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鬼謀の星
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エルフの森の不正伐採事件をきっかけに、王国内は大きな変革を迎えていた。
ダンテ国王は、大臣のミラルノを あまり良く思っていなかったのもあり、事件の密告後、即刻、大臣のミラルノを更迭し、騎士団にその身柄を拘束させ、空白となった大臣のポストには、ダンテ国王の信頼厚い、騎士団長マルゲリータが直接指名された。
元大臣のミラルノは、自身が事件に関わっていなかったと反論したのだが、親族からの密告もあり、その反論が通ることはなく拘束から、わずか3日で絞首刑を宣告された。
この世界では、判決は神にゆだねられ、判決が降りなければ神官が決めるという神託制裁判という考えがあるのだが、国王の根回しもあったようで、神託裁判は秘密裏に行われたようだ。
その結果、主犯である元大臣の息子も、神託により有罪とされたらしく、ミラルノ元大臣と共に絞首刑が執行された。
ミラルノ元大臣の孫にあたるミラルノ商店店主リグルト・ミラルノは、直系の家系であるのだが、元大臣の不正を国に報告したことから、国を救ったと新大臣のマルゲリータに判断されたこともあり、その結果その罪を問われることはなかった。
元大臣ミラルノの絞首刑後、ハロルド商店、ミラルノ商店、ウィンター商店に国王からの書簡が届いた。
その内容は、今後も商会を決める為の協議は継続するということ。
それから、ドワルゴ商店店主ルルジアは、店主ルルジアがエルフの国に捉えられた為、商会候補から除外されたという旨の内容が届いたのだが・・・。
~ハロルド商店~
ハロルド商店の店先には、ルルジアの姿があった。
そんなルルジアに、ハロルド商店に遊びに来ていた客たちが声をかける。
「ルルジアちゃん、もう大丈夫なのかい?」
「ええ、いつまでもクヨクヨしてたら、天界に召された兄から怒られてしまいそうですから。
それに、私たち兄弟を救ってくれたハロルドさんに、少しでも恩返しがしたいと思って。」
ハロルド商店を訪れていた客たちも、ことの成り行きを聞いていたこともあり、心配そうにルルジアに声をかける。
もちろん、ハロルド商店での買い物をしながら。
そんなルルジアに、ハロルドが声をかけてきた。
「ルルジアさん、いつもすみません。」
「いいんですよ、私にできることといったら、ハロルドさんの店で売り子をすることくらいしかないですから。」
ルルジアの言葉にハロルドが苦笑いをする。
「ははは、ルルジアさんのインセンティブが高くなりすぎて、今月の経営がちょっと・・・ですね。」
その言葉に ルルジアは、恩返しだから無給で頑張りますと答えたところ、ハロルドも答えた。
「いえいえ、ただで人を使っていたなんて悪い噂がたつのは、ちょっと・・・。
それに、生きていくのに お金って必要じゃないですか。
ドワルゴ商店だって、ほら、その・・・。」
「私は大丈夫です。
確かに、ドワルゴ商店は3か月間の販売停止の処分を受けていますけど、なんとか家具の修繕なんかで食いつないでいけますから!」
「いえ、そういった意味では・・・。
すみません、いま何を生業にしてるって言いました?」
「ええ、家具の修繕ですね。
もちろん、改修作業も請け負ってます。」
「家具の改修や修繕・・・。
そういった技術をもつ職人が何人くらいいるんですか?」
「はい?
・
・
・
家具の修繕作業ですよね。
そんなの全員できますよ。職人を育てるのも工場の仕事ですからね。
手先が器用なことがドワーフの取柄でもありますから。」
「そうなんですね!
手先が器用・・・だったら、武器や防具なんかの装備品の修繕も出来ますか?」
「まあ、ある程度なら可能ですけど。
だけど、防具はともかく、武器は作り直した方が早いですよ。」
「なるほど・・・。」
ハロルドの質問に不思議そうに答えるルルジア。
そんなルルジアにハロルドが笑顔で提案する。
「ルルジアさん、いまこの王国内でも、壊れた装備品が毎日のように捨てられていってる事実は ご存じですか?」
「い、いえ、初めて聞きました。
私たちは家具の製造販売が主な収入源だったものですから。」
「ですよね、だったら・・・。」
ハロルドが何を言いたいのか察したのか、ルルジアがハロルドの言葉を遮るように反論する。
「それは無理ですよ、家具の修理は販売と違って収入が少ないんです。
それなのに、さらに単価の低い装備品の修理をするなんて、人手が足りませんよ。」
「ふむふむ、ですよね。
そうなんですよ。装備品の修理を請け負っていてはコストがかかりすぎます。
では、逆に質問です。
冒険者の装備品一式、例えば、片手剣、小型盾、軽装鎧一式、この3点でいくらぐらいかかると思いますか?」
「・
・
・
金貨20枚程度ですよね。」
「そうですね、一般的な兵士の装備品であれば。
・
・
・
冒険者の装備品は一級品や装飾が施された特注品を使っているケースがほとんどです。
上級冒険者は人数も少ないため例外として、中級から駆け出し冒険者の装備品3点セットの平均価格が金貨60枚前後と言われています。」
「結構な値段ですね。
まあ、特注品であれば・・・。」
「ちなみに、上級冒険者の装備品は 金貨300枚程度、上級貴族の装備品であれば、騎士鎧一式で金貨900枚程度と言われていますからね。」
「そ、そんなに・・・。
家具なんかより高額ですよね。
と言うことは、装備品の修繕や作成ができる職人を・・・。」
今度は、ハロルドがルルジアの意見を遮り話し始める。
「いえいえ、装備品を作る職人を育てるのも長い目で見れば面白い考えだと思います。
しかし、それでは時間もかかりすぎてしまいますし、何より装備品の素材コストが高いので、実入りは低いです。
そんなことより、中古の装備品を私が安く買いあさりますから、その中古の装備品を修繕して再販売するというのはどうでしょうか。
もちろん、修繕にかかる費用はお支払いします。」
「いえ、ハロルドさんから代金はとれないですよ。
家具の製造、修繕の合間であれば無料で請け負いますよ。」
「いやいや、無料は怖いですから、修繕手数料で銀貨20枚、それに加えて実費でかかった素材代金でどうでしょうか。
・
・
・
それに、ドワルゴ商店として家具の販売に規制がかかっているいま、職人さんたちに払う賃金を工面する必要があるでしょ。」
「そうですよね。
・・・ハロルドさん、ありがとうございます。」
ルルジアの礼を聞くと、ハロルドはさっそく行動に移した。
ハロルドは、店に訪れた冒険者や自警団の兵士たちだけでなく、一般の客にも声をかけていた。
~数日後~
ハロルド商店の前には、廃棄された(ハロルドが二束三文で買い集めた)装備品の山が山積みになっていた。
部下から報告を受けたのだろうか、様子を見に来たウィンター商店店主のベローチが、山積みの装備品を見に来ていた。
ベローチは、ハロルドを見つけると声をかけてくる。
「なぜ、こんなゴミを買い取っているんだい?」
「なぜって、私には宝の山にしか見えないからですよ。」
「このゴミが・・・?」
「ええ、私には宝の山ですよ。
これで私の店でも装備品が潤沢に提供できますからね。」
ベローチの質問に笑顔で答えたハロルドは、店番の合間に山積みになっている装備品を馬車の荷台に積み始める。
その楽しそうな後姿をベローチは哀れみの目で見つめていた。
(使える装備品を仕分けして、地方向けに転売でもするつもりなのか?
そんな安い仕事までするなんて・・・私には理解できないよ。)
ダンテ国王は、大臣のミラルノを あまり良く思っていなかったのもあり、事件の密告後、即刻、大臣のミラルノを更迭し、騎士団にその身柄を拘束させ、空白となった大臣のポストには、ダンテ国王の信頼厚い、騎士団長マルゲリータが直接指名された。
元大臣のミラルノは、自身が事件に関わっていなかったと反論したのだが、親族からの密告もあり、その反論が通ることはなく拘束から、わずか3日で絞首刑を宣告された。
この世界では、判決は神にゆだねられ、判決が降りなければ神官が決めるという神託制裁判という考えがあるのだが、国王の根回しもあったようで、神託裁判は秘密裏に行われたようだ。
その結果、主犯である元大臣の息子も、神託により有罪とされたらしく、ミラルノ元大臣と共に絞首刑が執行された。
ミラルノ元大臣の孫にあたるミラルノ商店店主リグルト・ミラルノは、直系の家系であるのだが、元大臣の不正を国に報告したことから、国を救ったと新大臣のマルゲリータに判断されたこともあり、その結果その罪を問われることはなかった。
元大臣ミラルノの絞首刑後、ハロルド商店、ミラルノ商店、ウィンター商店に国王からの書簡が届いた。
その内容は、今後も商会を決める為の協議は継続するということ。
それから、ドワルゴ商店店主ルルジアは、店主ルルジアがエルフの国に捉えられた為、商会候補から除外されたという旨の内容が届いたのだが・・・。
~ハロルド商店~
ハロルド商店の店先には、ルルジアの姿があった。
そんなルルジアに、ハロルド商店に遊びに来ていた客たちが声をかける。
「ルルジアちゃん、もう大丈夫なのかい?」
「ええ、いつまでもクヨクヨしてたら、天界に召された兄から怒られてしまいそうですから。
それに、私たち兄弟を救ってくれたハロルドさんに、少しでも恩返しがしたいと思って。」
ハロルド商店を訪れていた客たちも、ことの成り行きを聞いていたこともあり、心配そうにルルジアに声をかける。
もちろん、ハロルド商店での買い物をしながら。
そんなルルジアに、ハロルドが声をかけてきた。
「ルルジアさん、いつもすみません。」
「いいんですよ、私にできることといったら、ハロルドさんの店で売り子をすることくらいしかないですから。」
ルルジアの言葉にハロルドが苦笑いをする。
「ははは、ルルジアさんのインセンティブが高くなりすぎて、今月の経営がちょっと・・・ですね。」
その言葉に ルルジアは、恩返しだから無給で頑張りますと答えたところ、ハロルドも答えた。
「いえいえ、ただで人を使っていたなんて悪い噂がたつのは、ちょっと・・・。
それに、生きていくのに お金って必要じゃないですか。
ドワルゴ商店だって、ほら、その・・・。」
「私は大丈夫です。
確かに、ドワルゴ商店は3か月間の販売停止の処分を受けていますけど、なんとか家具の修繕なんかで食いつないでいけますから!」
「いえ、そういった意味では・・・。
すみません、いま何を生業にしてるって言いました?」
「ええ、家具の修繕ですね。
もちろん、改修作業も請け負ってます。」
「家具の改修や修繕・・・。
そういった技術をもつ職人が何人くらいいるんですか?」
「はい?
