龍慶日記

黒山羊

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リュウマ編

龍慶日記Z 第五節

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~第13シェルターへの道のり~

小雨になってるとはいえ、雨が降り注ぐ中での移動は時間もかかり、体力も奪われる。





エララ「薄暗くなってきたし、今日は休もうよ。」

リュウマ「そうだな。もしこの状態でバベルに遭遇すると危険だね。」


二人は、雨に濡れない場所を探した。







エララ「リュウマくーん!こっちこっち!」

君はエララに近づく、そこは二人には少し狭い空間があった。



エララ「この広さがあれば、暖もとれるし、くっついて座れば温まれるね!」

ちょっと狭い気もするけど、贅沢は言っていられない。君たちは、燃料を集め、ここで休むことにした。




君は、集めた燃料に、火をつけ・・・。火をつけ・・・。火をつ・・・。火を・・・。


燃料も濡れていたため、なかなか火がつかない。



エララ「こうするんだよ。」


そういうと、エララは燃料に向けて、人差し指を向けた。



リュウマ「ビームでもだすの?」

君は笑いながら質問する。


エララ「ううん。おまじないかな。」

リュウマ「おまじない?」




エララ「我、魂に命じる。燃料よ燃えろ!」

リュウマ「変なおまじないだ。」




ボッ!




リュウマ「!!!!!!」


目の前の燃料がいきなり炎を上げ燃え始めた。



リュウマ「どうやったの!?」

エララ「リュウマくんにだけ、こっそり教えてあげるね。私たちの周りにある、ドラゴンの魂に頼むんだよ。そうすると、魂がそのお願いを聞いてくれるの。」


お願い?頼む?完全に上から目線で命令をしていただけのような気がしたが、そこを指摘するのは、やめておこう。


リュウマ「私にも、できるかな?」

エララ「うん。リュウマくんは、魂に好かれてるから、絶対にできるよ。」

リュウマ「我、魂に命じる。火よ消えよ。」

口に出して言うと少しはずかしい。

・・・。

・・・。

・・・。



何も起こらない、かなり恥ずかしい。

君の心の火が消えそうだ。




エララ「?」



エララ「どの魂に、声をかけてるの?そこには誰もいないよ。いまのは練習?」


君の顔が赤くなっていく気がする。

リュウマ「いや、どこに誰がいるのかが分からないんだけど・・・。」


エララ「そうなんだ。だからか、だったら一緒にやればできるよ。」

そういうとエララが君の横にピタッとすわり、君の腕を持ち上げる。


エララ「いいよ。」

リュウマ「我、魂に命じる。火よ消えよ。」


プシュー。

炎は音を立て、煙を上げて消えていった。


エララ「ねっ!リュウマくんにもできたでしょ。」

そういって、君を見上げるエララが可愛く笑いかけた。


そのあとも何度か練習したが、一人ではうまくいかない。やはり魂が見えないことには、成功しないのか。
エララは、君の練習を、静かに、それでいて楽しそうに見守っている。





エララ「リュウマくん、明日はきっと、できるようになるよ。また一緒に練習しようね♪」

リュウマ「そうだね。できたら便利な能力だもんね。」


エララ「じゃあ、リュウマくんができるようになるまで、ずっとずーっと一緒だね。約束だよ!」


もし君がいなくなれば、エララは、リルムと戦うことを選択した時点から、独りぼっちなのだろう。

きっと寂しいに違いない。


それに君は、エララに・・・。



リュウマ「うん。ずっと一緒にいよう。もし、できるようになったとしても。」

エララ「うん。約束したからね!・・・うれしい、ありがと♪」




    「おやすみ、また明日ね。」




















~夜明け前~

雨音が止み、ふと目が覚めた。。。


エララは、何かに警戒している。


小声で君に話しかける。
エララ「リュウマくん。起きた?」

返事をしようにも、エララの小さな手が君の口をふさぐ。



君は、うなづく。





リルム「エララ、出てきなさい。隠れても無駄よ。出てこないなら、このまま付近一帯を攻撃するわよ。」

リルムの声が響き渡る。


仮面の男「リルム、無駄な攻撃はやめろ。」

リルム「バベルの声で、怒らないで。彼に怒られると、悲しくて回路がショートしちゃうから。」



仮面の男「・・・。」


リルム「それより、約束は破らないでよ。私が本気になれば、レダなんて人形、一撃で粉砕できるんだから。」

仮面の男「エララたちが近くにいるんだろ。無用な話はするな。」



リルム「エララは仕留めるわ。だから・・・。」

リルムの表情は変わらないが、声色が変化していく。



リルム「バベルの声を使うなって言ってんだろ!聞いてんのかホープ!」

リルムが激しく怒鳴りあげる。




エララが悲しそうな表情になる。
君は優しくエララを抱きしめた。



リュウマ「大丈夫。バベルも元はいい人みたいだし、仮面を破壊すれば、リルムも元に戻るよ。」

エララが小さくうなずく。




リュウマ「よし、作戦はこうだ、リルムの注意を私が引く、その間に、エララは二人の背後に回ってくれ。それから、二人であの仮面を奪いに行く。道具も何もないんだ。勝負に出るしかないと思うけど。」


エララは、君を見つめる。

エララ「ダメ。リュウマくんは、ここにいて。私一人なら、なんとかリルムを撃破して仮面を奪うことも可能だと思う。」


そういうと、リルムは君のみぞおちを強く叩いた。

一瞬、気を失いそうになる。



しかし、エララは手加減しすぎたのだろう。
君は何とか気力で気絶しないように保った。



だが、その一瞬でエララは飛び出した。


とっさに、リルムに足払いをかけ、転倒させる。と同時に、倒れてくるリルムの右側頭部に左拳を突き上げた。

リルムの、こめかみ付近に亀裂が入る。


リルムの状況処理速度を超える速度で、仮面の男の前に立った。


いけるか!





