上 下
17 / 42
五つ目の商店

15

しおりを挟む
~エルフの国~

エルフの国は、魔法文明が高度に発達した国である。
エルフたちは木々の上で生活しているのだが、家に入る為に木を登る必要はなく、魔法を使った簡易的なエレベーターのようなもので昇降している。
他にも、薄暗い森の中の明かりとして、魔法を使ったランプのような明々とした明かりを使っている。
こういったエルフの国で快適に暮らせるように発明された品は、全てエルフの商人であるレイオンの発明なのだ。

レイオンは、エルフの国では知らない者がいないほど有名な商人(と言っても、エルフの国には、レイオン商店しかない)で、唯一、人間たちと交易を行なうことが許されている商店でもある。



そんなエルフの国での出来事である。


ある一軒家に、人間でいう90歳ほどのエルフの男性と、60歳ほどのエルフの女性、そして20代後半の若いエルフ、そして幼い女の子のエルフが住んでいた。


幼い女の子は、若いエルフにしがみ付きながら、見上げるようにお願いしていた。


「ねえローレンス。
 レヴィちゃん、パパンのところに行きたーい。」

「レヴィ、わがまま言わないでよ。
 おっかしいなー。レイオンは素直だったのに、誰に似たんだろう・・・。」



ローレンスと呼ばれた若い女性の様子を見ながら、60歳ほどのエルフが笑いながら答える。

「レヴィちゃんは、小さいころのローレンスにそっくりなのよね。
 レイオンは、もっとこう、おとなしかったもの。」

「そうじゃな。ベラドールの言う通りじゃな。
 たしかにレイオンは、話し方から考え方まで、ハイエルフらしく、もっと落ち着いておったからな。」


優しそうな笑顔を見せながら90歳ほどの老エルフも答える。
そんな2人の懐かしそうな顔をした言葉に、若いエルフは反論する。


「そ、そうかな・・・。
 レイオンは、私にママーって甘えてきたり、レヴィに似てる部分も多い気がしてきたな。」


「うふふ、そういうことにしておきましょ。
 私たちも久しぶりに、レイオンに会いたくなってきたわね。
 ねえ、ローレンス。今度は、いつ帰ってくるのかしら?
 10年後、20年後、それとも100年くらい帰らない予定なのかしら?」

ベラドールと呼ばれた女性が質問を続けると、その言葉を聞いていた、幼いレヴィが泣き出しそうな顔になる。

「パパンに100年も会えないの・・・。」

「あ、違うわよ、すぐに会えるわよ。
 ね、ほら、ね。
 あら、そうだ、レヴィちゃん、ピノキ男と一緒に遊びましょうか。」

ベラドールは必至にレヴィを慰めようとしているのだが・・・。


「パパンに会いたい・・・。
 えーん、パパンに会いたいよー。」

「もう、ベラドールおばさんったら・・・。」

「ご、ごめんなさい、ローレンス。」


ローレンスは、近くにあった紙に絵を描き始める。

「ねぇ、レヴィ。ママと一緒にパパに手紙をかかない?
 モリアーニおじさんが手紙を届ける仕事を始めたんだって。
 きっと、すぐにパパに手紙を届けてくれるよ。
 そしたら、パパもレヴィに会いたいって飛んで帰ってくるかもよ。」

ローレンスの言葉にレヴィが泣き止む。

「ほんと?
 パパンは、魔法で空を飛んで帰ってくる?」

「ま、魔法で空か・・・。」


言葉を詰まらせたローレンスの表情に、再び泣きそうになるレヴィ。
その様子をみていた、老エルフが答える。

「ああ、魔法で空を飛んで帰ってくるじゃろう。
 なんたって、レイオンは数少ない ハイエルフじゃからな。」


レヴィは、老エルフの言葉に、再び笑顔を取り戻す。

「じゃあ、手紙にミザリちゃんも書いてあげるんだ。
 私とミザリちゃんで、一緒にパパンのお店で洋服屋さんをやるんだよ。
 可愛い洋服をいっぱい作って、みんなに着てもらうんだ。
 いいでしょー。」

「いいなぁー。ママもレヴィの洋服を着ていいかな?」

「じゃあ、お店で買ってくださいね。」


レヴィは楽しそうに、紙に絵を描き始める。

絵を描き終えたレヴィは ローレンスと手を繋いで、モリアーニと呼ばれたエルフの元に、手紙を持っていく。

「今日は、2人そろってどうしたのかな?」

「どうしたも何も、モリアーニが郵便配達の仕事をしてるって聞いてたから。」

「そうです。レヴィちゃんの手紙をパパンのところに届けてほしいの。」


そういって、レヴィは花柄の封筒を差し出す。
モリアーニは、その小さな手から手紙を受け取ると、笑顔で答える。


「レイオンくんのところだね。任せてよ。」


レヴィは、嬉しそうに笑って見せた。
そして、

「それと、パパンに伝えてください。
 早く立派な商人になって、レヴィとミザリと一緒に洋服屋さんをしようねって。」

「ああ、必ず伝えるよ。」


笑顔で帰っていく、レヴィとローレンスを不安そうな顔で見送るモリアーニ。
その理由は・・・。





(ど、ど、ど、どうしよう、出国手続きに20年くらいかかるのに・・・。)

モリアーニの密出国の話は、また別のお話し・・・。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊
ファンタジー
魔界に君臨する魔王の中の魔王。 魔界王エイルシッドの娘、魔界姫マリーと見習い天使ジャスを中心に話が進んでいく。 悪魔と天使、考え方や文化の違いを超えて結ばれる友情。 きっかけは、決して交わるはずのない2人が交わした約束・・・。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...