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キス
しおりを挟む「すぐ止むといいけど。傘も持ってきていないし」私が空を見上げて言った。
「そうだな」
そのまま私たちは会話もなくただ黙って灰色の空を見上げていたが、少し待っていると雨はしだいに落ち着きを見せてきた。
止んできたね、と私が言おうとしたとき、ふいに築山が身をかがめ、柔らかいものが私の唇に軽く触れた。
「水上、俺と付き合ってよ」築山が言った。
私が驚いて答えに窮していると、少し間をおいてから
「返事は、すぐじゃなくていいから。考えてみてよ」彼が言った。「さあ、雨もやんできたし、今のうちに車まで行って今日はもう帰ろうぜ。足元もびちゃびちゃだ」
帰りの車の中は非常に気まずかった。私たちは何度か適当な話題を見つけて話そうとしたが、どれも中途半端に終わっただけだった。
車が私の家の前に到着したとき、まるで暗い洞穴から地上に出てきたみたいに胸をなでおろした。
「じゃあ、今日はありがとう。またね」私が言った。
「おう。またな」
そして築山の車は去って行った。
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