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商会戦の幕開け

04

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~その夜~


店を閉めたハロルドは、ベローチとの約束を守る為、ウィンター商店へと急いだ。
ウィンター商店に辿り着くと、すでに商店は閉めてあり、店の入り口には施錠がしてあった。
ハロルドは、周囲を見渡しボソボソと独り言をつぶやく。

「私の商店で会おうって言ったのは、ベローチさんなのにな・・・。
 おそらく・・・。
 いや、この様子であれば間違いないだろうけど・・・。
 仕方がない。今日は引き上げるかな・・・。」


ハロルドは独り言を つぶやきながら、大通りの向かいにある3階建ての建物に入っていく。
建物に入り、そのまま3階まで上がると、一つの部屋の前で立ち止まった。

そして、そのまま部屋をノックする。


コココン、コン、コン、コン、コココン。


すると部屋の扉が開き、中から人相の悪い男が顔を出した。

「ハロルドさん、中で親分が待ってますぜ。」

ハロルドは、人相の悪い男に案内されるまま、部屋の中へと入っていく。
部屋の中には、顔に罪人の証として墨をいれられた人相の悪い男たちが複数人集まって会話をしていた。
ハロルドは部屋に入ると、そのまま奥へと勝手に進み扉を開ける。

ハロルドが奥の部屋に入ると、笑顔のベローチが待っていた。



「やあ、ハロルド。
 思ったよりも遅かったね。
 あまりにも遅いんで家に迎えの者を送ろうかと思っていたところだよ。」

「もおー、やめてくださいよベローチさん。
 近所で変な噂が広まっちゃいますよ。」

笑いながら答えるハロルドにベローチも笑いながら話しかける。


「しかし、君は本当に変わっているね。
 商店2階の倉庫部分を改装して住めるようにしているんだったっけ?
 まあ、考えようによっては理に適っているし、いままでにない考え方で素晴らしいと思うよ。」

「ありがとうございます。
 ところで、ベローチさん。
 今日、私を呼んだのは私の家を褒める為ではないですよね。」

「ああ、その件なんだけれども・・・。」


ベローチは、机の上のベルを鳴らし、部屋の外から人を呼ぶ。
部屋に入ってきた人相の悪い男に部屋に誰も近づけるなと命令し、ハロルドに小声で話しかける。



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