45 / 52
Case04.
11.緑の部屋にて
しおりを挟む
マイケル様はパトリックさんと主任に頭を下げて帰って行った。
失恋したクマ、森へ帰る(本当は公爵家へ戻るだけ)
さて、では、私めもこれで、失礼させていただきますよ。
回れ右して一歩踏み出したその時、
「ジェシカ・セシル?」
と私を呼ぶ主任。
主任が、私をフルネームで呼ぶ時、ろくな記憶はございません。
「は、は、はい~」
ギギギッと振り返ると、そこにはニッコリと微笑む主任と、爽やかに笑うパトリックさん。
主任の笑顔。怖いよ~
「あなた、これからの予定は?」
「あの……その……町の図書館へ、本を読みに行こうかと……」
「そう!それは急ぎなのかしら?」
「い、いえ~。急ぎかと言われるとぉ、そうでないのかもしれませんねぇ」
「そう!それは良かったわ」
再び主任の笑顔。
横目でパトリックさんを見ると、パトリックさんは私にウインクをした。
パトリックさん、急に貴族み出さないで下さいっ!
私は一体どうなってしまうのでしょうか……
気がつくと、私は主任とパトリックさんに連れられて、マリアさんのお店に連れて来られていた。
「あら、いらっしゃい。珍しい組み合わせじゃない?」
マリアさんは少し驚いたような顔をしたあとで、いつもの笑顔を見せた。
「マリア、個室貸して」
慣れた様子のパトリックさん
「じゃあ。緑の部屋にどうぞ」
マリアさんは青リンゴのキーホルダーがついた鍵をパトリックさんに渡す。
なんだ?緑の部屋って
パトリックさんはマリアさんから鍵を受け取ると、慣れた様子で厨房の脇を通り、隣の部屋の鍵を開けると中に入った。
続いて主任も中に入る。
何?怖いんですけどっ!!
「ジェシカも入れよ」
と言われて、怯えながら中に入った。
「あらあら、ジェシカも連れて来られたということは、例の一件は片付いたってことかしら?」
マリアさんが、お茶とお菓子を持って入ってきた。
「まぁね。あなたにも迷惑かけたわね、申し訳なかったわ」
主任はマリアさんに言った。
「まぁ、マーガレット様にプリンを教えることになるよりは平気だったわよ」
そう言うと、マリアさんは私にウインクをした。
もう!なんなんですか!みんなで私にウインクをしてっ!
「マイケルも、ステラに申し訳ない気持ちでいたんだろうな」
「そうみたいね。『あの時、俺が側にいたら』って言ってたからね」
「ステラを助けることができなかった償い的な」
「もうステラは守ってもらうばかりの人間じゃないのにね」
パトリックさんとマリアさんが話している。
「マリアさんは、どうしてふたりのこと詳しいんですか?」
私は訊いてみた。
「ん?ステラとパトリックのこと?だって、このふたりが食堂で働き始めた時には、私もう食堂で働いていたもの」
えっ?そうなんですか?
「最初に仕事を教えてくれたのは、マリアだったわね」
「貴族にやらせる仕事は無いって言ってな。他の人たちは、口もきいてくれなかったからな」
「へ~そんなことがあったんですか」
「そんなことがあったのよ」
マリアさんは懐かしそうに言った。
失恋したクマ、森へ帰る(本当は公爵家へ戻るだけ)
さて、では、私めもこれで、失礼させていただきますよ。
回れ右して一歩踏み出したその時、
「ジェシカ・セシル?」
と私を呼ぶ主任。
主任が、私をフルネームで呼ぶ時、ろくな記憶はございません。
「は、は、はい~」
ギギギッと振り返ると、そこにはニッコリと微笑む主任と、爽やかに笑うパトリックさん。
主任の笑顔。怖いよ~
「あなた、これからの予定は?」
「あの……その……町の図書館へ、本を読みに行こうかと……」
「そう!それは急ぎなのかしら?」
「い、いえ~。急ぎかと言われるとぉ、そうでないのかもしれませんねぇ」
「そう!それは良かったわ」
再び主任の笑顔。
横目でパトリックさんを見ると、パトリックさんは私にウインクをした。
パトリックさん、急に貴族み出さないで下さいっ!
私は一体どうなってしまうのでしょうか……
気がつくと、私は主任とパトリックさんに連れられて、マリアさんのお店に連れて来られていた。
「あら、いらっしゃい。珍しい組み合わせじゃない?」
マリアさんは少し驚いたような顔をしたあとで、いつもの笑顔を見せた。
「マリア、個室貸して」
慣れた様子のパトリックさん
「じゃあ。緑の部屋にどうぞ」
マリアさんは青リンゴのキーホルダーがついた鍵をパトリックさんに渡す。
なんだ?緑の部屋って
パトリックさんはマリアさんから鍵を受け取ると、慣れた様子で厨房の脇を通り、隣の部屋の鍵を開けると中に入った。
続いて主任も中に入る。
何?怖いんですけどっ!!
