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商店模範

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ドワルゴ商店

店に戻ったルルジアは、兄弟たちに ハロルドと話をした内容を伝えた。
ルルジアが【ドワルゴ製造技術訓練学園】の仕組みを説明しようとしたとき、長兄のロメオが優しく答える。



「ルルジア、前に話した言葉を覚えているかい?
 真の商人は、俺たち製造者と同じ、人を笑顔にすることに長ける者だという言葉だ。」



ロメオの言葉にルルジアは無言で頷く。
ロメオは、ルルジアの頷きを確認し、言葉をつづける。


「そのことについて話をする前に、皆に知っていてもらいたいことがある。
 実は、ドワルゴ商店がミラルノ商店と結んだ契約解除の違約金なんだが、すでに誰かが支払っていたんだ。
 店主ミラルノが神殿騎士に捕らえられたとはいえ、ミラルノ商店との契約は無効にならない。
 俺は不思議に思い誰が支払ったのか調べることにしたんだ・・・。」


ロメオは、ルルジアをはじめ、弟たちを見渡した後、調査した結果を報告し始めた。


「調査した結果、レイオン商店が支払っていた。ということが分かった。
 俺たちと何の繋がりもないように思えたレイオン商店だが、そのレイオン商店と唯一つながっている人物がいる。」


ロメオの言葉に、兄弟たちは一斉に答える。

「ハロルドさんだ!」


「そう、俺もハロルドさんがレイオン商店に支払いを肩代わりしてくれるように、頼んでくれたんだと思う。
 でも何故、ハロルドさんが動いたのであれば、それを俺たちに話して、優位な立場に立たないんだと思う?
 人間の商人なら、誰もがやっていることなのに・・・。
 その答えは、今日、ルルジアが持ち帰ってくれた。
 それはきっと、ハロルドさんは、そういった損得だけでなく、人と人の繋がりを大切に商売をしているからなんじゃないか。
 人と人の繋がり、その繋がりが人を幸せにし、笑顔にしていく。
 まさに、人を笑顔にすることに長ける者。真の商人なんだと俺は確信した。」


ロメオの言葉に、全員が大きく頷く。
ロメオは、ルルジアの肩を軽く叩き、強い口調でハッキリと自分自身の思いを告げた。

「今後、我々ドワルゴ商店は、ハロルドさんと共に歩みを進めていく。
 そして、ハロルドさんの意思である、ドワルゴ製造技術訓練学園の運営に誠心誠意、真心こめて尽力していく!
 例え、どんな結果になろうとも、突き抜けよう!!!」



「「「おおぉぉ!!」」」





数日後、ハロルド、レイオン商店を通じ、エルフの国から正式にドワルゴ製造技術訓練学園設立の通達が来た。
兄弟たちは話し合いの結果、店主であったルルジアを学園長に推薦し、長兄ロメオがロメオ商店として、当面の間、従来通りの商売を行っていくことに決まった。

ロメオは商売の知識が無かった為、ハロルドに師事するのだが、このことが功を奏し、ロメオ商店を商会へと伸し上げていくことになるのだが、それはまだまだ未来の話となる・・・。




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