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141.王都に行ってきてちょうだい

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 ロナはマルタン宛に
『貴族の令嬢をお預けできるのは、マルタン商会以外にありませんので、宜しくお願い致します』
 と丁寧な手紙を書き、イザックとアリシアを帰した。

 アンドレからも、宜しく言っておいて!というロナに、
「親父はロナさんに甘いから、大丈夫でしょ?」
 と笑ってアンドレは帰って行った。



「ねぇ、ママ」
 リナはロナに言った。

「なに?」
「アウトレットモールで扱う、前シーズンモデルのドレスを、リフォームする職人さんを王都で探す話をしたじゃない?」
「こっちに呼び寄せるか、王都に工房を持つか考えなくちゃよね」
 ロナはこっちに職人を呼ぶよりは、王都に工房を構えた方が、顧客的には便利なのではないかと考えていた。


「そう、そうなんだけどさ。ここが何かの異世界小説の中だとしたらさ、いると思うのよ」
「だれが?」
 ロナはリナに訊いた。

「若くて優秀なデザイナーなんだけど、オーナーにデザインを盗まれて、苦労している職人さん」
 リナは答えた。

「いる!いるわね!それで、街の外れで小さいお店を開くんだけど、売れなくて困っているのよ」

「そこに、主人公が現れて、このドレス素敵ね!って言って」
「お抱えのデザイナー兼お針子さんになって」
「盗人オーナーをギャフンと言わせるのよ」
「ある!あるあるだわ!」


 この世界が小説の中ならば、いるはずだ。

「ジャン経由で、ライアンに頼みましょう!」
「デザインを盗まれて困っている若きデザイナーがいるはずだから、探して欲しいって?」
「そうそう!」
 ロナはすっかり乗り気で言った。

「ライアンさんも、そんなこと言われても、ナンノコッチャ?なんじゃない?」
「でも、そんな職人さんが居たら、絶対!確保したいもの」

ロナはしばらく考えてから言った。
「じゃあさ、リナとアンドレで王都に行って探して来てよ」
「わ、私!!!!無理!無理!」
リナは断った。


「王都がどんな感じなのか、見てきてよ。マルタン商会に任せるにしても、この世界がどんなものなのか、知りたいじゃない?」
「じゃあ、ママが行けばいいじゃん」


「ママは校長だもの。そんなに村を離れられないわ」

「えー。不安だよ」
「大丈夫。アンドレとマルタンさんに頼むわよ」
ロナは言った。


「本当に王都に行くの?私が?」
「ねぇ、梨奈。実際の王都ってどんな感じなんだろうね?コミカライズで描かれている王都って、大体ヨーロッパっぽいじゃない?この世界もそうなのかしらね?梨奈、修学旅行だと思って、楽しんできたら?」


リナはしばらく考えて
「マルタン神が、いいよって言ったらね」
と言った。

「でも、アンドレも?」
「王都で、マルタンさんとふたりっきりよりいいんじゃないの?」
「それは……そうだけど」


「修学旅行だと思って、アンドレと王都を散策したら?日本では、死んじゃって行けなかったんだからさ」
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