「ジェシカも入れよ」
と言われて、怯えながら中に入った。
「あらあら、ジェシカも連れて来られたということは、例の一件は片付いたってことかしら?」
マリアさんが、お茶とお菓子を持って入ってきた。
「まぁね。あなたにも迷惑かけたわね、申し訳なかったわ」
主任はマリアさんに言った。
「まぁ、マーガレット様にプリンを教えることになるよりは平気だったわよ」
そう言うと、マリアさんは私にウインクをした。
もう!なんなんですか!みんなで私にウインクをしてっ!
「マイケルも、ステラに申し訳ない気持ちでいたんだろうな」
「そうみたいね。『あの時、俺が側にいたら』って言ってたからね」
「ステラを助けることができなかった償い的な」
「もうステラは守ってもらうばかりの人間じゃないのにね」
パトリックさんとマリアさんが話している。
「マリアさんは、どうしてふたりのこと詳しいんですか?」
私は訊いてみた。
「ん?ステラとパトリックのこと?だって、このふたりが食堂で働き始めた時には、私もう食堂で働いていたもの」
えっ?そうなんですか?
「最初に仕事を教えてくれたのは、マリアだったわね」
「貴族にやらせる仕事は無いって言ってな。他の人たちは、口もきいてくれなかったからな」
「へ~そんなことがあったんですか」
「そんなことがあったのよ」
マリアさんは懐かしそうに言った。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
【完結】指輪はまるで首輪のよう〜夫ではない男の子供を身籠もってしまいました〜
ひかり芽衣
恋愛
男爵令嬢のソフィアは、父親の命令で伯爵家へ嫁ぐこととなった。
父親からは高位貴族との繋がりを作る道具、嫁ぎ先の義母からは子供を産む道具、夫からは性欲処理の道具……
とにかく道具としか思われていない結婚にソフィアは絶望を抱くも、亡き母との約束を果たすために嫁ぐ覚悟を決める。
しかし最後のわがままで、ソフィアは嫁入りまでの2週間を家出することにする。
そして偶然知り合ったジャックに初恋をし、夢のように幸せな2週間を過ごしたのだった......
その幸せな思い出を胸に嫁いだソフィアだったが、ニヶ月後に妊娠が発覚する。
夫ジェームズとジャック、どちらの子かわからないままソフィアは出産するも、産まれて来た子はジャックと同じ珍しい赤い瞳の色をしていた。
そしてソフィアは、意外なところでジャックと再会を果たすのだった……ーーー
ソフィアと息子の人生、ソフィアとジャックの恋はいったいどうなるのか……!?
※毎朝6時更新
※毎日投稿&完結目指して頑張りますので、よろしくお願いします^ ^
※2024.1.31完結
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。
海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】
クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。
しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。
失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが――
これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。
※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました!
※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
私はあなたの母ではありませんよ
れもんぴーる
恋愛
クラリスの夫アルマンには結婚する前からの愛人がいた。アルマンは、その愛人は恩人の娘であり切り捨てることはできないが、今後は決して関係を持つことなく支援のみすると約束した。クラリスに娘が生まれて幸せに暮らしていたが、アルマンには約束を違えたどころか隠し子がいた。おまけに娘のユマまでが愛人に懐いていることが判明し絶望する。そんなある日、クラリスは殺される。
クラリスがいなくなった屋敷には愛人と隠し子がやってくる。母を失い悲しみに打ちのめされていたユマは、使用人たちの冷ややかな視線に気づきもせず父の愛人をお母さまと縋り、アルマンは子供を任せられると愛人を屋敷に滞在させた。
アルマンと愛人はクラリス殺しを疑われ、人がどんどん離れて行っていた。そんな時、クラリスそっくりの夫人が社交界に現れた。
ユマもアルマンもクラリスの両親も彼女にクラリスを重ねるが、彼女は辺境の地にある次期ルロワ侯爵夫人オフェリーであった。アルマンやクラリスの両親は他人だとあきらめたがユマはあきらめがつかず、オフェリーに執着し続ける。
クラリスの関係者はこの先どのような未来を歩むのか。
*恋愛ジャンルですが親子関係もキーワード……というかそちらの要素が強いかも。
*めずらしく全編通してシリアスです。
*今後ほかのサイトにも投稿する予定です。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。
友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。
あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。
ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。
「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」
「わかりました……」
「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」
そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。
勘違い、すれ違いな夫婦の恋。
前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。
四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる