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五つ目の商店

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「そ、それは・・・。」



言葉に詰まった大臣をフォローするように、ベローチが前に進み出て口を開く。

「リリアス大隊長、私は商人のベローチと言う者です。
 先ほどの指摘に関してですが、私も出来すぎた台帳であると違和感は感じました。
 しかし、逆にこう考えたりもしたのです。
 おそらく、ドワルゴ商店は二重台帳をつけていたのでは・・・と。」

「二重台帳?
 ええ、提出用と内部用の台帳を二重に分ける犯罪行為です。」

「それと、これがいったい何の関係があるのですか。」

「ええ、ですから、今回の犯罪に加担していた部分に関しては、帳尻を合わせるために書き直しを加えた台帳を付けた後に、ゆっくりと記載されていったのではないかと考えました。
 提出用の台帳に帳尻用の計算やミスがあれば、指摘されてしまいますからね。
 それと、逆に言えば、今後、別の台帳が証拠としてあがってきたとしても、それは提出用の台帳であり、見る価値もないということです。」


笑顔で答えるベローチに、リリアスは感心している。
肝が据わっているというか、国の運命を左右しかねない重大事項も、彼にとっては普段の生活に花を挿す余興程度にしか感じていないような気がした。


「考えようによっては、そういう考え方もあるわね・・・。
 しかし・・・。」

リリアスが言葉を選ぶように熟考していると、ベローチが再び話し始める。


「リリアス大隊長、もしや、レイオン商店の店主レイオンから入れ知恵がありましたかな?」

リリアスは表情に出てしまいそうになるも、知らぬふりをして会話を進める。


「さあ、彼とは何年もあってないから分からないわ。
 それにしても、なぜレイオンが関わっていると思ったの?」

「いえ、商人の勘とでもいいましょうか。
 決して表舞台に出てこない、謎の商人レイオン。エルフの国は彼としか商売をしない。
 彼がハイエルフであるということは掴みました・・・。
 いえ、彼女と言うべきでしょうか。
 エルフの国での商売を独占し、ダンテ王国との商売でもハロルド商店を経由して利益を得ている。
 おそらく、レイオンはハロルド商店店主ハロルドの妻、ローレンスではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 そして、彼女はこの数か月、ダンテ王国から姿を消している。
 ・
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 おそらく、この不正森林伐採を検挙するため。
 そして、ある程度の証拠をすでに掴んでいる。
 そんな彼女から、何か入れ知恵があったと考えるのが・・・。」


「「「ぷっ、ぷふふぅー。」」」



「ちょ、ちょっと、それはないって、レイオンくんがローレンス・・・?」



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