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Case03.

1.殿下がともだち

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食堂には最近、婚約者と一緒に第三王子殿下がやって来る。
そして、本日のランチを頼み、本日のプリンも頼む。

本来、メニューには『本日のプリン』なんてものは無い。
では何なのか?というと、私が作ったプリンを食べるのだ。

そして、「硬い」の「柔らかい」の「甘い」の「カラメルが下手」だの言って帰って行く。


殿下と婚約者様のために!毎日プリンを作らされているのだ…… 
宮廷料理人がいらっしゃるのに、こんなところで、こんなプリンをお召し上がりになられなくても、宜しいのではないですか?
とやんわりと、迷惑である!と伝えたつもりであったのだが、全く伝わっていないようです!!


「本日のデザートは、グレープゼリーですよ?庶民的ですよ?」
と勧めてみるのだが、プリン一択なのだ……迷惑です!!


あんなに仔犬みたいな目で、婚約者にたどたどしく愛を伝えたくせに、毎日毎日食堂でイチャイチャしちゃって!!
風紀を乱しているわ!風紀委員!!注意しなさいよっ!!


第三王子に物申せる生徒なんていないわよね……分かってますとも……



「ジェシカ!今日のプリンは、少し軟らかかったけど、カラメルがとても美味しかったぞ!」

と満面の笑みのアレク=殿下

「それは、良かったです」
頭を下げると、
「ジェシカ~」
と情けない声。
アレクは仔犬の顔でこっちを見ている。

「アレク」
「他人行儀嫌だって言った!友だちだって言った!」

幼児化してるじゃないの!!
慌てて、隣の婚約者=マーガレット様を見ると、

「アレックスにもせっかくお友だちができたのに、他人行儀は悲しいですわよね」
と、謎の理解を示している。


「はぁ……カラメルが上手くできて良かったよ。明日はもっと硬いプリンになるように、加熱時間に気をつけてみるね」
「うん。早くマリアさんみたいなプリンにたどり着けるといいね!」

べ、別に目指してないし……


「あ~ぁ。また町に行きたいな」
とアレクが言った。

「行けばいいじゃない?駄目なの?」

「マーガレットにハンカチを贈ったでしょ?あれがね……」
「喜んでもらえたんでしょ?」
私はマーガレット様を見た。

「はい!マルガリータのドレスを連想させる、素敵なハンカチでしたわ」
嬉しそうなマーガレット様。


「喜んでもらえて、良かったね」
「良いことばかりじゃなくて……」
顔を曇らせるアレク。

「『殿下が買い物をなさった店である』って、広まっちゃったの。そうすると、特別扱いだ!って他の店から苦情がきちゃって……」
同情する様子でアレクの顔を見つめるマーガレット様。

「あらら、そんなことが……色々と難しいのね~王族ともなるとさ」
「そうなんだよ……」

「早く、王太子さまにお子様がお産まれになれば、公爵になれるのにね」
「ん!!!!それだっ!!!」

アレク=殿下は立ち上がった。
「さすが!ジェシカ!心の友よ!」

ん!?何か私、言いました???


「兄上に、言ってくる~」
アレク=殿下は、早歩きで出て行った。
急いでも、走らないあたりが王族っぽいな。


残されたマーガレット様に会釈すると、マーガレット様は笑って
「あなたといると、アレックスは子どもに戻るみたいだわ」
と言った。





    
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