・
・
・
家具の修繕作業ですよね。
そんなの全員できますよ。職人を育てるのも工場の仕事ですからね。
手先が器用なことがドワーフの取柄でもありますから。」
「そうなんですね!
手先が器用・・・だったら、武器や防具なんかの装備品の修繕も出来ますか?」
「まあ、ある程度なら可能ですけど。
だけど、防具はともかく、武器は作り直した方が早いですよ。」
「なるほど・・・。」
ハロルドの質問に不思議そうに答えるルルジア。
そんなルルジアにハロルドが笑顔で提案する。
「ルルジアさん、いまこの王国内でも、壊れた装備品が毎日のように捨てられていってる事実は ご存じですか?」
「い、いえ、初めて聞きました。
私たちは家具の製造販売が主な収入源だったものですから。」
「ですよね、だったら・・・。」
ハロルドが何を言いたいのか察したのか、ルルジアがハロルドの言葉を遮るように反論する。
「それは無理ですよ、家具の修理は販売と違って収入が少ないんです。
それなのに、さらに単価の低い装備品の修理をするなんて、人手が足りませんよ。」
「ふむふむ、ですよね。
そうなんですよ。装備品の修理を請け負っていてはコストがかかりすぎます。
では、逆に質問です。
冒険者の装備品一式、例えば、片手剣、小型盾、軽装鎧一式、この3点でいくらぐらいかかると思いますか?」
「・
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金貨20枚程度ですよね。」
「そうですね、一般的な兵士の装備品であれば。
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冒険者の装備品は一級品や装飾が施された特注品を使っているケースがほとんどです。
上級冒険者は人数も少ないため例外として、中級から駆け出し冒険者の装備品3点セットの平均価格が金貨60枚前後と言われています。」
「結構な値段ですね。
まあ、特注品であれば・・・。」
「ちなみに、上級冒険者の装備品は 金貨300枚程度、上級貴族の装備品であれば、騎士鎧一式で金貨900枚程度と言われていますからね。」
「そ、そんなに・・・。
家具なんかより高額ですよね。
と言うことは、装備品の修繕や作成ができる職人を・・・。」
今度は、ハロルドがルルジアの意見を遮り話し始める。
「いえいえ、装備品を作る職人を育てるのも長い目で見れば面白い考えだと思います。
しかし、それでは時間もかかりすぎてしまいますし、何より装備品の素材コストが高いので、実入りは低いです。
そんなことより、中古の装備品を私が安く買いあさりますから、その中古の装備品を修繕して再販売するというのはどうでしょうか。
もちろん、修繕にかかる費用はお支払いします。」
「いえ、ハロルドさんから代金はとれないですよ。
家具の製造、修繕の合間であれば無料で請け負いますよ。」
「いやいや、無料は怖いですから、修繕手数料で銀貨20枚、それに加えて実費でかかった素材代金でどうでしょうか。
・
・
・
それに、ドワルゴ商店として家具の販売に規制がかかっているいま、職人さんたちに払う賃金を工面する必要があるでしょ。」
「そうですよね。
・・・ハロルドさん、ありがとうございます。」
ルルジアの礼を聞くと、ハロルドはさっそく行動に移した。
ハロルドは、店に訪れた冒険者や自警団の兵士たちだけでなく、一般の客にも声をかけていた。
~数日後~
ハロルド商店の前には、廃棄された(ハロルドが二束三文で買い集めた)装備品の山が山積みになっていた。
部下から報告を受けたのだろうか、様子を見に来たウィンター商店店主のベローチが、山積みの装備品を見に来ていた。
ベローチは、ハロルドを見つけると声をかけてくる。
「なぜ、こんなゴミを買い取っているんだい?」
「なぜって、私には宝の山にしか見えないからですよ。」
「このゴミが・・・?」
「ええ、私には宝の山ですよ。
これで私の店でも装備品が潤沢に提供できますからね。」
ベローチの質問に笑顔で答えたハロルドは、店番の合間に山積みになっている装備品を馬車の荷台に積み始める。
その楽しそうな後姿をベローチは哀れみの目で見つめていた。
(使える装備品を仕分けして、地方向けに転売でもするつもりなのか?
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