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五つ目の商店

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日没後、ハロルドは店を早めに店じまいをし、町で噂になっているドワルゴ商店の件を確認するためにウィンター商店へと足を運ぶ。
まだウィンター商店は閉店準備中で人もいたため、店番にベローチの所在を確認したのだが・・・。


「申し訳ありません。
 店主は昼前に、城に召喚されてから姿を見せておりません。」

「昼前に?
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 あの、すみません、ベローチさんに貸していた本を返してもらいたかったんですけれども、どうやら貴重な品らしくって・・・。
 もしかして、ベローチさんは本のようなものを持って行ってませんでしたか?
 大きさは台帳くらいなんですけど・・・。」


店番は、思い出そうとしているのか、視線が上を向く。
そして、確かに台帳程の大きさの本を持っていたことをハロルドに伝えた。
ハロルドは、店番に礼を言い、向かいの建物にある、ベローチの隠れ家に向かっていった。




ハロルドが、いつものように合図のノックをすると、中から人相の悪い男が顔を出す。
人相の悪い男は、ハロルドを確認すると、周囲の様子を伺いながら声をかける。


「ハロルドの旦那、今日はいったい?」

「ええ、ベローチさんに頼まれた情報を持ってきたんですけど。
 もしかして、すでに城に台帳を持って行った後でしたか?」

「え、あ、ええ、もうあれは城に出すって言って持っていきやしたぜ。」

「一足違いでしたね・・・。
 ベローチさんの戻りは?」

「それが、どうやらマルゲリータ団長からの招集だったようで、もしかすると今日は戻ってこないんじゃないかと思うんですが。」

「そうなんですか・・・。
 でもなぜマルゲリータ団長からの招集の時は帰りが遅いんでしょうね?」

「旦那は知らないんで?」

「何をでしょうか?」

「それは・・・。
 いえ、何でもないです。」

そう言うと、人相の悪い男は、部屋の扉を閉めて中から施錠をしてしまった。



(ベローチと、マルゲリータ団長の繋がり・・・。
 なんなんだ?
 ただの取引き先という関係ではなさそうだけれども・・・。
 何か裏で繋がっているのだろうか。
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 仕方がない、情報収集か・・・。
 久しぶりに、レイオンの力を借りるとするか・・・。)


ハロルドは、建物を出ると足早に宿屋街の方へと駆けていった。


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