幻冬のルナパーク

葦家 ゆかり

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ルナパークで乾杯

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やがて飲み物も運ばれてきた。

「こちらがジントニックです」

店員はそう言って絵海の前に円柱形のグラスを置いた。

ミネラルウォーターのように透明なお酒で、飲み口にはカットされたライムが挟まっている。

「こちらがルナパークです」

私の前にも三角形のカクテルグラスが置かれた。

濃いブルーのカクテルで、三日月と星の形に切り取られたリンゴの果肉がグラスの縁に挟まれていた。

まるで宇宙の一部を切り取って持ち帰ってきたようなドリンクだ。


「可愛いわね。それ」絵海が言った。

「ええ、アートみたいですね」


メニューの説明書きに、『月世界という意味のカクテル』とあった。

月というと女性を連想する。

今日にぴったりだと思った。

私と絵海の二人だけの女性の世界で、タップを踏んでダンスをするのだ。


「それで、玲の相談事って何だったの?」

私は急に名前を呼ばれてお酒をむせそうになった。

「あ、ごめんね、急に呼び捨てにして。でももう私たち、同じ職場の付き合いじゃないし。

玲も私のこと、呼び捨てにしてもいいわよ」

「え? いや、急に呼び捨ては……」

私が動揺して言った。

「じゃあ、お言葉に甘えて絵海さんで」
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