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Case03.

12.マーガレット様のプリンの完成ですっ!(食堂厨房ver.)

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「ありがとうございます。主任の火傷には、私が気が付かなければなりませんでした」

私はグリズリーに頭を下げた。

「いや、大丈夫だ」
グリズリーはそう言うと、所定の場所でマーガレット様を見守っている。


「マーガレット様が火傷しなくて良かったです」
「……私のせいで主任が火傷してしまって、申し訳ないわ」
マーガレット様がしょげている。

「マーガレット様。この工程が危険なことは、皆が承知のことなのです。だからこそ、主任やマリアさんが代わりにやると言ったのです。だから、マーガレット様が気になさることはないのです」
「そうなのかしら……」
「そうなのですよ。さて、プリンが焼き上がるまでに、洗い物を片付けてしまいましょう!」

私はマーガレット様に明るく声を掛けると、洗い物を始めた。


そろそろプリンが焼ける頃、主任とマリアさんが帰ってきた。

「大丈夫でしたか?」
マーガレット様が心配そうに訊ねた。

「はい。大したことはありませんでした。少し赤くなっただけですし、すぐに冷やしましたし、薬も塗りましたから。痕にもならないそうです。ご心配をおかけしました」
主任がマーガレット様にそう言うと、マーガレット様は、安心した顔をした。


「さて、では私が取り出します」
とマリアさんが言うと、グリズリーがやって来て

「私が取り出そう。入れる時より危険だから」
と言って、オーブンから天板を取り出してくれた。
グリズリー、優しい。さすが、騎士!


プリンは黄金に輝き、とても美味しそうに出来た。

「で、出来ましたわ」
「はい!マーガレット様のプリンの完成です!」
私は思わずマーガレット様の手を取って喜んだ。

「マーガレット様に怪我なく、無事に完成して良かったです」
主任が言うと、

「主任から味見をして下さいますか?」
とマーガレット様がお願いをした。

「かしこまりました」
主任はプリンを掬って口に運ぶ。


「大変美味しゅうございます」

次にマリアさんが食べて、お昼頃には味がもっと落ち着いて更に美味しくなると言い、私が食べる番になった。

「なめらかで、とても美味しいです」
そう言うと、マーガレット様はとても嬉しそうに微笑んだ。


「殿下にお出しするのが楽しみですね」
とマリアさんが言うと

「このプリンは『本日のプリン』として出してもらえますか?」
とマーガレット様が言った。

「どうしてですか?」
「私が作ったと言うと、アレックスは本当の感想を言わないもの……」

「でも、私が作ったと思っていると、硬いの軟いのと文句言いますよ?」
「それも含めて、アレックスを、驚かせたいの」
「そうですか……」


マーガレット様は、いたずらっ子のように笑った。






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