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五つ目の商店
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~正午過ぎ~
ドワルゴ商店の資料を精査していたレイオンが、急に立ち上がった。
「これだ・・・。
これが証拠になりうるかもしれない・・・。」
ビーノは、立ち上がったハロルドに声をかける。
「ハロルドさん、もう正午は過ぎてしまいました。
ここから馬車を飛ばしても、到着は日暮れ前、ねつ造されたものとはいえ、証拠がある以上・・・。」
「大丈夫だと思います。
ハイエルフのレイオンからの依頼で、いまも刑は保留になっているはずですから。
だけど、急いだほうがいいのは事実ですね。」
ビーノとハロルドは大量の資料を抱え、外の馬車で待機しているサレウドと合流し、引き渡し場所のエルフの森の入り口まで急いだ。
その道中、ビーノがハロルドに質問する。
「ハロルドさん、そもそも台帳が改ざんされているのであれば、こちらの台帳と照らし合わせれば嘘が見破れるんじゃないでしょうか。」
ビーノの素朴な疑問に、ハロルドは首を横に振って答える。
「おそらく、台帳の改ざんを行った人物は、かなりの手腕を持っている人物です。
逆に、ドワルゴ商店の台帳は、所々に小さなミスがあったため、そこを指摘されてしまい、証拠不十分 並びに、台帳の改ざんがあり、帳尻を合わせる為にミスが生じていると言われてしまうでしょう。
そうなれば、証拠として提出したはずの台帳で自分の首を絞めてまいます。
・
・
・
ですから、台帳に変わり、証拠になりうるものを探す必要がありました。
幸いにも、ドワルゴ商店は工場も自前で保有していたので、証拠となりうる資料は数多く存在しましたが、でれも決定打にかけるものでした。」
「では、いま証拠として持って行っているものとは?」
「あとで説明してあげますよ。
いまは、私も次の一手の準備をしなければいけないので。」
ビーノは、邪魔をして申し訳ないといった表情でハロルドに謝る。
ハロルドは、真剣な表情で次の一手としての資料を抜粋している。
一方そのころ、身柄の引き渡し場所では。
エルフのリリアス大隊長、ミラルノ大臣、マルゲリータ騎士団長、ウィンター商店店主ベローチが犯人についての説明と話し合いをしていた。
「以上のことから、このドワルゴ商店店主ルルジアの指令の元、不正に森林伐採が行われていたということが証明されるわけですな。」
ミラルノ大臣が、証拠の品として台帳をリリアス大隊長に手渡す。
近くで待機していたリリアスの側近は、リリアスに近づき、エルフが秘密裏に話を進めたいときに使う英語によく似た言葉で会話を続ける。
『大隊長、レイオンさんの言う通りでしたね。
証拠の品に台帳ですよ。どうしましょうか。』
『どうしましょうも何も考えるまでもないわ。
戦争よ・・・って言えれば楽なのにな。』
『ほんと、そうですよね。
でも、このミラルノって人、悪そうな顔してますよね。
後ろの騎士団長も極悪人って面構えですよ。』
『そうね、しかも、後ろの騎士団長は、レイオンを殺そうとしてた騎士じゃないかな。
どこかで見覚えがあったのよね。』
『ローレンスさんに声をかけなくて正解でしたね。
きっといまごろ、金色の炎をぶっ放してますよ。』
『ローレンスなら、やりかねないわね・・・。
(ローレンスなら・・・。)』
話がまとまらないまま、リリアス大隊長は、大臣のミラルノに声をかける。
『ミラルノ大臣、この台帳で・・・。』
エルフの言葉で話していたことに気付き、共通語に切り替えて再び話し始める。
「この台帳ですが、ミラルノ大臣の目から見て、違和感などは感じなかったのでしょうか。」
リリアス大隊長の言葉に、少し動揺したようで、ベローチの方を見る。
ベローチが小さく首を横に振ると、ミラルノ大臣は自信満々に答える。
「いえ、どこにも問題はなかったようですが。」
「そうですよね。
どこにも問題がないことが問題なんですよ。」
「と、いいますのは?」
「ええ、台帳全体を通してみれば、所々にミスが目立ちます。
しかし、この木材の売買に関しては、一切のミスがない。
おかしいと思いませんか。」
