう。さらに、今回、ソロモンよりD細胞移植実験のデータを持ち出してくれれば、ムラサメ大尉は少将に、ケイト君には大尉に、それぞれ任命したいと思う。ムラサメ大尉は大幅な特進となるが、気にすることはない。それだけ、今回の任務の重要性をわかってもらいたい!」


ケイト心の声(D細胞の人体実験ってなんだっけ?そもそも、そんな資料ってあるのか?)

ムラサメが、ケイトの腕を引く。

ムラサメ「さあ、外に出よう。」
























~休息所~



部屋に戻ってくる最中も、ムラサメの頬は、ゆるんでいた。

ケイト「ムラサメさん、」

ムラサメ「なんだい、ケイトくん。」

ケイト「あの、これから何すればいいんですかね?」




ムラサメの表情が強張る。




ムラサメ「まさか・・・、中将の話を理解していなかったのか!?それとも、ただ作戦について確認しておきたいのか!?」

明らかに、ムラサメは、中将の話を理解していなかっただろう!と言いたそうだ・・・。
ケイトは、空気を読む。

ケイト「まさか!今後の作戦を確認しておきたくって・・・。」

ムラサメが安堵の表情になる。



ムラサメ「そうか、すまない。今回は、ソロモン研究所を確認後、バベル研究所に行こうと思っている。バベルは比較的内部構造が分かっているため、後回しでも大丈夫だろう。」

ケイト「ソロモンで僕が死ぬかもしれないってことですね!」

ケイトの笑顔での回答に、部屋にいた、ハゲ・・・。ハギが笑っている。



ムラサメ「いや、それはない。君は兄が助けた人物だ、そんな君を殺してしまっては、あの世で兄に合わす顔がない。」

ケイト「兄・・・。研究所のムラサメさんは、弟ではなく、実の兄なんですか!義理の兄とかではなく?」

ムラサメ「実の兄だが、なにか?」



ケイト「いえ、研究所のムラサメさんは、28歳って言ってたから。」

ソロモン研究所で出会った、スパイ(ムラサメ兄)の事を思い出した。

ケイト心の声(たしか、僕よりも10年長生きしたとか言ってたから、間違いないだろう。)


ハギ「ムラサメ大尉は落ち着いて見えるから、お兄さんが弟のようにみえたんだろ!」





ケイト心の声(図星だ!だが、収穫もあった。≪落ち着いてみえる≫いい表現だ、困ったらコレを使おう。)





ケイト「ええ、ムラサメさん、落ち着いてみえるので、だいぶ年上に感じてました。」

ムラサメ「はははっ!こう見えて、まだ21だから。」


ケイト「嘘だ~!どう見ても30代前半にしか見えなかった。」
心の声が口に出る。

ムラサメもハギも笑ってる。

ハギ「それを言うなら、俺なんか凄いぜ!いくつに見える?」




ケイト「お、お、落ち着いて見えるから、40歳くらいかな?」
だいぶサバを読んだ。ハギさんに関しては、中将と同じくらいだと思っていた。

ハギ「そりゃないよ!俺まだ、23だぜ!ムラサメ大尉、残念な結果になってしまいました。」

ムラサメ「ドラゴンの襲来で、一気に老けたからな。」

そういいながら、二人は大笑いしている。




大笑いしていた、ムラサメが急に真面目な顔になって、ケイトに語り掛ける。

ムラサメ「ケイトくん、それだけ、今回の任務は危険を伴うってことだ。大丈夫かい?」

ケイト「はい!」




ムラサメ「ソロモン突入開始は明日の朝だ、何か意見は?」


ケイト「ちょっといいですか?研究所が襲来にあったのは、午前中でした。僕が研究所に入ったのは、4時過ぎくらい。その時間、ドラゴンたちは、ほとんど動きがない状態でした。7階にたどり着いたのは、大体5時半頃、そこからドラゴンの動きが活発になっていきました。」

ハギ「隊長、あのとき、ドラゴンに襲われ始めたのは、」

ムラサメ「17:09、突入の時刻を見直そう。ケイトくん、助言ありがとう。」

ハギ「では、明日の07:00に基地に集合ですね。」

ムラサメ「そうだな。明日に備えて、休養を取るように伝えてくれ。」



ハギが、部屋を出る。


ムラサメ「君は、ホテルに泊まってることになってるから、外に出ることはできないが、我慢してくれ。」

ケイト「はい。」

ムラサメ「それと、休息所内は自由に見て回って構わないよ。部屋から出て突き当りまで行けばシャワールームもある。共有のシャワールームは、時間帯で決まっているのだが、夜間は君以外、誰もいなくなると思うから気にせずに使ってくれ。」

ムラサメも部屋を出ようとするが、何かを思い出したように立ち止まる。


ムラサメ「そうそう、晩飯は準備させるが、腹が減ったら、このカップ麺を食べるといい。」

そういうと、ムラサメは自分の荷物から、カップ麺を2つ置いていった。


ケイト「ムラサメさん、ありがとうございます。」



ここの基地の存在をホープに知られるわけにはいかないのだろう。夜間は一人で宿泊になりそうだ。




準備したもらった晩御飯は、量もあり、味も美味しかった。
ケイトは、シャワーを浴び、何もすることがないので、眠りにつくことにした。












~夜~

キュルルルル。


おなかが空いて目が覚めた。


ケイト「あっ!カップ麺!」
備えあれば憂いなし。






・・・しかし、お湯がない。




シャワーで作れってことか?
給湯室を探すときに、センサーに引っかかったらどうしよう。とか、考えるうちに、もうどうでもよくなってきた。




よし!シャワーで作ろう。






ケイトがシャワールームに向かう。




シャーーーーー。



誰かがシャワーを浴びているのか?
ちょうどよかったお湯が入れてもらえる。




ケイト「はいりまーす。」





カップ麺を片手に、シャワールームに入っていった。
床が濡れているので滑らないように気を付ける。



ケイト「すいません。コレ」

そういって、カップ麺を差し出し、顔をあげると、見たことのある顔だ。







アスカ「あの、誰もいないと思って・・・。ごめんなさい。」



顔を真っ赤にして体を隠しているが、まったく隠れていない。
着やせするタイプみたいだが。





ケイト心の声(何かフォローしなくては!)





