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商会戦の幕開け

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~ハロルド商店の店先~


相変わらず賑わっている店先で、買い物客の若い冒険者と談笑をしていた。

「なあ、ハロルドさんよ。
 もっと負けてくれよ。
 ジタルから聞いたぜ。」

「えー!ジタルさんから・・・。
 でも、これ以上の値引きはできないですよ。
 これだけセットで、金貨109枚とかは破格ですよ。」

「俺たち、天下無双のフランダース傭兵団だぜ、ほら、もう一声。」

若い冒険者が、なれなれしくハロルドに肩を組む。


「それは、ネロさんたちは有名な傭兵団ですから値引きしたい気持ちもあるんですけど。
 でも、まあ、いつも贔屓にしてくれているのも事実だしなぁ・・・。」


ハロルドの断ろうとする表情に、一般客の奥様方が茶々を入れる。

「いいじゃないかいハロルドさん。
 ほれ、これも何かの縁だよ。」

「ハロルドさんよ、ほれ、もう一声!」

「うーん。
 分かりましたよ。ネロさん、次からもハロルド商店を贔屓にして下さいよ。
 今回は、利益なしの金貨90枚で結構ですから。
 その代わり、薬を使うたびにハロルド商店最高って宣伝してくださいね。」

「はははっ!
 やっぱり買い物するんならハロルド商店だわ。
 兄貴たちが買い物に行くんならハロルドの所にしろって言った意味が分かったよ。」

「やっぱりハロルドさんだね。
 かなり大胆に値引いたわね。
 うちも洗濯板一式を買い替えようかしら・・・。」

ハロルド商店の前は常に笑顔で溢れている商店のようだ。
そんなハロルド商店にミラルノ商店の使い走りが伝言を伝えに来た。

「あの、すみません。
 ミラルノ商店から伝言なんですけど。」

「どういった内容ですか?」

ハロルドは、汗を流している使い走りに飲み物を手渡し内容を確認する。

「ありがとうございます。
 店主ミラルノから、店主ハロルドに来店していただくように伝言を預かっています。
 いまから一緒に来てもらえませんか?」

「え、あの、いまは店番をしているので、店を閉めてからお伺いします。」

「それでは困ります。
 ミラルノも待っているので、いまから一緒に来てください。」

「いえ、そんなことを急に言われても・・・。」


ハロルドが困っていると、フランダース傭兵団のネロが使い走りの男性の胸倉を掴む。

「おい、ハロルドは行けないって答えてんだろ、急用があるんなら、てめーで来いって伝えとけ。」

ネロは、そういって掴んでいた胸倉を乱暴に突き放す。
使い走りは、フラフラとよろけ、逃げるように引き返していった。
その様子を見ていたハロルドは、苦笑いしながらネロに礼を述べる。


「ネロさん、ありがとうございます。
 だけど、もう少し穏便に進めたかったかな。」

「わりーな。
 言い返してくるかと思ったんだけど・・・。
 いや、ハロルドに逆に迷惑をかけてしまったな。
 すまん。」

「いえ、いいんですよ。
 私の故郷では、こういった言葉があります。
 【木の葉は飛びたいように飛び、落ちたいように落ちる。】
 物事は、なるようにしかならないってことです。」

ハロルドの言葉に、ネロが嫌な顔をし質問する。

「どういう意味だ?」

「こうなることが運命だったって事です。」

「運命か・・・。」


悲しい表情をしたネロをフォローするように、ハロルドは話を続ける。

「でも、この言葉には続きがあります。
 それは、
 【しかし、落ちた木の葉を拾うのか拾わないのかは自由だ。】
 ってね。
 自由・・・自分で責任を持つということです。」


ハロルドの言葉にネロが笑顔をみせる。

「そうだな。
 自由・・・自分で責任を持つ・・・いい言葉だな。」

「ええ、もし使いの方が戻ってきたら、
 私が対応して説明しておきますよ。
 ネロさんが、ハロルド商店を贔屓にするのかしないのかも自由ですよ。」

「ああ、すまないハロルド。
 これからも、フランダース傭兵団は、ハロルド商店を贔屓にするよ。
 他の団員にも俺から宣伝しておく。」

「ありがとうございます。
 では、今後ともハロルド商店を贔屓に宜しくお願いいたします。」


ハロルドは、ネロと握手をして、代金を受け取り商品を荷車に積む手伝いを始めた。



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