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178.女子たちの期待

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「リナちゃんはもう王都に行く準備は済んだの?」
寺子屋の職員室で授業の用意をしつつ、アリシアはリナに訊いた。


「大体は済んだよ。結局は向こうで買ってそろえることになるし」

「マルタンさんの実家に泊まるんだろ?粗相が無いようにするんだぞ」

イザックが真面目な顔でリナに言った。

「だ、大丈夫だと思うけど……言葉づかいには気をつけるね……ありがと」

ジュールも、イザックもアリシアもライアンも皆、言葉づかいなんか気にしないでくれるけど、あくまでも自分は平民。
これから向う王都では、貴族の人たちと関わる際に、自分の身分をわきまえないとならないのだ。

リナはイザックに感謝した。

「私たちの渾身の地図を手に入れたんだから、アンドレと王都観光楽しんで来てね。おすすめのお菓子屋さんも書いておいたからね」

緊張するリナに、アリシアは微笑んだ。

「あーちゃん、向こうで何か買って来て欲しいものある?」
「ん~、そうね~。最近は辺境伯領に行くこともあるから、結構なんでも買えてるのよね」

アリシアは顎に手を当ててしばらく考えていたが、すぐに思いつく物は無いようだった。

「何か思いついたらお願いするわね」
「うん、そうして」

「俺には訊いてくれないの?」
向かい側の席からイザックが言った。

「イザックさんは、ボーヴォにいること隠してるわけじゃないんだから、実家に手紙書けばいいじゃん」
「うわぁ。リナが俺には冷たい」

「良いインク買ってきてあげようか?執筆作業が進むように」
「すごい圧かけてくるな……じゃあ……それで」

渋々頷くイザックを見て、アリシアは笑った。

「執筆作業は順調?」
「『シンデレラ』とかいう話のあらすじは説明されたから、ボチボチと書かされてるよ」
苦い顔をしてイザックは言った。

「あら、書き上がったら読ませてね。でもリナちゃんに添削されてからかしら?」
アリシアは待ち切れない様子でリナを見た。

「私の添削待ちとかはいらないよ。書き上がったら、すぐにでも読ませてもらって!」
「そんなにすぐに書けるかよっ」
イザックは呆れたように言った。

「大丈夫よイザック。楽しみが長く続くのも嬉しいから。待ってるわ」

リナとは違う形で圧をかけられるイザックなのだった。

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