ケイト「えっと、その、落ち着いて見えますね・・・。」


アスカ「キャーーーーーーー!」
その場に座り込む。


ケイト心の声(しまった!落ち着いて見てどうするんだ!)


ケイトはカップ麺を落として逃げ出した。











~15分後~


ケイトは、正座して、奥の壁のシミを見ている・・・。



ガチャ。扉が開く。




アスカ「ケイトさん、先程は、取り乱してしまい、申し訳ありません。」

そういいながら、蓋のあいたカップ麺を持ったアスカが入ってきた。


ケイトは、壁のシミを見るのをやめて振り返る。

髪が、まだ乾いていない。髪を乾かす前に、お湯を入れてきてくれたのか。

部屋の入り口から、シャンプーのいい香りと、とんこつラーメンのいい匂いが流れてくる。
完全にミスマッチだ。




アスカ「壁を見ながら、反省ですか?」

ケイト「なぜ?」

アスカ「そうですよね。私が規則を破り、既定の時間を過ぎてシャワーを浴びたことに非があります。すみませんでした。」


ケイト「いや、壁のシミが、ウサギに見えるなーって見てただけだから。それに、あやまる必要ないよ。こちらこそ、すみませんでした。」
そういって、頭を下げる。

床で正座して頭を下げたため、土下座のようになった。


アスカ「いえ、そんな、頭を上げてください。」
アスカは慌てている。

アスカ「その、お詫びと言っては何ですが、私にできることがあればと思って・・・。」

ケイト「そんなの、いいですよ。もう1個カップ麺あるから。一緒に食べませんか?」

アスカは、笑っている。

アスカ「はい。ちょうど、おなかが空いてきたところでした。」



カップ麺を食べながら、アスカが質問してくる。



アスカ「ケイトさん、なぜ一般人のあなたが、危険な任務に参加するんですか。」

ケイト「モグモグ、なぜ?」
ケイト心の声(なぜって、なぜなんだろう?ゴエモンのこと考えてたなんて言ったら、怒られそうだし。)


アスカ「任務達成後の報酬とかですか?今日、ハギ曹長から聞きました。」

ケイト「いや、そんなんじゃないよ。別に大尉でなくてもいい。」


アスカ「なぜ?危険な任務ですよ、小さなミスで、命を落とすかもしれない。」

ケイト心の声(別に注意してれば大丈夫だったんだけどな。そんなに危ないのかな?やめようかな?)

アスカ「・・・。」
アスカは、ケイトを見つめる。
ケイトも、アスカを見つめる。



ケイト「僕は大丈夫だよ。注意が必要だけど。」






アスカ「あの、私、まだ出会ったばかりですから・・・。」

アスカの耳が赤くなる。




アスカ「一晩、考えさせて下さい。明日の集合前には答えを出します。」

ケイト「・・・? はい。待ってます。」

アスカが立ち上がる。
カップ麺、ごちそうさまでした。

そういうと足早に部屋を出る。


ケイト「トイレかな?」









~翌朝~

何やら部屋の外が騒がしい。


ムラサメ「急にそんなこと言われても、」

アスカ「私は作戦に必要なんです!ケイトさんも言ってました。」

ムラサメ「ケイトくんが?」

アスカ「はい!中尉が必要だ!とハッキリ!」

ムラサメ「いや、それは・・・。注意違いでは・・・。」

アスカ「何が違うんですか!本人に確認しに行きましょう!」




ケイト心の声(ヤバイ!何か争いに巻き込まれそうだ!)

とっさに布団をかぶるケイト、と同時に激しく扉が開く。



アスカ「ケイトさん!起きてください!昨日のこと、証言してください!」

ケイト心の声(昨日のこと?シャワールームの事件か?)

アスカが激しく布団を剥ぎ取る。



ケイト「おはようございます。」


アスカ「ケイトさん!私は必要ない人間ですか!?」

ケイト「必要ないだなんて、そんなこと絶対ないよ。」


勝ち誇った顔をして、入口に立っている、ムラサメを見る。

アスカ「ほら。」


ムラサメ「いや、今の聞き方、大問題だろ・・・。」

アスカ「大丈夫!こうみえて銃器の扱いと体力には自信があります!まったく問題ないです!」

ムラサメ「いや、そういう意味じゃないんだが・・・。」

ムラサメも断る言葉を選んでいる。どうやら、アスカは思い込みが激しいようだ。


そんな二人を横目に、ケイトは朝食を食べに部屋を出た・・・。




アスカ「ケイトさん、どこへ行くんですか!」

ケイト「あの、もう終わったのかと思ってた。」

アスカは、勝利を確信し、満面の笑みを浮かべた。


アスカ「ほら!私が参加する方向で終わったって思ってますよ。」


ムラサメ「分かった分かった、上に確認してくる。」

アスカ「大丈夫!手配済みです!」




ムラサメ「・・・。ああ、そうなんだね・・・。」



ムラサメも、あきらめた。









 ~ to be continued

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