伝説の商人たち ～エルフの商人レイオン～

五つ目の商店

２０

～ドワルゴ商店前～

日が落ち始め、空を赤く染める頃、周囲の店も開店準備や閉店準備で慌ただしく店先で動き出す。
おちつきを取り戻しつつあったドワルゴ商店前の通りに、馬の嘶きが響き渡る。


「な、なにごとなんだ？」

「王国騎士団がいったい・・・。」


ドワルゴ商店を包囲するように集結する騎士団に、周囲の人々の間で騒めきとなる。
慌てて店から飛び出してきたのは、店主代行のロメオだった。

「いったい何事でしょうか。」

騎士団を率いる団長が、馬上から店主代行のロメオに質問する。

「貴様がドワルゴ商店店主か！」

「い、いえ。
　ドワルゴ商店の店主は、妹のルルジアでございますが、いまは体調を崩しており、私が店主代行として役目を担っております。
　騎士様、本日のご用命は？」


「店主ルルジアを連れてまいれ、エルフ国の不正な材木伐採に関与した罪が問われておる。」

「不正に木材伐採！？
　いえ、私どもは木材の伐採は行っておりません。
　仕入れた木材を加工して販売している商店です。」

「ええい、お主に聞いておるのではないわ！」



騎士団長が合図を送ると、騎士数名が馬から飛び降り、商店内に武器を構えて突入していく。

「お、お待ちください騎士様。
　何かの間違いでございます。
　わたくし共の木材は全て購入しているもので・・・。」

ロメオの言葉を遮るように、別の騎士がロメオの身柄も拘束する。
騎士団長は、押さえつけられるロメオに、説明は城で聞くとだけ伝え、騎士に連行させた。



暫くすると、店内から悲鳴のような女性の叫び声が聞こえた後、身柄を拘束された店主ルルジアが出てくる。

「いや、いや、そ、そんな、なぜ、ラグル兄さん、うそ、うそだといって、そんな・・・。」

身柄を拘束している騎士や店主ルルジアの服は赤く染まり、ルルジアは気が動転しているようだった。
ルルジアは、そのまま騎士に城へと連行されていった。



まだ周囲がざわついているなか、店内から血だらけの次兄ビーノが飛び出してくる。

「だれか、医者か冒険者はいませんか！？
　弟が、弟が・・・誰か、誰か！！」


いつもと変わらない国の大通りで、いつもでは起こりえない事態が起きているのは、誰の目から見ても明白であった。