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第37話 最後の休暇と最後の試練
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「クラインんんんんんん、聞いたぞ、ワイバーンを討伐したなんて凄い凄いぞおおお」
「本当に凄い、凄いわあああああ」
「お、落ち着いて!?」
帰宅後、いつものように両親サンドイッチ。
幼い頃の記憶だと、メアリーはもっと落ち着いていた気がする。
だが愛されているのは変わらない。
もちろん、フェアも傍にいる。
「二人ともずっと心配で王都へ行きたがっていましたよ。でも、身重の体だったので……」
「え? 身重って……え!?」
フェアがハッと口を滑らしたという表情をした。
すると、リルドが笑う。
「気にするな。クラインきづかないか? ほら、大きくなってきているだろう」
「ええええ!?」
リルドがメアリーのお腹に手を添える。
「クライン、触ってみて」
ゆっくりとお腹に触れる。確かに丸く、大きくなっていた。
張っている、とわかる。
「……すごい」
「あなたもここにいたのよ。それと、性別はもうわかってるの」
「え、そ、そうなの!?」
家族が増えるなんて想像もしていなかった。
でも、凄く嬉しい。
すごく、すごく幸せな気持ちだ。
「聞いたか、おもち」
「ぐるぅ!」
おもちも、頭をお腹にこすりこすり。
「それで、性別は?」
「ふふふ、どっちだと思う?」
「ええと……男の子?」
メアリーが、嬉しそうに首を横に振る。
「女の子よ。クラインはお兄ちゃんになるの。仲良くしてあげてね」
「妹……俺が、お兄ちゃん」
「そうだ。クライン、ちゃんと妹を守るんだぞ。おもちも守ってあげてくれ」
「……わかった。絶対守る」
「ぐるぅ」
本当に嬉しい。嬉しすぎて、気づいたら涙がこぼれていた。
理由はよくわからない。でも、幸せだったのだ。
フェアが、そっとハンカチで涙を拭いてくれる。
「幸せなことですね。フェアは嬉しいです」
「フェアも家族だ。みんなで幸せになりたい」
俺の願いで、フェアはにっこり微笑んでくれた。
それからみんなでご飯を食べた。
寮での生活、大規模侵攻での授与式について、仲間のことを話しながら。
「リルドも候補生に選ばれたのに、辞退したのよねえ」
「え、そうなの!? 父さんが?」
「昔の話だ。私の場合はお前よりも随分と遅かったがな」
「どうして辞退したの?」
「この付近は今よりもっと魔物が多くてな。後は仕事の関係だ。だが、私の見られなかった話しを教えてもらえるのは楽しいぞクライン」
それですべてが繋がった。リルドが強い理由が。
まだまだ知らないことはたくさんある。
これからももっと家族と一緒にいたい。
もちろん、仲間たちとも。
「父さん、夜手合わせしよ!」
「今日か? もう遅いぞ」
「うん!」
「はは、いいだろう。それに、いつから父さんになったんだ?」
「え? あ、たしかに……で、でも――」
「お兄ちゃんになるもんねえ」
「うん! そういえば、名前は決まってるの?」
「まだよ。どうしようかしらねえ」
「みんなで考えよう。大事な名前だからな」
おもちの響きが可愛いので、だいふくはどうかと頼んだが、却下された。
俺にネーミングセンスはないらしい。
それから毎日を幸せに過ごした。
もちろん、フェア師匠とも話し合った。
「ほほう、ミリシアさんだけじゃなくプラタさん……それにアクリルさん、エウリさん……ああ! 何ということ! 流石クライン様! おモテモテですわ!」
「いや、そういうわけじゃ……でも、プラタには好きだって言われたかも」
「え? 好き!? ど、どういうことですか!?」
「え、ええーと!?」
色々と話すのも大変だったが、何とかうまく話した。
俺の気持ちは正直まだわからない。
ミリシアの事が気になっているが、仲間としてかもしれない。
すぐに休暇が終わり、最後の日、皆でまた見送ってくれた。
名前を決めるのは、まだもう少しかかる。
「頑張れよ。次は合否が決まった後だな」
「頑張るよ父さん」
「私は心配していないわ。クラインはきっと大丈夫だから」
「ありがとう母さん、そうだといいけど」
「クライン様、ガッツガッツです!」
「ど、どういうこと?」
その後、ルージュとミリシアと合流した。
以前と変わらないやり取り、だけどどこがぎこちない。
その理由は、最終試験がすぐだからだ。
「けど実は俺、あんま気にしてないんだ。だって、俺が落ちるってことはクラインもだろ? なら仕方ねえって思える」
「……確かに、ルージュの言う通りかも。今肩の荷がスっと下りたわ」
「え、ど、どういうこと?」
「お前、自分の凄さは相変わらずわかってないよなあ」
「本当に。例え合格しても、おんぶに抱っこにならないよう気を付けなきゃね」
「……ん、んー?」
寮に戻った後は、またいつも通りだった。