「そ、それは・・・。」
ドワルゴ商店の資料を精査していたレイオンが、急に立ち上がった。
「これだ・・・。
これが証拠になりうるかもしれない・・・。」
ビーノは、立ち上がったハロルドに声をかける。
「ハロルドさん、もう正午は過ぎてしまいました。
ここから馬車を飛ばしても、到着は日暮れ前、ねつ造されたものとはいえ、証拠がある以上・・・。」
「大丈夫だと思います。
ハイエルフのレイオンからの依頼で、いまも刑は保留になっているはずですから。
だけど、急いだほうがいいのは事実ですね。」
ビーノとハロルドは大量の資料を抱え、外の馬車で待機しているサレウドと合流し、引き渡し場所のエルフの森の入り口まで急いだ。
その道中、ビーノがハロルドに質問する。
「ハロルドさん、そもそも台帳が改ざんされているのであれば、こちらの台帳と照らし合わせれば嘘が見破れるんじゃないでしょうか。」
ビーノの素朴な疑問に、ハロルドは首を横に振って答える。
「おそらく、台帳の改ざんを行った人物は、かなりの手腕を持っている人物です。
逆に、ドワルゴ商店の台帳は、所々に小さなミスがあったため、そこを指摘されてしまい、証拠不十分 並びに、台帳の改ざんがあり、帳尻を合わせる為にミスが生じていると言われてしまうでしょう。
そうなれば、証拠として提出したはずの台帳で自分の首を絞めてまいます。
・
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ですから、台帳に変わり、証拠になりうるものを探す必要がありました。
幸いにも、ドワルゴ商店は工場も自前で保有していたので、証拠となりうる資料は数多く存在しましたが、でれも決定打にかけるものでした。」
「では、いま証拠として持って行っているものとは?」
「あとで説明してあげますよ。
いまは、私も次の一手の準備をしなければいけないので。」
ビーノは、邪魔をして申し訳ないといった表情でハロルドに謝る。
ハロルドは、真剣な表情で次の一手としての資料を抜粋している。
一方そのころ、身柄の引き渡し場所では。
エルフのリリアス大隊長、ミラルノ大臣、マルゲリータ騎士団長、ウィンター商店店主ベローチが犯人についての説明と話し合いをしていた。
「以上のことから、このドワルゴ商店店主ルルジアの指令の元、不正に森林伐採が行われていたということが証明されるわけですな。」
ミラルノ大臣が、証拠の品として台帳をリリアス大隊長に手渡す。
近くで待機していたリリアスの側近は、リリアスに近づき、エルフが秘密裏に話を進めたいときに使う英語によく似た言葉で会話を続ける。
『大隊長、レイオンさんの言う通りでしたね。
証拠の品に台帳ですよ。どうしましょうか。』
『どうしましょうも何も考えるまでもないわ。
戦争よ・・・って言えれば楽なのにな。』
『ほんと、そうですよね。
でも、このミラルノって人、悪そうな顔してますよね。
後ろの騎士団長も極悪人って面構えですよ。』
『そうね、しかも、後ろの騎士団長は、レイオンを殺そうとしてた騎士じゃないかな。
どこかで見覚えがあったのよね。』
『ローレンスさんに声をかけなくて正解でしたね。
きっといまごろ、金色の炎をぶっ放してますよ。』
『ローレンスなら、やりかねないわね・・・。
(ローレンスなら・・・。)』
話がまとまらないまま、リリアス大隊長は、大臣のミラルノに声をかける。
『ミラルノ大臣、この台帳で・・・。』
エルフの言葉で話していたことに気付き、共通語に切り替えて再び話し始める。
「この台帳ですが、ミラルノ大臣の目から見て、違和感などは感じなかったのでしょうか。」
リリアス大隊長の言葉に、少し動揺したようで、ベローチの方を見る。
ベローチが小さく首を横に振ると、ミラルノ大臣は自信満々に答える。
「いえ、どこにも問題はなかったようですが。」
「そうですよね。
どこにも問題がないことが問題なんですよ。」
「と、いいますのは?」
「ええ、台帳全体を通してみれば、所々にミスが目立ちます。
しかし、この木材の売買に関しては、一切のミスがない。
おかしいと思いませんか。」
「そ、それは・・・。」
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