エララが、拳を突き出すのを確認して、仮面の男も拳を出す。

体の大きさの違いとか、経験の差とか、まったく関係がない。

仮面の男の拳は視認することができない。



エララの小さな体が宙を舞う。

エララは、君の隠れている場所の近くまで飛ばされてきた。




仮面の男「思ったより、動きの鈍い体だな。」

すべての状況を把握し終わったリルムが、エララに駆け寄る。



君はとっさに、飛び出し、エララを庇った。




仮面の男「リルム、やめろー!」



動きを止めるリルム、そして仮面の男をみる。


冷静な、見下したような声で仮面の男に言う。

リルム「約束が違うじゃない。」

仮面の男「・・・。」

仮面の男「約束は、守っている。止めは私がさす。」

リルム「紛らわしいわ。」


仮面の男は、君に近づき、君に命令する。

仮面の男「どけ!」

リュウマ「・・・。」

リュウマ「エララは渡さない。エララは私の大切な家族だ。」


仮面の男が小刻みに震えている。

仮面の男「どけー!」

そう怒鳴ると、腰の突剣を素早く抜き、君めがけて突き立てた!






一瞬、何が起こったか分からなかった。





右目が激しく痛む。







右の視界が消えた。






だが、痛み以上の感情が君を支配する・・・。







リュウマ「エララ?」



君を庇うため、君の前に立つエララ、




エララのおかげで、突剣の刃は逸れ、君の視力を奪うだけに留まった。





リュウマ「エララ?なぜ・・・。」


刃を通して、微量の電気が流れてくる。。。

電気の痺れも徐々に弱くなる。



エララ?なぜなぜなぜなぜ。。。。。。。









仮面の男が突剣を引き抜く。



と同時に、君はエララを抱きかかえ逃げ出した。

走った。これ以上、エララを傷つけられないように。



エララは、D細胞でできている。これぐらいの傷・・・。







リルム「止めは刺さないの?」

仮面の男「コアを貫通している。もう終わりだ。行くぞ。」

リルム「・・・。ええ。」

















君は走る。





右目があった場所からの血が止まらない。




何度も何度もエララを落としそうになるも、必死で走る。







君は止まらない。











エララ「リュウマくん、傷の手当しよ。」

か細い声でエララが話しかけてくれた。



リュウマ「ああ、そうしよう。急いで傷をふさげば、絶対によくなるよ。だって、私が作ったD細胞でできた身体なんだろ。どんな傷も治してしまう万能の細胞なんだ。だから、・・・。」





エララ「ううん。リュウマくんの傷、私の目を使って。」

リュウマ「なに言ってるんだ。エララ、私の傷は軽い傷だ。痛みもない。だから、エララの傷を治そう」

エララ「ありがとう。でも、コアに傷が入ってるみたい。コアの修復はできないんだ。」

リュウマ「・・・研究所まで行けば、なんとか、」

エララ「無理だよ。私の体、そこまで持たない。だから最後にリュウマくんといっぱい話がしたい。」




リュウマ「うん。」

エララは、君と出会えたこと、短い間だったが、とても楽しかったこと。
君のことを好きになったこと。いろんな話をしてくれた。






エララ「リュウマくん、目を閉じて。」

そういうと、小さな手で君の左目をふさいだ。



エララ「醜い顔は見せたくない。リュウマくんには、私の目をあげる・・・。たまには、思い出してね。」




右目のあったところに、優しく触れる手の温もりを感じた。




君の右目の痛みが、徐々に引いていく。


エララ「もういいよ。ありがとう。愛してたよ。」

君が両目を開けると、目を閉じて眠るように動かなくなる。エララがいた。
















リルム「あら。ホープのいうことも嘘じゃなかったみたいね。」



君の背後にリルムが立つ。






リュウマ「なぜ、エララは殺されたんだ。なぜ、お前たちは、エララを殺したんだ。」

君は頭の血管が破れそうになるほど、歯を食いしばる。



リルム「彼の計画に変更があったみたいで、邪魔になったから消去したんじゃないの。」

リュウマ「そんなことで、娘を、エララを殺したのか!」




リルム「何か問題でも?あなたたち人間も同じでしょ。私も、あなたの存在がすごーく邪魔なの。ここで消去してあげるわ。」


リュウマ「ふざけるな!!!!」


君は、リルムに向けて指をさす。






リルム「いったい何のマネ?何かの裁判ゲームのマネでもしてるの。バカみたい。」














君の瞳は、魂をとらえている。







君の目を見て、リルムは警戒する。

リルム「何をする気、やめてください。Dr.リュウマ!」







リルム「お願い。」








リュウマ「我、魂に命じる。稲妻よ、敵を撃て!」





ダガーン!

空気が割れる、乾いた音が鳴り響く。





君の指先から激しい光が放たれた。

放たれた光は、警戒したにもかかわらず、リルムの処理速度の何千倍もの速度で、突き抜ける。

















~2時間後~


君は、エララの墓を作った。


墓の上には、一つの魂が浮かんでいた。


リュウマ「一緒に行こうか。」




そういうと、君は1枚のカードをとりだした。



リュウマ「Dカード起動」

「音声確認完了、メインシステム通常モードに移行します。」


リュウマ「イバ・ルイハ!」

「コード承認、D細胞遺伝子情報の保護を開始します。」





リュウマ「エララ、いつかまた一緒に旅に出ようね。」
























 ~ to be continued


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