個別での訓練、合同訓練。
毎日戦って、考えて、寝て、食べての繰り返し。
そして、最後の試験がやってきた。
「本当に凄い、凄いわあああああ」
「お、落ち着いて!?」
帰宅後、いつものように両親サンドイッチ。
幼い頃の記憶だと、メアリーはもっと落ち着いていた気がする。
だが愛されているのは変わらない。
もちろん、フェアも傍にいる。
「二人ともずっと心配で王都へ行きたがっていましたよ。でも、身重の体だったので……」
「え? 身重って……え!?」
フェアがハッと口を滑らしたという表情をした。
すると、リルドが笑う。
「気にするな。クラインきづかないか? ほら、大きくなってきているだろう」
「ええええ!?」
リルドがメアリーのお腹に手を添える。
「クライン、触ってみて」
ゆっくりとお腹に触れる。確かに丸く、大きくなっていた。
張っている、とわかる。
「……すごい」
「あなたもここにいたのよ。それと、性別はもうわかってるの」
「え、そ、そうなの!?」
家族が増えるなんて想像もしていなかった。
でも、凄く嬉しい。
すごく、すごく幸せな気持ちだ。
「聞いたか、おもち」
「ぐるぅ!」
おもちも、頭をお腹にこすりこすり。
「それで、性別は?」
「ふふふ、どっちだと思う?」
「ええと……男の子?」
メアリーが、嬉しそうに首を横に振る。
「女の子よ。クラインはお兄ちゃんになるの。仲良くしてあげてね」
「妹……俺が、お兄ちゃん」
「そうだ。クライン、ちゃんと妹を守るんだぞ。おもちも守ってあげてくれ」
「……わかった。絶対守る」
「ぐるぅ」
本当に嬉しい。嬉しすぎて、気づいたら涙がこぼれていた。
理由はよくわからない。でも、幸せだったのだ。
フェアが、そっとハンカチで涙を拭いてくれる。
「幸せなことですね。フェアは嬉しいです」
「フェアも家族だ。みんなで幸せになりたい」
俺の願いで、フェアはにっこり微笑んでくれた。
それからみんなでご飯を食べた。
寮での生活、大規模侵攻での授与式について、仲間のことを話しながら。
「リルドも候補生に選ばれたのに、辞退したのよねえ」
「え、そうなの!? 父さんが?」
「昔の話だ。私の場合はお前よりも随分と遅かったがな」
「どうして辞退したの?」
「この付近は今よりもっと魔物が多くてな。後は仕事の関係だ。だが、私の見られなかった話しを教えてもらえるのは楽しいぞクライン」
それですべてが繋がった。リルドが強い理由が。
まだまだ知らないことはたくさんある。
これからももっと家族と一緒にいたい。
もちろん、仲間たちとも。
「父さん、夜手合わせしよ!」
「今日か? もう遅いぞ」
「うん!」
「はは、いいだろう。それに、いつから父さんになったんだ?」
「え? あ、たしかに……で、でも――」
「お兄ちゃんになるもんねえ」
「うん! そういえば、名前は決まってるの?」
「まだよ。どうしようかしらねえ」
「みんなで考えよう。大事な名前だからな」
おもちの響きが可愛いので、だいふくはどうかと頼んだが、却下された。
俺にネーミングセンスはないらしい。
それから毎日を幸せに過ごした。
もちろん、フェア師匠とも話し合った。
「ほほう、ミリシアさんだけじゃなくプラタさん……それにアクリルさん、エウリさん……ああ! 何ということ! 流石クライン様! おモテモテですわ!」
「いや、そういうわけじゃ……でも、プラタには好きだって言われたかも」
「え? 好き!? ど、どういうことですか!?」
「え、ええーと!?」
色々と話すのも大変だったが、何とかうまく話した。
俺の気持ちは正直まだわからない。
ミリシアの事が気になっているが、仲間としてかもしれない。
すぐに休暇が終わり、最後の日、皆でまた見送ってくれた。
名前を決めるのは、まだもう少しかかる。
「頑張れよ。次は合否が決まった後だな」
「頑張るよ父さん」
「私は心配していないわ。クラインはきっと大丈夫だから」
「ありがとう母さん、そうだといいけど」
「クライン様、ガッツガッツです!」
「ど、どういうこと?」
その後、ルージュとミリシアと合流した。
以前と変わらないやり取り、だけどどこがぎこちない。
その理由は、最終試験がすぐだからだ。
「けど実は俺、あんま気にしてないんだ。だって、俺が落ちるってことはクラインもだろ? なら仕方ねえって思える」
「……確かに、ルージュの言う通りかも。今肩の荷がスっと下りたわ」
「え、ど、どういうこと?」
「お前、自分の凄さは相変わらずわかってないよなあ」
「本当に。例え合格しても、おんぶに抱っこにならないよう気を付けなきゃね」
「……ん、んー?」
寮に戻った後は、またいつも通りだった。
個別での訓練、合同訓練。
毎日戦って、考えて、寝て、食べての繰り返し。
そして、最後の試験がやってきた。
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